ここのところ、激しい低価格による顧客抱え込み競争が
外食業界で行われています。
はじめに世間の話題を賑わせたのは、牛丼業界です。
松屋とすき家が250円の牛丼を出しました。
この料金なら、サラダなどを贅沢に足しても
500円で立派な昼食になります。
うなぎなども500円くらいで出しています。
牛丼の老舗吉野家は、単純な価格競争はしないと
250円路線には乗らずに、おそば屋兼営のような
業態を作ったりしています。
ですが、今のところ負け戦のようです。
渡邉美樹社長が率いる和民チェーンが
半額チケットバックキャンペーンを展開しています。
はじめのキャンペーン期間は1週間でした。
キャンペーン期間中は料金の半額のチケットをもらえます。
このチケットは1ヶ月間くらい有効です。
はじめのキャンペーンは成功だったようで、
もう少し期間の長い第2弾を実施しました。
あの賢明な渡邉美樹社長のことですから
安易な取り組みはされていないと思います。
何らかの目論見がおありなのでしょう。
当社のオフィスは、
先日まで日曜の21時から放映していた連続ドラマ
「新参者」の舞台になっていた小伝馬町にあります。
この界隈は、古くからの町並みも残っており
飲食店もたくさんあります。
この近辺の餃子屋、中華料理屋、居酒屋3軒が
千円前後の「お疲れ様セット」「ちょいと一杯セット」
などと称したメニュを提供しています。
生ビールなどの飲み物1杯、お通し、
まともな一品料理がついています。
そうしましたら、先日からそのうちの1軒の中華料理屋は
そのセットを800円にしました。
そこは40歳くらいの夫婦が経営者ですが、
そのご主人が、いつも近所を偵察しているのだそうです。
やる気があったらそれくらいのことはしなければなりません。
そうしましたら、今度はびっくりの低価格が出現しました。
それは新しく開業した中華料理屋です。
「飲み放題680円」なのです。
別のお客様の囲い込みですね。
その店もそうですが、
どの店も食べ物はおいしいのです。
まずければ、いくら低価格でもお客様は2度とその店に行きません。
そして、どこもお客様に不満を与えない早さで料理が出てきます。
「うまい」「早い」があって「安い」が効くのです。
ユニクロの低価格路線も同じビジネスモデルです。
お客様が喜ぶ(うまい)ものを安く提供します。
ユニクロの本質は製造業です。
ユニクロが大きくなれば、そこで雇用も吸収でき
世界に発展するのは大変結構なことです。
本来の飲食業の本質はサービス業です。
ところが、牛丼のチェーンやワタミのチェーンは
サービス業に製造業のビジネスモデルを持ち込んで
食材の大量生産による低価格を実現しています。
こういうチェーンで従業員との交流を期待して
その店に行く人はほとんどいないでしょう。
これに対して、チェーンでないお店では
そこのおやじ・おかみや従業員との交流も楽しみの一つです。
そのお店の個性を活かしてお客を維持すればよいのです。
その時のきっかけ作りが安いセットであるということでしょう。
製造業型チェーンの低価格とは意味が異なります。
製造業型チェーンは、製造業型チェーン同士で
顔の見えない移り気なお客様を低価格料金で取り合うのです。
ということで、独立した個店と製造業型チェーンは
棲み分けなのです。
両者の低価格の意味は異なります。
情報サービス業も棲み分けが進むでしょう。
クラウドやパッケージ提供ビジネスに代表される
製造業型ビジネスモデルと
お客様にびったりくっついて行き届いたサービスを提供する
ビジネスモデルとです。
製造業型チェーンの場合には、
サービス提供者のオーダによって物を生産する製造業者が存在します。
それはそれで、独立のビジネスモデルが必要です。
つまり、これからの情報サービス業は
大手の製造業型サービス提供者
その下で製造技術を活かして物作りを行う事業者
お客様にくっついてサービスを提供する事業者
に明確に分化していくでしょう。
お客様にくっついてサービスを提供する事業者としては
前述の個店の飲食業のビジネスモデルは参考になりそうです。
その際、「何を売りにするか」が重要な戦略であることは
言うまでもありません。
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