これは、バーバラ・エーレンライクという
細胞生物学で博士号をとった米国の女性(詳しくは分かりません)が
2009年に書いた著書の翻訳本のタイトルです。
原題の直訳は、
「明るい側面への偏り-いかにポジティブシンキングの無慈悲な勧めが
アメリカを蝕んできたか」です。
驚きましたが、
アメリカのポジティブシンキングは、
我々が「前向きにものごとを考えろ」 「批判ばかりしていたら前進はない」
と言うようなものとは異質のようです。
この本によると、アメリカでは、
ポジティブ=正
ネガティブ=邪または悪
と考えられる風潮があるようです。
極端に言えば、ポジティブシンキングを批判すれば
「国賊」扱いになるのです。
「引き寄せの法則」
(望みのものを思い描けば、現実にそれを引き寄せることができる)
が多くの人に信じられました(あるいは信じられています)。
その究極の結末が「リーマンショック」だというのです。
不動産業者たちは、本来はその財力がない人たちに
「大丈夫です。買った不動産を担保に融資してあげます」
と、夢の持ち家を勧めました。
「持ち家を欲しいと念ずれば持てるのです」
という引き寄せの法則への便乗です。
金利高騰等で、
返済額が年収の130%になる例もあったそうです。
当然ながら、夢は現実の前に敗れ
破産者が急増したのです。
返済能力の評価の低い人向けのサブプライムローンは
焦げ付き大量発生によって、
その債権を取りまとめて証券として販売した首謀者の
リーマンブラザーズの破綻が起きました。
同社では、
不動産事業のリスクを説いた責任者を
「後ろ向きでありこの事業の責任者にふさわしくない」
として解雇しています。
その意味で、ポジティブシンキングが
リーマンショックの遠因であるというのです。
このようなポジティブシンキングは一種の宗教ですね。
現に、ポジティブシンキングの布教(普及)で
飯を食っているコンサルタント類がたくさんいるのだそうです。
その背景には、アメリカには貧困層も多く、
ポジティブシンキングでも持ち出さないと暴動が起きてしまう、
それに対して、
「ポジティブに物事を考えれば、いつかは良くなるよ」
という考え方を経営者や支配層が悪用しているのだ、
という面もあるようです。
ポジティブシンキングの思考特性は「何とかなるさ」
だと思われますが、
それは家計の貯蓄率の低さに表われます。
「主要国の家計貯蓄率の推移」
http://www2.ttcn.ne.jp/honkawa/4520.html
を参照してください。
アメリカは世界の主要国の中でずっと最下位です。
貯蓄がなければ失業すると
すぐに借金の返済は不能になりますね。
なお、本書によると
アメリカでポジティブシンキングがもてはやされるようになったのは、
必ずしも開拓者魂の延長ではなく、
開拓民が持ち込んだカルヴァン主義(ピューリタニズム)
に対する反抗からだったのだそうです。
ですから、単なる楽観主義ではないのです。
ここまでの分析・解説は大変勉強になりました。
しかしバーバラさんは、科学者であるせいか
あるいはアメリカの風土のせいか
病気における心と体の関係、つまり心が体を変える、
というポジティブな効果についても否定的です。
(ご自分が乳がんで苦しんだ経験を踏まえても、です)
私の妻の母親は、
二人が結婚する頃から、、医者から
「(ガンのため)あと3ヶ月の命です」と言われました。
ところが、皮膚、乳房、肺、脊髄と転移を繰り返して、
寝たきりから歩けるように復活するなどの「奇跡」を起こしながら
20年間生きました。
「孫の顔を見たい」「孫の成長を見たい」
という強い思いがガンに勝ったのだと思っています。
これは科学の世界ではないですね。
このメルマガ7月号の「医学と医療、「BOK」と技術書」
でご紹介した帯津三敬病院の帯津良一先生は、
「気」の活用等の東洋医学と西洋医学の併用で
ガンの治療に大きな成果を挙げておられます。
アメリカは、科学的に証明されていない
「気」の世界は苦手なようですから、
結果がものを言う治療中心の医学では
日本は世界的に見て、かなり有利な立場にあるようです。
帯津先生にはもっともっと頑張っていただきたいものです。
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