2018年11月27日火曜日

危機的状況の日本の「下層階級」

【このテーマの目的・ねらい】
目的:
 現代日本の「階級」はどうなっているのかを認識していただきます。
 「下層階級」は1000万人近くもいて、生活苦に喘いでいるのです。
ねらい:
 高齢単身者世帯も1割を超えたと言いますし、日本はどうなるのでしょうか。
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本項は學士會会報2018-Ⅵ号掲載の
橋本健二早稲田大学人間科学学術院教授の「日本の新しい階級社会」
のご紹介です。


日本には新しい下層階級(「アンダークラス」という)ができている、
という主張です。
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一時は「1億総中流」とか言われて日本には階級は存在しない、
ということになっていましたが、それは過去のことになったのです。
実は、1980年前後から格差拡大が始まっていることを
データで示されています(掲載省略)。


その上で主張される新しい下層階級とはこういうことです。
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日本の階級構造には、近年になって大きな変化が生まれている。
非正規労働者が増加した結果、
労働者階級内部の格差が拡大したからである。


とりわけ1980年代以降になると非正規労働者が、
学生アルバイト、パート主婦、定年後の嘱託などのように
人生の1時期のみの存在ではなくなり、
学校を卒業した直後、
あるいはさほど期間を置かずに非正規労働者となり、
中高年になるまで非正規労働者であり続けるケースが増えた。


このため労働者階級が、
正規労働者と非正規労働者へと
上下に二分されるようになってしまった。


こうして階級構造の底辺に、
低賃金で雇用が不安定な新しい下層階級が形成されることになった。
これをアンダークラスと呼ぶことにしたい。


アンダークラスの実態を実証的に明らかにするためには、
これを数量的に把握可能な形で操作化することが必要である。


パート主婦と非常勤の管理職・専門職を除く非正規労働者を
アンダークラスとみなし就業構造基本調査からその規模を推計すると、
実数で928.6万人、全就業人口に占める比率は14.0%に達する。


2002年にはそれが709.8万人だったから、
わずか10年間で218.8万人も増加したことになる。


図表2は、その特徴を他の階級と比較したものである
(ただしこの表のアンダークラスからは、
年金を受給している人の多い60歳以上を除外した).

労働時間はアンダークラスがいちばん短いが、
それでも平均週36.3時間で、
内訳をみると過半数が週40時間以上働いている。


個人収入はわずか186万円で、貧困率は実に38.7%にも達し、
31.5%は資産をまったく持たない。


そして男性では有配偶者はわずか25.7%で、
66.4%までが未婚である。
経済的に苦しいため結婚できない状況がよいわかる。


生活に満足している人の比率、自分は幸せだという人の比率は、
いずれもきわだって低い。


衝撃的なのは
いじめにあった経験をもつ人が31.9%にも上っていることで、
学校教育からの排除が
アンダークラスへの所属につながっていることがわかる。


また健康状態のよくない人の比率が高く、
うつ病など心の病気で診断・治療を受けた人は
20.0%にも上っている。


自民党支持率は際立って低いが、全体の7割近くは
支持政党がない。
彼ら・彼女らには支持できる政党がないのである。


極めて低所得で、貧困と隣り合わせで、
満足や幸福とはほど遠く、
肉体的にも精神的にも追い詰められ、
生殖という生物種としての基本条件すら満たすことができず、
政治からも疎外された人々、それがアンダークラスである。


格差拡大が40年も続いた日本の社会には、
すでにこのような人々が膨大な規模で出現しているのである。
危機的状況といわねばならない。
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氏の主張は若干極論の面がありますが、
そういうことがあることは確かなのでしょう。


アンダークラスの実態に関する氏の主張の根拠となっているのは、
SSM調査です。
SSM調査とは以下のようなもので、
こういう大掛かりな調査を実施しているグループがいる
ということは驚きです。


SSMとは、
Social Stratification and social Mobility(社会階層と社会移動)のことで、
この調査は1955年以来10年ごとに、
社会学者のグループ100人以上によって行われています。


全国800地点での20~79歳の
日本国籍を持つ男女15,000人強を対象にした
聞き取り方式による調査です(有効回答率は50.1%)。


「本事業は、独立行政法人日本学術振興会から、
特別推進研究事業(課題番号:25000001)として
助成を受けて実施しました」
というものの凄い手間暇のかかっている調査です。


こういう調査によって、橋本教授が説明される
アンダークラスの実態が明らかになっているのです。


話変わりますが、
2018年11月26日の日経新聞に
日本の単身高齢者世帯が全世帯の1割を突破し、
医療費・介護費厖大化の危機にあるという記事が載っていました。


アンダークラスとの重なりも多少あるのでしょうが、
この人たちもいわゆる社会的弱者です。


こういう社会的弱者が多い社会は、
単に少子高齢化社会である、というようなことでは片付けられない
大きな問題を抱えていることになります。


誰がこの人たち、
特にアンダークラスを何とかしようと力を貸すのでしょうか。
日本の社会は崩壊しないで済むのでしょうか?
どうしたらよいのでしょうか?

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