2024年1月24日水曜日

インドはどういう国?

[このテーマの目的・ねらい】
目的:
 世界で台頭著しいインドについて研究してみました。
ねらい:
 日本も負けずに「日本色」を出していきたいですね。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
本項は、学士會会報2024ーⅠ号に掲載されました
国際大学特任教授田所昌幸氏による寄稿
「国際政治の観点から見たインドを巡る情勢」のご紹介+αです。


A.インドはどういう国か(寄稿文対象外)

1.人口(2023年国連統計データ)
・人口では、2023年に世界一になりました。

インド

142,860万人

中国

142,570万人

アメリカ

3億4,000万人

インドネシア

2億7,750万人

パキスタン

2億4,050万人

ナイジェリア

2億2,380万人

12

日本

1億2,330万人


2.GDP(2023年IMFデータ)単位百万米ドル
・GDP総額でも世界第5位の大国です。

アメリカ合衆国

26,854,600

中国

19,373,586

日本

4,409,738

ドイツ

4,308,854

インド

3,736,882

イギリス

3,158,938

フランス

2,923,489


3.1人当たりGDP(2022年IMFデータ)単位米ドル
・ところが、1人当たりGDPでは、最貧国レベルです。
・大国なのに、国全体としてはまだまだ貧乏なのです。
・貧富の差は激しいでしょう。 

ルクセンブルク

132,370

アイルランド

114,580

ノルウェー

101,100

31

日本

35,390

147

インド

2,256


4.宗教

 ・ヒンドゥー教が8割。
 ・ムスリムが1億6千万人(11%)
  インドネシア、パキスタンに次ぐ世界で3番目のムスリム大国

5.言語
 ・連邦公用語は、ヒンディー語であるが、多くの国民が英語を使う。
 ・このことが、科学技術の発展に貢献している。

6.政治体制
 ・インドでは、インド憲法に基づき、
  連邦の議会議員選挙と州の議会議員選挙とが 定期的に実施されており、
  政党制度のもとで選挙結果に基づき政権が樹立される。 
 ・また、憲法上、三権分立が採用されており、
  また司法権に違憲立法審査権も認めら れている、
  立憲民主主義国家である。

7.科学技術
 ・原爆を開発して保有している。
 ・月面着陸を、ソ連、米国、中国に次いで実現している
  (最近成功させた日本は、その後5番目である)。
 ・重点投資志向です。

8.スポーツ

 ・インドがリオ大会までの五輪で獲得したメダルは
  初参加の1900年パリ大会(当時は英領インド)からの累計で
  わずか28個(金9、銀7、銅12)。
 ・このうち金8個を含む11個は、かつての「お家芸」だった
  フィールドホッケーでのものだ。
 ・それでも2008年の北京五輪では射撃で
  初めて個人種目での金メダリストが誕生。
  2012年のロンドン五輪では、
  レスリングや射撃などで銀2、銅4と過去最高の成績を挙げた。
 ・前回リオデジャネイロでは銀1銅1と低迷したが、
  その分東京大会にかける意気込みは大きかった。
 ・インド選手は重量挙げやバドミントン、レスリングなどで
  地道にメダルを積み上げ、男子やり投げでは
  陸上競技で121年ぶりのメダルとなる金メダルを獲得。
  選手団はこれまでの最多となる7個(金1、銀2、銅4)のメダルを
  母国に持ち帰った。

 ・インド・スポーツ庁(SAI)では陸上やレスリングなど、
  道具や施設にあまりカネがかからない競技に絞って重点的に強化し、
  厳しい財政の中で関連予算をやりくりして
  練習環境の改善や外国人コーチの招聘などに取り組んできた。
  これまでで最多、約120人の選手団を送り込んだ東京五輪は
  まさにこうした強化策の成果が問われる場となったのだ。
 ・インドがスポーツ不振なのは、
  スポーツを楽しむという文化がないのと、
  予算不足であるとされています。

 ・上野は、この点について2012年に以下の分析をしました。
 ・スポーツ不振理由は以下の点だとしています。     
1)肉体軽視
 ヒンドゥー教の教義 
 ・子供は運動よりも勉強に励む。
2)菜食主義
 ヒンドゥー教の教義 
 ・元気が出ません。
3)カースト制度
 ・自由な社会的交流の場が限定される。
4)貧困
 ・多くの国民はスポーツどころではありません。
5)国のスポーツ助成の貧困さ
 ・1)~4)の結果でしょう。

9.インドを率いるモディ首相
 1970年9月生まれ73歳
 カースト制度では低い階級の出身
 ヒンドゥー至上主義団体のRSS(民族奉仕団)の活動に参加しながら
 政治家を目指した。

 2001年に地元クジャラート州の首相になった。
 大規模な太陽光発電を実現し頭角を現わした。
 2014年にインドの首相になって、現在2期目

 メイクインインディアを掲げ、産業育成政策をとっている。
 その成果が自動車産業で世界有数の自動車輸出国になっている。
 現在も,クジュラート州に大型投資の誘致を行っている。
 (タタは半導体工場を新設する)

B.田所教授の意見
以下は田所教授の寄稿の転載です。

ヒンドゥー・ナショナリズム
・1990年代初頭に起こった経済危機をきっかけに、
 大幅に市場メカニズムを導入する改革を断行した。
・以降成長重視の開発主義的な方針が採られ、
 経済はおおむね順調に成長し、多数の中産階級が登場した。
・こういったインドの中産階級が、
 選挙を通じてモディの唱える多数派主義的ヒンドゥー・ナショナリズム
 を支持してきたことは重要だ。

