【このテーマの目的・ねらい】
目的:
今の日本社会は家庭の親が子の面倒を見ていることで
成り立っていることを認識していただく。
その先はどうなるかを知っていただく。
その対策はどうすればよいかを考えていただく。
ねらい:
何か考えたり行動したりしないといけませんね。
「選挙で票になる高齢者優遇」を弱めることに賛成していただく。
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「この本」の名前は、
「なぜ日本は若者に冷酷なのか」です。
著者は山田昌弘中央大学文学部教授です。
この書名を見た時に、私はこう思いました。
日本の若者の失業率は、
世界で最も低く、恵まれているのにどういうことか?
たとえば、以下のデータをご覧ください。
ILO(国際労働機関)1月21日に発表した13年のデータ
北アフリカ 29.4%
中東 27.2%
先進国 18.3% (南欧諸国が50%以上、仏27%、伊38%)
世界全体 13.1%
日本 7.3%
まったく不勉強でしたが、
山田教授は、
「パラサイトシングル」「婚活」などの命名者なのです。
とにかく、その分析の着眼力は驚嘆に値いします。
「これはスゴイ!!」と思った本は、
これまでは波頭亮さんの
当ブログ2012年4月「これは凄い!!成熟日本への進路」
http://uenorio.blogspot.jp/2012/04/blog-post_23.html
でしたが、
本書はこれに匹敵するインパクトがあります。
若者に冷酷の意味は以下のとおりです。
社会が若者に冷酷なのではありません。
国の制度が若者に冷酷なのです。
どういうことかと言うと、こうです。
今の若者は、パラサイトシングル、などで
親のスネをかじっています。
若者の親は、高度成長期の真最中に就職しました。
ほとんどの人は、
ほぼ望む安定した正社員の座を獲得することが
できました。
従って生活も安定していて、
子供の面倒を見ることが可能です。
子供がブラブラしていても、
定職に就かなくても、
不安定で低賃金の非正規労働者でも、
結婚しないで家に居残っていても、
生活を保証することが可能なのです。
そのように、
親がかりで独身の人をパラサイトシングルと命名したのです。
私は以前、当ブログで、
親がまともに育児ができない対策として、
2世代・3世代住居の拡大を提案しました。
2012年5月「2世代・3世代同居を考える」
http://uenorio.blogspot.jp/2012/05/blog-post_5360.html
この項のタイトルは間違っていましたね。
育児強化の目的からすると、2世代では無関係で
3世代とすべきでした。
「2世代」は、現在のようにパラサイトシングル
を助長することになってしまうのです。
親の負担ということでは、たとえば教育費です。
日本では大学を出るまでほとんどの学費を親が出している。
欧米では国が学費補助をしたり、
各種奨学金制度がありで、
親が負担することはほとんどない。
日本の社会維持費は
教育費補助に使われずに、
その多くが高齢者向きの社会保障に使われている。
親が教育費等の子供の費用を負担しているので、
日本の財政は保っているのだ、
と言えるのです。
これらのすべてにデータが示されています。
ご関心ある方は是非本書をご覧ください。
ところがです。
その状態はいつまで続きますか?
今の脛かじりが親世代になったときに
その親は子達の面倒を見れますか?
その力はないでしょう。
それなりに恵まれた家庭に育ち教育を受けられる層と
生活破綻に近い家庭で生を受ける層とに二極化し
中間層主体の日本社会のイメージは崩壊します。
この状態を放置すれば、社会が破たんします。
ではどうしますか?
そこにはあまり名案はないようです。
(上野意見)抜本策は日本の産業が活性化して、
正規雇用者を増やし、
まともな生活ができるように賃金を上げるしかないのです。
さすがにこの名案は、山田先生にもないようです。
先生の挙げられる対策は以下のようなものです。
子供手当を増やす。
年金など社会保障費を減らし教育費補助等に回す。
女性が働きやすい環境を作る。
職業人として活躍できる教育を充実する。
現状の分析の切れ味に比較して、
これらの対策は一般的です。
対策の一つは、
非正規労働者の賃金を上げることです。
非正規労働者を減らせという説もありますが、
そうすると産業構造が硬直化して、
世界の変化に追随できなくなります。
企業は自分達に都合のよい非正規労働という制度
を利用するのですから、
そのコストが高まることは、
自助努力で対応しなければならないでしょう。
アクリフーズの農薬混入問題は、
信頼社会の日本で起きたということで衝撃的ですが
(中国と同じことになってしまいました)、
本書の文脈「若者に冷酷」にも関係しているでしょう。
日本再生の対策は、
前掲の波頭さんの著書の方が具体的です。
私の主張は、
若者に力をつける元は幼児時代に決まるので、
幼稚園で競争心を強化する教育をしましょう、
ということになります。
2009年1月「幼稚園時代から競争心を!」
http://www.newspt.co.jp/data/mailmaga/bk/0004.txt
しかし、
改善は、現状を見える化することがスタート台です。
その点からすると、問題が明確になれば、
改善方向は決まってくるのです。
その意味で、
山田先生の問題指摘は的を射ていますから、
その先の解決策はみんなで知恵を出し、
将来の日本のために協力しなければならないのです。
年金の減額も我慢しましょう!!
追記:
当書では以下のように
興味深いテーマが取り上げられています。
ご参照ください。
就活以外の選択肢がない学生たち
司法試験不合格者をどう処遇するか
結婚を阻害する要因が山積
なぜ若者は恋人をつくらないのか
学歴を費用対効果で格付けする
パラサイトシングルの末路
おカネを使わない日本の男性
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