TPP(環太平洋経済連携協定)は、
「米国を含む環太平洋地域で
貿易や投資を自由化する新ルール。
市場開放の対象は関税だけでなく、
検疫、技術基準、知的財産権、政府調達など
24分野にわたる」(10月23日日経新聞)
なのですが、この「交渉に」加わるかどうかで、
国会ではなく民主党内でもめています。
「TPPお化け」というのは、
実態の分からない怖いものということでしょうか。
主にTPP反対派が使っている言葉のようです。
私は、
10月23日のフジテレビ「新報道2001」を見て、
もめている本質が分かりました。
この番組は、
非常によいタイミングでのよい報道でした。
以下に、
この問題の「初心者」向けの解説をさせていただきます。
まず、現時点の問題は、
「交渉に加わるかどうか」であって、
「加盟するかどうか」ではありません。
反対派の主張はこうです。
TPPはアメリカ主導なので、
アメリカの都合のよいように押し切られてしまう。
そうすれば、日本の農業は壊滅だ。
医療保険だって、民間の保険業者が入ってきて
日本の健康保険制度はガタガタになってしまう。
アメリカの主張が通ることは、
来年1月発効を目指す米韓自由貿易協定で
韓国の農業が壊滅しそうになっている例で分かる。
反対派の主張は一言で言えば、
既に枠組みは決まっていて、
交渉参加=悪条件を呑まされる、
という強迫観念に立っているという感じです。
呑まされるという判断は、
過去の日米交渉の経験的判断に基づいています。
ですが反対派の本音は、
農業を守りたい、農業関係者の票を大事にしたい、
ということでしょう。
これに対して、賛成派の主張はこうです。
TPPは9カ国(+日本)が協議する場である。
一方的にアメリカの主張が通るわけではない。
日本は受け身の姿勢ではなく、
積極的に参加して日本に有利な条件を作り出せばよい。
参加しなければ、
有利な条件を作り出すことはできない。
アメリカが
自国の利益(または一部の産業の利益)を狙って
交渉に臨んでくるのはある面で当然だ。
しかしそのアメリカには、
同じ状況・意見・利害関係を持つ国と組んで
対抗すればよい。
それが、2国間交渉と異なる点だ。
強い交渉力を持てばよいのだ。
失うものより、得るものが大きい、
初めから負けると思うな、
前向きに自信を持って臨め、という判断です。
当番組では以下のような事例が紹介されました。
日米の貿易交渉で牛肉の自由化をした際に、
日本政府は、
規模を10倍にすればよいと補助制度を作った。
それに乗った事業者は、規模を拡大したが
輸入牛肉の値段には太刀打ちできず
育牛事業は完敗だった、
仲間の何人かは自殺した、というのです。
かたやで、イチゴやサクランボ、米沢牛を輸出して
繁栄している山形の事業者も紹介されました。
このことはきわめて示唆に富む事例紹介です。
価格競争の世界では、規模の差がある場合は
小さい方は太刀打ちできません。
一般的な薄型テレビでは、
ソニーでもパナソニックでも黒字にできないのです。
日本の一般的な農畜産業は、
アメリカや豪州の農畜産業に敵うわけがありません。
規模の小さな事業者は、専門特化して生きるのです。
量ではなく質です。
日本人はそれが得意のはずです。
TPPの土俵でも、日本は、
得意分野を開発してそこに集中する、
各国とも自分の得意分野を強化して、
そのTPP参加企業の市場をお客様にすればよいのです。
それが、
このような経済圏創出のメリットではないですか。
そのために、弱い分野は撤退しなければなりません。
半端な規模拡大を支援するのではなく、
山形の事業者のような、
その地域の自然環境に合致した、
あるいは日本の得意分野に特化する
転業を支援すべきです。
どうにもならない場合は、
失業保険的な補償をすることになるでしょう。
その原資は、
日本の強い産業の収益(からの税)で賄うのです。
大ざっぱに言えば、
TPP反対派はネガティブ思考で、
TPP賛成派はポジティブ思考だと言えます。
守りの姿勢か攻めの姿勢かという見方も
できるでしょう。
この問題を検討する上で、
大事な視点(「目的・ねらい」)は、
何が国民の生活にとって好ましいのか、です。
就業人口の3%しかない農業従事者や、
特定の産業の従事者にとって好ましいかどうか、
であってはなりません。
国民にとってよいことであれば
マイナスの影響を受ける人たちに
適切な補償をすることに
国民は反対しないでしょう。
アメリカの言いなりにならない強い交渉力を
期待したいですね。
でも誰がその交渉を担当するのでしょう。
そういう方はおられるのでしょうか?
これが反対派と賛成派の現実論かもしれません。
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