2015年4月19日日曜日

「システム子会社問題に終止符を」ですって?

【このテーマの目的・ねらい】
目的:
 日経コンピュータ誌が取りあげた
 情報子会社の動きについて知っていただく。
 上野が判断する情報子会社のあり方について知っていただく。

ねらい:
 今後の判断材料にしていただく。
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日経コンピュータ誌が4月16日号で、
情報システム子会社動向の特集をしました。

「30年来の体制を壊す」とやや大げさな取りあげ方なのですが、
それほどの新鮮味はありません。

当誌で取りあげられているここ3年の動きを整理すると、
以下のとおりです。
「3年以前の例」と「フルアウトソーシングの契約破棄」は
私が追加しました。

タイプ
目的
該当企業
3年以前の例
本社との一体化
本社対応の機動性の向上
LIXIL、JTB、パナソニック(旧松下電工系)
カシオ
SIerと資本提携
ITスキルの強化
味の素(NRI)、キリンホールディング(NTTデータ)、東京電力(日立)、パナソニック(旧松下電器系、富士通、日本IBM)、日本郵船(富士通)、
日本鋼管(日本IBM)、積水化学(NTTデータ)、AJS(TIS)、日新製鋼(日本IBM)、JSR(旧日本合成ゴム,NEC)、
複数子会社を集約
事業力強化、効率化
日本生命、三菱重工業、

(参考)フルアウトソーシングの契約破棄
本社事業対応の機動性・有効性確保
米国JPモルガン
日産自動車
いずれもIBM社との10年契約を途中解約




当誌の記事は、いろいろな動きがあるとうだけで、
なぜそうなのか、どの方向に意義があるのか
については触れていません。

私の考えは以下のとおりです。

本社との一体化の先例はカシオ計算機殿です。
2003年時点、情報子会社の社員(プロパ採用を含む)を、
本社情報システム部員と一体運営にしました。
プロパ社員の身分はそのままでした。

その目的は、機動的・有機的運営をするためでした。
分けるよりも一体の方が
効率的な運営ができることは自明です。

「複数子会社を集約」は当然の動きでしょう。
それまでしてこなかったのは、
いろいろな行きがかりがあったからです。

行きがかりよりも
子会社としての目的達成が重要になったということです。

「SIerと資本提携」というと恰好よく見えますが、
一時の「流行り」現象の時は、
他の子会社売却と同様の理由の子会社の「売却」だったのです。

売却対象となる事業はどういう事業ですか?
その時の経営者がコアでないと考える事業です。
身軽になってコア事業の強化に専念しようとするのです。

売却した会社はどういう会社でしょうか。
ほとんどは製造業です。
製造業にとっては中核の製品を開発し作る技術がコアであって
他はコアとは考えません。

上表をご覧ください。
ほとんどが製造業でしょう!

海運会社も入っています。
以前海運会社のシステム強化のお手伝いをした経験で
海運会社のコアは
船舶建造の意思決定だということを知りました。

船舶は発注してから手に入れるまで数年かかりますから、
先を読む力が勝負になるのです。
商船三井がその能力に優れていて
断然トップの日本郵船との差を詰めたのです。

船舶運航のオペーレーションにはシステムを利用しますが、
船舶の保有状態の方がはるかに業績を左右します。

したがって、
海運会社のかたはシステムの活用に熱心ではありませんでした。

この表でご覧のように、製造業の情報子会社は、
大手SI企業の陣取り合戦の戦場となっています。
大手SI企業から見ると
安定顧客の確保とビジネスノウハウの取得が目的です。

情報システムがコアのビジネスは、
金融と流通です。

金融と流通は、「SIerと資本提携」には入っていません。
情報システムは、当該ビジネスの生命線ですから、
人に任せてしまおうということはあり得ません。

金融業の情報システムは規模が大きいので、
専門の子会社を作っている企業が大半です。

それでも
重要な企画機能は本社に温存している企業が大半です。
従来、企画機能を外に出していた企業も、
インソース化に動いています。

流通業では、ダイエーは子会社を持ちましたが、
イオンとヨーカドーは子会社化しませんでした。
どちらが勝ちましたか?

参考に示した、フルアウトソーシングを途中解約した
米国金融大手であるJPモルガンの例が話題になりました。

契約は2002年末で解約は2004年9月でした。
したがって、コストダウンを目的に契約したが、
(一説によれば1割減になるという契約だったらしい)
コストには代えられないマイナス面が「すぐに」実感できた
ということでしょう。
当然のことです。
コア業務を他社に委ねようと考えることは信じられないことです。

日本でも日産自動車が
IBM社へのフルアウトソーシングをしました。
日産が経営危機でゴーン社長を迎え入れた頃のことです。
以下は、ソフトバンクグループの情報提供サイト「ビジネス+IT」
2011年06月23日号からの転載です。

具体的には、10年契約で非常に安価、環境変化にも柔軟に対応できる、
常に最新の技術で最新の運用ができる、といったメリットが提示された。
また最新技術を使って改善していくので、
そこで得られたコスト削減分はお互いシェアすることで、
Win-Winになるともいわれた。

「ところが2~3年後、本当にそうなのだろうかという
さまざまな事象が露呈し始めた」(金子氏)
たとえばコストについては、
本当に安いのかという疑問が出てきたため、
色々なベンチマークを行ってみたところ、
必ずしもそうではないことが分かった。

そこでコスト構造を説明して欲しいと要求したが、
契約上、それはできないと断られたという。 

また最低支払保障ラインというものが設定されており、
作業が目標ポイントまで進んでいなくても、
契約で決めた金額については、
ユーザー企業側が支払わなければならない。

「これは変だ、きちんと仕事をしてもらっていないのに
我々はお金を払わなければいけないのか?
というごく当たり前の思いも出てきた」(金子氏)

システムの品質についてもトラブル件数が一向に減らず、
復旧にも時間がかかる。
よくよく考えてみれば、
改善につながるSLA(サービス品質保証契約)もなかった。

またサービスプロバイダの提供するメインフレーム以外のマシンについては、
すべて日産側でアップデートしていかなければならない。

また、運用改善は売上高減につながるため、
アウトソーサ側の経営層は消極的である。
オフショア化も検討したが、お金も時間もかかる、
とアウトソーサ側から言われ、結果的に改善が進まない。 

日産自動車のフルアウトソーシング見直しは
10年契約の終盤になってからです。
日米の行動の差を感じますね。

ということで私の結論はこうです。
区分
業種
情報システムに対する方針
ITや情報システムがコアなビジネス
(経営者の判断)
金融業、流通業、通信業、一部のサービス業
自社で中核技術を保有する。外部依存があっても中核技術は手放さない。
そうではないいビジネス
それ以外のビジネス
情報子会社の売却も選択肢

これが正解でしょう!!

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