2022年2月7日月曜日

「生き物の死にざま」

[このテーマの目的・ねらい]
目的:
 多くの動物たちのそれぞれ「スゴイ!」「ユニークな」
 「最期」のあり方についてご関心を持っていただきます。
ねらい:
 ぜひ、本書のご一読をお勧めします。
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本テーマは、
稲垣栄洋静岡大学大学院農学研究科教授の著書のご紹介です。

これは理屈抜きで面白い、興味深い本です。
このような内容が書かれています。29が最後です。
2.子に身を捧ぐ生涯 ハサミムシ
3.母なる川で循環していく命 サケ
4.子を思い命がけの侵入と脱出 アカイエカ
6.メスに食われながらも交尾をやめないオス カマキリ
8.メスに寄生し、放精後はメスに吸収されるオス 
                 チョウチンアンコウ
9.生涯一度きりの交接と子への愛 タコ
15.餌にたどりつくまでの長く危険な道のり アリ
16.卵を産めなくなった女王アリの最期 シロアリ
27.ヒトを必要としたオオカミの子孫の今 イヌ
28.かつては神とされた獣たちの終焉 二ホンオオカミ
29.死を悼む動物なのか ゾウ

この中から一つだけですが、タコの部をご紹介します。
ご覧のように、文章も分かりやすく「お上手」なのです。
ぜひ、ご関心の向きは、ぜひ本書をお読みください。
文庫本で本体価格750円です。
(前略)
タコの寿命は明らかでないが、
1年から数年生きると考えられている。
そして、タコはその一生の最後に、一度だけ繁殖を行う。
タコにとって、繁殖は生涯最後にして最大のイベントなのである。

タコの繁殖はオスとメスとの出会いから始まる。
タコのオスはドラマチックに甘いムードでメスに求愛する。
しかし、複数のオスがメスに求愛してしまうこともある。
そのときは、メスをめぐってオスたちは激しく闘う。
(中略)
この戦いに勝利したオスは、あらためてメスに求愛し、
メスが受け入れるとカップルが成立するのである。
そして相思相愛の2匹のタコは、抱擁し合い、
生涯でたった1回の交接を行う。

タコたちは、その時間を慈しむように、その時間を惜しむかのように
ゆっくりとゆっくりと数時間をかけてその儀式を行う。
そして、儀式が終わると間もなく、オスは力尽き生涯を閉じてゆく。
交接が終わると命が終わるようにプログラムされているのである。
(上野疑問:交接できないオスはいつまでも生きているのだろうか?)

残されたメスには大切な仕事が残っている。
タコのメスは、岩の隙間などに卵を産みつける。
他の海の生き物であれば、これですべてがおしまいである。
しかし、タコのメスにとっては、
これから壮絶な子育てが待っている。

卵が無事にかええるまで、巣穴の中で卵を守り続けるのである。
卵が孵化するまでの期間は、マダコで1か月、
冷たい海に棲むミズダコでは、卵の発育が遅いため、
その期間は6か月から10か月にも及ぶと言われている。
これだけの長い間、メスは卵を守り続けるのである。

まさに母の愛と言うべきなのだろうか。
この間、メスは一切餌を獲ることもなく、
片時も離れずに卵を抱き続けるのである。

「少しくらい」と
わずかな時間であれば巣穴を離れてもよさそうなものだが、
タコの母親はそんなことはしない。
危険にあふれた海の中では一瞬の油断もゆるされないのだ。

もちろん、ただ、巣穴の中に留まるというだけではない。
母ダコは、ときどき卵をなでては、
卵についたゴミやカビを取り除き、
水を吹きかけては卵のまわりの澱んだ水を新鮮な水に替える。
こうして、卵に愛情を注ぎ続けるのである。

餌を口にしない母ダコは、次第に体力が衰えてくるが、
卵を狙う天敵は、常に母ダコの隙を狙っている。
また海の中で隠れ家になる岩場は貴重なので、
隠れ家を求めて巣穴を奪おうとする不届き者もいる。

中には、
産卵のために他のタコが巣穴を乗っ取ろうとすることもある。
そのたびに、母親は力を振り絞り、巣穴を守る。

次第に衰え、力尽きかけようとも、卵に危機が迫れば、
悠然と立ち向かうのである。
こうして月日が過ぎてゆく。

そして、ついにその日はやってくる。
卵から小さな赤ちゃんたちが生まれてくるのである。
母ダコは、卵にやさしく水を吹きかけて、
卵を破って子どもたちが外に出るのを助けるとも言われている。

卵を守り続けたメスのタコはもう泳ぐ力は残っていない。
足を動かす力さえもうない。
子どもたちの孵化を見届けると、
母ダコは安心したように横たわり、力尽きて死んでゆくのである。
これが、母ダコの最期である。
そしてこれが、母と子の別れの時なのである。

なんとも感激的な母の愛の行いですね!!
こういうことは、親から教わっているわけではないので、
遺伝的継承でしょうが、その仕掛けはどうなっているのでしょう。
不思議なことです。
他の動物たちの前掲の行為も同じく不思議なことです。

人間にはそのような遺伝的継承として何があるのか
考えさせられます。

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