・経済成長とともに寛容な価値観が強まりそうにも思えるが、
 競争的な環境では、少数派集団の保護のための制度は、
 多数派に対する差別だという不満も生んだ。

・しかもグローバル化によって、
 日常生活がますます欧米の生活様式に影響されるようになった
 人々には、自分のアイデンティティの再確認を、
 ヒンドゥー・ナショナリズムに求めたという面もあるのだろう。

インドの世界観と対外行動

・新自由主義的改革によって巨大な人口の活力を引き出した結果
 実現した経済成長が、インドの国際的存在寛を支えている。
・ヒンドゥー・ナショナリズムで国内をまとめる一方で、
 対外的には開発主義的政策を推進して国力の拡張に傾注しつつ、
 アメリカとも中国ともロシアとも良好な関係を維持して,
 国際社会での影響力を積極的に強化しようとしている。

・その底にある目標は、
 多極化した世界の中で一極の座を確立することなのだろう。
・巨大な文明圏国家を自認するインドにとっては、
 インドが大国であるのは当然のことなのである。
・よって核兵器であれ、国連の安全保障常任理事国の地位であれ、
 南アジアにおける勢力圏であれ、
 大国としての地位に付随する特権が承認されるのは当然のことだ
 ということになる。
・なにやらこれは中国の世界観を思わせるが、
 こういった大国意識によって周辺国との関係が困難になっている面も
 否めない。

・インドの戦略的自立に対する執着は根強い。
 平和や繁栄が重要なのはもちろんインドの人々にとっても
 日本人と違いはなかろうが、国際的な規範や制度への信頼は低く、
 同盟や国際協力を信頼して自国の行動の自由を犠牲にすることは
 あり得ない。

・戦略的自立のために大きな代償を受入れる覚悟のあるインドの姿は、
 周辺国や同盟国を常に気にしなければならない日本とは
 確かに異なった行動様式であり、核拡散であれ温暖化問題であれ,
 国際的コンセンサスをものともせずに自己主張をする姿に、
 憧れを感じる人も日本には多いのではないか。

・こういった基本的な世界観が安定している限りは、
 インドは自国の行動を制約するような同盟関係には
 与しようとはすまい。
・民主主義や法の支配といった普遍的価値観を説いても、
 おそらくそれは偽善と解釈されるだろう。
・様々な協力関係を様々な国々と問題領域ごとに合意する、
 それはギブアンドてイクに基づく取引である。
・中国かアメリカか、民主主義か権威主義かという選択を
 インドに強いても、それはムダというものだ。
・日印関係には大いに発展の余地はあるし、
 それはもちろん望ましい。
・しかし、日本は日本であるのと同様、
 インドはインドなのであるという前提からしか、
 建設的な関係は生まれない。

C.インドの世界観(私見)
インドは国境紛争を起している中国とも
決定的な対立を避けています。
ロシアやアメリカとも全方位外交で、どちらにも与しません。
そして、台頭著しい「グローバルサウス」のリーダとして
行動しています。

この全方位外交は、
長くイギリスの植民地だった経験から英米は信用せずに
バランスオブパワーを意識しての戦略でしょう。

地理的に比較的独立していることから、
自立を保ちやすいという面もあるでしょう。
隣国パキスタンとは、宗教上の相違もあり、
紛争は終わることはないでしょうが、
それ以外には中国やロシアと違って、
他国へ積極的に侵略する必要もないのです。
インドが東南アジアに侵略を仕掛ける
という心配をする国はないでしょう.

(補足)
ロシアは寒い国ですから、温かい地域への進出希望があり、
それがDNAに組み込まれて侵略国家となっています。
ウクライナ侵攻がその典型です。

中国は歴史的に他国・多民族と争わねば生きていけない
ようになっていて、それがDNAになっています。
いったん、領土を確保すると
近隣を支配するようになります。
決して、習近平個人の問題ではないのです。

それに引き換え、インドは地域的に独立性が高く、
自ら他国を侵略する要因がありません。
おそらく、超大国になっても、
侵略国家にはならないでしょう。

【インドの宗教観】
インドの準国教であるヒンドゥー教について
ChatGPTに聞いてみました。
結論として、ヒンドゥー教が好戦的でない、
ということは一概には言えないようです。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
ヒンドゥー教は、
キリスト教やイスラム教に比して好戦的ではない
ということは言えますか?

こんにちは、これはBingです。😊

ヒンドゥー教は、
キリスト教やイスラム教とは異なる歴史と思想を持つ宗教です。
一概に好戦的かどうかを判断するのは難しいですが、
ヒンドゥー教には以下のような特徴があります。

これらの特徴から、ヒンドゥー教は、自分のカルマやカーストに従って生きることを重視し、暴力や戦争を好まないという傾向があると言えます4。しかし、ヒンドゥー教徒は、自分の信仰や社会秩序を守るために、必要に応じて戦うこともあります5

実際に、インドでは、ヒンドゥー教徒とイスラム教徒や仏教徒との間に、宗教的な対立や暴力が起こってきました 。

したがって、ヒンドゥー教は、キリスト教やイスラム教に比べて、好戦的ではないということは言えません。ヒンドゥー教は、他の宗教と同様に、時代や地域、政治や社会によって、その表現や影響が変化してきたと考えるべきです。

0 件のコメント: