【このテーマの目的・ねらい】
目的:
プーチン大統領に対する
ロシア国民の支持がどうなっているかを確認します。
ねらい:
北方領土返還交渉はどうなるのでしょうね。
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本項は、學士會会報2018-Ⅵ号掲載の
雲 和広一橋大学経済研究所教授による
「ロシア経済を取り巻く環境変化」のご紹介です。
多くの日本人にとって、
ロシアに関する関心事は北方領土以外にはありません。
その帰趨を握っているのは、大物のやり手プーチン大統領です。
阿部首相が頑張っていますが、
阿部首相の説得力でプーチンが動く、
ということはあり得ないでしょう。
それでは、プーチンはどう考えるのだろうか、という情報が
日本国民にとっては必要です。
「戦後70年以上経って、
自国民が1人も住んでいない領土を返せというのも例のないことだ」
という誰かのコメントも気になることではあります。
雲教授の主な論点は以下のとおりです。
1.2000年代初頭から半ばまで、ロシア経済は原油依存で、
原油価格の上昇と軌を一にして急成長をした。
2.2014年のクリミア併合に対する西側諸国の制裁の影響もあり、
2015年には国内総生産年間成長率がマイナス3.7%まで落ち込んだ。
3.その後、原油価格の回復とルーブル減価等により
2018年には実質可処分所得も増加に転じた。
4.しかしその間一貫して、
政権・プーチンに対する支持は高いレベルを維持していた。
5.支持率の高さを支えたのは、教育水準が高く、所得の高い層の
愛国心の高まりであろうと推定される。
所得階層と支持率の正の相関がある。
年齢階層と支持率も正の相関がある。
村落での支持率は低下したが
社会のエリート層や軍関係者の支持は強化された。
6.ところが、2018年6月に年金改革の一環で、
年金給付開始年齢の引き上げが発表されると
(男性は現在60歳を2028年迄に65歳、
女性は現在55歳を2032年迄に63歳とする)
政府およびプーチン大統領に対する支持は急落した。
7.経済制裁に伴って実際に生じた経済の停滞が
政権支持率に否定的影響を与えず、
10年以上先に現実化する社会福祉政策における給付縮小の意向が
政権支持率を大きく低下させる、ということは、
それ自体興味深いものである。
(上野注:それはそうですね)
8.(結論として)
強権的と指摘されることの多々あるロシア・プーチン政権であるが、
その足下は存外強固なものではないのかも知れず、
世論の動向を見ながら手探りの経済運営を続けていく必要は
かえって大きいとも考えられよう。
以上です。
ということは、残念ながら日ロ交渉においても、
プーチンの独断で日本に譲歩する期待はあまりできない、
ということになりましょう。
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