2022年2月12日土曜日

「年寄りは集まって住め」

【このテーマの目的・ねらい】
目的:
 高齢時に幸福な人生が送れる方法を考えましょう。
ねらい:
 「若い」時から準備しましょう。
 ご関心ある方は、ぜひ本書をお読みください。
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本テーマは、川口雅裕 NPO法人「老いの工学研究所」理事長の
著書のご紹介です。















上掲の女性は、風吹ジュンさんで、ご推薦だそうです。
私も本書の基本趣旨は大賛成です。

本書の構成は以下のように多岐に亘っていますので、
私の判断で、適当なまとめをさせていただきました。
第1章 高齢者たちの姿や声に学ぶ
第2章 現代の高齢者たちは、どのような人たちか
第3章 高齢期の幸福について――健康、お金、親子関係・・・
第4章 高齢者が集まって暮らすことによる価値
終章  幸福な高齢期に向かって

【上野の本書まとめ】
1.高齢者に関わる調査結果
 2020年 65歳以上の人口3,763万人
       単身高齢者 737万人
       夫婦のみ高齢者 1,521万人
(1)一般社団法人日本老年学的評価研究機構の調査
  (日本全国20万人を対象にしている調査)
 1)11年間にわたる追跡調査で、
  「趣味の会やスポーツの会へまったく参加しない人」
    約30%死亡
  「週1回以上参加している人」
    約20%死亡
 2)「誰かと一緒に運動する」ことで
   抑うつ状態になる人の割合が下がる
 3)65歳以上の約2万人を対象にした調査
  「よく会う友人の種類の数が多いほど
   歯が多く残っている」

 4)自立高齢者を対象にした10年間の追跡調査
  「家族やそれ以外の相手からのサポートを
  受けられる状況にあった高齢者は、そうでない人よりも
  10年後の要介護リスクが10%以上減少していた。

 5)自立高齢者を対象にした5年間の追跡調査
  週3回以上交流の機会を持っていた高齢者は
  5年後に要介護認定を受けた割合は7.7%
  週2回以下の場合は14.0%

 6)これらの調査を統括した代表の近藤克則氏
  (千葉大学予防医学センター教授)の意見
  「どこに住んでいるか」によって
   健康寿命の平均値が大きく異なる」
  「周囲に人がたくさんいるところで、関りを持ちながら
   暮らしていくことが重要だ」
  「自然と出歩くようになり、
   人と会うような生活ができる街に住めば、
   健康でいられる可能性は高い」

(2)2018年神戸大学・同志社大学教授の共同研究
  (幸福感と自己決定―日本における実証研究)
  幸福感は「健康」「人間関係」に次いで
  「自己決定度」に影響を受ける。

(3)老いの工学研究所の2021年調査
高齢者は若い世代よりも同世代との交流を望んでおり、
その傾向は女性ほど顕著である。


 










交流の相手は「趣味の仲間」「近所の人」「子や孫」の順である。












 

2.健康長寿の指導原理
(1)幸福長寿の方程式(筆者提唱)

幸福長寿は、身体のみでなく、精神的・社会的に良い状態をいう。
安全な家の必要性
 「高齢者の事故の77%は家の中で起きている」
 2018年の消費者庁調査 家庭内事故の死者数
 (参考:交通事故死は2,600人)   
  転倒・転落 8,800人
  不慮の窒息 8,000人
  不慮の溺死および溺水 7,100人
  (体操の小野清子さんの例もそれに該当。
  98歳まで健康な1人暮らしをしていた私の祖母も
  自宅で骨折してから施設暮らしになってしまった)

(2)幸福の4因子(慶大前野隆司教授)
  1)やってみよう!(自己実現と成長)
  2)ありがとう!(つながりと感謝)
  3)なんとかなる!(前向きと楽)
  4)ありのままに!(独立とマイペース)

