2021年9月14日火曜日

日銀の政策目標はおかしい!!

【このテーマの目的・ねらい】
目的:
 日銀の政策目標の不当性を指摘します。
ねらい:
 日本経済の立ち直り対策の検討につなげます。
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2021年9月9日の日経新聞第1面に、
日銀黒田総裁のインタビュ―記事が載りました。
2013年の就任時に掲げた「物価上昇率を2年程度で2%にする」
という公約の敗北宣言をせずに
「今後も金融緩和政策を続ける」と主張しただけでした。
こんなに自信過剰かニブイ人も珍しいですね。

私は、2013年時点で、黒田総裁のコミットはおかしいという主張を

その要旨を、「再論」の方から転載します。
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前稿で私が申しあげたのは、以下の点です。

1.アベノミクスの積極政策は高く評価する。
2.金融緩和も必要である。
3.ですが、物価上昇率目標達成を日銀の責任とするのは
  筋違いである。
4.なぜなら、物価は需要と供給のバランスで決まるのだから
  金融政策は間接的な機能しか果たしえない。

ところが不勉強でしたが、その後
4月7日の日経新聞での「検証」という解説記事を読みましたら、
以下のことが分かりました。

金融の量的緩和は、物価上昇(脱デフレ)に有効かどうかは
1990年代後半から15年に亘って
学者の間で議論されてきたテーマである。

有効だと主張する側には
 岩田規久男現日銀副総裁(当時上智大学等の教授)
 エール大学jの浜田宏一名誉教授
 ポールクルーグマンMIT教授

これに反論して、金融政策の限界を唱えた人や
物価は需要と供給のバランスで決まると主張した人は、
 吉川洋東大教授
 小宮隆太郎東大名誉教授
 翁邦雄(当時日銀、京大教授)

日銀がいくら民間銀行に資金を供給しても
不況で借りる企業がないので世の中にお金は流れない
という主張でした。

この議論は未だに続いていて決着はついていないのだそうです。
(経済学をあまり勉強しなかった経済学部出身の上野としては
理解に苦しみます)

量的緩和の効果については、複数の実証研究が行われましたが、
分析機関やデータの解釈によって、

「効く」「効かない」と正反対の議論が出ているそうです。

おそらく効果がまったくないということはないでしょう。
どの程度効くのかの議論であって、
それを学者さんたちが、自分に都合のよい土俵を作って
争っているとしか思えません。

私の主張は、
物価上昇は他の要因(実体経済の需給関係など)によって
影響されますので、
日銀が責任を持ちます、と啖呵を切れる問題ではないでしょう、

ということです。
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今回、物価上昇の要因についてもう少し検討してみます。
基本的には、物価は需要と供給の関係で決まります。
 需要>供給なら物価上昇
 需要<供給なら物価下落

調達コストが上がれば、供給側のプラス要因になりますが、
需要側がそれを受け入れなければ、物価は上昇しません。

日本の食料自給率は、大ざっぱに言って5割です。
5割は輸入に頼っています。
供給側の事情で値上げを要求され、
それを受け入れれば物価上昇となります。
需要側が代替品で済ませるか、消費する量を減らして対応すれば
消費者物価は上がりません。
収入の増加の可能性のない現在の消費者は、
後者の対応をとっています。

エネルギーの自給率は、多くの原発が稼働していない状況で
たったの1割です。しかし、
脱石炭・石油で天然ガスなどエネルギーの手段が多様化していて
うまく対応できれば
調達コストアップ=光熱費料金アップにならないですみます。
この場合、エネルギーコストと資金供給の関係は希薄です。

国内自給製品の供給者は、財布のひもの堅い消費者を前にして、
値上げしないで生き延びる方法を懸命に探っています。

日本は、ご認識のように「失われた20年」の長期低迷状態です。
この20年間で、
米国の名目平均年収は約8割、ドイツやフランスは約5割アップに対して
日本はなんと5%減少です。

日本は以下の悪循環中なのです。
 売上が上がらない⇒給与を上げられない⇒消費購買力が低い⇒
 売上が上がらない⇒投資をしない⇒投資による産業の給与が増えない
 ⇒売上が上がらない

いずれにしても、収入の増える当てのない消費者は支出を押さえます。

日銀は、この間ずっと、
低金利政策をとって経済成長を実現しようとしています。
しかし金利が安いからといって、
売上が見込めない投資をする経営者はいません。
したがって、まず「消費購買力を高める」ことが必要なのです。

それでは、金融緩和ではなくどうすべきかについて、
別項の「日本経済の脱ジリ貧対策、「日本再興庁」設置の提言」
で検討してみました。
この内容は、アベノミクスの「機動的な財政政策」
「民間投資を喚起する成長戦略」に該当します。

ぜひ、新首相の政策として検討していただければと思っています。
3人の自民党総裁候補者にメールでお送りしています。

2 件のコメント:

匿名 さんのコメント...

上野さんご指摘のように、日銀が物価2%上昇目標を実現するのは困難だと思うし、実現できてないのに軌道修正しないのもおかしいと思います。この間、株の買い支え・上昇のために巨額のお金が使われ、抜き差しできない状況に陥っています。日銀、年金機構が株を支えきれなくなれば(売却せざるを得なくなれば)株価は暴落です。このことは多くの人が知っており、日本の株高、日本経済は砂上の楼閣だと思います。今の日銀のメンバーはこの責任は何も取らず、任期が来れば止めるだけです。コロナ禍と合わせて、日本経済は正念場を迎えていると思います。蓄積のない家庭は大きな試練を迎えることになるのではないでしょうか。そして、国、地方自治体の税収は不足し、いつまで札束を増刷(国債発行)することで耐えられるか、不安がいっぱいです。・・・悲観的なメッセージで失礼しました。
尚、日本の食料自給率は37.17%(2020年)が正しいと思います。この面でも、日本は脆弱な基盤の上で運営されてされていると思います。根拠はありませんが、最低60%くらいには上昇させたいものです。

上野 則男 さんのコメント...

匿名さん
貴重なご意見ありがとうございます。
食料自給率ですが、37%とかいうのはカロリーベースの自給率で、生産額ベースでは66%です。しかしこの66%の自給率の基になっている畜産品の飼料は輸入に頼っているので実質はもっと低いと言われています。それで本項では大ざっぱに半分としました。説明不足で申し訳ありません。
今後ともご意見の投稿をよろしくお願いいたします。