(3)デンマークで提唱された「高齢者福祉の3原則」
 これが本書全体の結論的指導原理でもあると思われます。
 さすがデンマークです。
 1)生活の継続性
   できる限り在宅でそれまでと変わらない暮らしができること
 2)自己決定の尊重
   高齢者自身が生き方や暮らし方を自分で決定し、
   周囲はその決定を尊重すること
 3)残存能力の活用
   本人ができることまで手助けするのは
   能力低下を招くのでしない。

3.老人ホーム・介護施設の問題点
 1)収容力に制約がある
  誰でもすぐに入れるわけではない。
 2)入所者の自由・自己決定権が制約される
  集団生活をするのでルールに従って
  (いいなりな)生活をしなければならない。
  (上野注:上記指導原理からしてこの点は致命的欠陥)
 3)施設の経営として介護度の高い方が収入になるので、
  入所者の健康を増進させようという動機付けが起きない。
      ⇓
  デンマークでは、1988年に「老人介護施設」の新設禁止となった。

  この点は、国の補助制度もある「サービス付き高齢者向け住宅」
  でも同じこと

4.筆者の勧める高齢者向け生活拠点の例 中楽坊
 1)分譲マンションである
  そこで暮らす高齢者の強い当事者意識や主体性がある。
  自治会がある。
  当然ながら自室にキッチンもあり、自立生活ができる。
 2)ライフアテンダントが常駐している
  余計な手出しはしない。
  「近くにいる娘や息子のような存在で、何かあれば手助けする」
  緊急時にも頼りになる。
 3)体操会やサークル活動なども行われている
  「仲間と一緒に楽しむ」風潮がある。
 4)中楽坊の状況
  ①「自由」だけど「自分勝手」ではない。
   一緒に旅行に行ったり、遊びに行ったりする仲間ができている。
  ②「人生の最後まで自立し、家で終わりを迎える」実現例
  ③「いいコミュニティは、高齢者に自信と勇気を与える」
   60代単身女性入居者の例 仲間を意識できて感激した例
  ④病院で亡くなった入所者の遺体をエントランスで見送った例
  ⑤コロナで故郷に戻れなかったライフアテンダントの成人式を
   入居者有志がしてあげた例。

【上野意見】
1月29日の日経新聞には以下の情報がありました。
1)福井・滋賀では60代に婚活支援をしている。
2)多くの自治体で、3世代同居の家づくり支援をしている。
  (上野大賛成)
3)江戸川区ではシニア単身女性向けシェアハウスが誕生している。

そこで私は、
このようなシェアハウスを作ったらよいと思っています。
1)1フロアに10室(LDK)×数フロアとする。
2)高齢単身者専用とする(男女不問)。
  日本の737万人が潜在的対象。
3)当然ながら、部屋への行き来は自由とする。
  男女の交流も期待する。

4)各フロアにゆったりした共有交流スペースを設ける。
  てんでに好きなことができるようにする。
  他のフロアの共有スペースに行ってもよい。
5)1階は家族や友人が訪問できる公開スペースとする。
  2階以上は通常のマンション等と同じ入居管理方式とする。

6)全体で利用できるゲートボール等のスペースも作る。
7)屋上に露天風呂ができればなおよい。
8)ここで亡くなる人がいても、
  お祓いをして次の入居者が気にならないようにする。

9)入居者のニーズ変化を想定し、
  できれば20年で建て替えができるような造りとする。
  (旧式マンションのゴーストタウン化の轍を踏まない)
10)国や自治体の補助も活用する。
11)室料は10万円程度を目標にする。

12)多数の入居者の状況を伝える動画(YOU TUBE等)を公開し、
  広告費(協賛金)を集め、入居者に還元する。
  入居者たちは、その資金をここでの生活の充実に使用する。
13)これが成功すれば、高齢者先進国日本の良きモデルとなる。
  
このような施設を、入居者の自立意識で運営するようにします。
前掲、中楽坊のようになれば理想的です。
何とか賃貸方式でできないものでしょうか。

1 件のコメント:

上野 則男 さんのコメント...

私の大学同級生からのメールです。

メルマガありがとうございます。
「年寄りは集まって住め」は本当にその通りです。
特に「周囲にひとがたくさんいるところで、関りを持ちながら・・・」
という点が大事と思います。