2020年11月26日木曜日

「宇宙考古学の冒険」

[このテーマの目的・ねらい]
目的:
 「宇宙考古学」とは何かについて多少知っていただきます。
 「宇宙考古学」手法によって
 非常に多くの遺跡が見つかっていることを知っていただきます。
 超能力による発見との対比もしてみました。
ねらい:
 本テーマでのご紹介は不十分ですから、
 ご関心ある方は、ぜひ本書をお読みください。
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本テーマは、
サラ・カーパックさんというアラバマ大学考古学教授の書名で、
日経新聞の書評に概略以下の記載がありましたので、
興味を惹かれて買ってみました。

「宇宙考古学の冒険」という本書のタイトルを、
古代の宇宙人が出てくるトンデモ本と勘違いしてスルーした
人は少なくないだろう。
その全員を呼び戻し、書店のレジに並ばせたい。
考古学の現在と近未来の姿を活写した、
最先端の楽しい科学書だからである。

タイトルの「宇宙」には人工衛星がとぶ宇宙空間のほか、
飛行機やドローンの高度も含めた「上空」のすべてが入る。
つまり、
遺跡を上から観測して記録する遠隔技術を用いた考古学が本書の主題だ。

(中略)
今では、宇宙からの衛星画像を解析し、
地下に眠る未知の都市の姿を透視できる。

ところが、実際に本書を手に取ってみると478頁の大著である上に、
以下のような章立てでした。

はじめに 私が宇宙考古学者になったわけ
第1章 歴史は「積み重なる」
第2章 宇宙考古学とは何か
第3章 宇宙考古学の可能性

第4章 危ない仕事
第5章 間違った場所を掘っている
第6章 世界一周”新”考古学の旅

第7章 巨大王国の崩壊
第8章 首都の発見
第9章 未来の考古学

第10章 乗り越えるべきもの
第11章 盗まれた遺産
第12章 だれでも参加できる宇宙考古学

これでは、私が知りたいことがどこに書いてあるのか
さっぱりわかりません。
私が知りたい一つは、
「宇宙」からの画像を「どのように加工処理して」
「どうやって」遺跡跡を見つけるのか、という技術的手法です。

探してみると、
その説明は第2章にありました。
こんな具合いです。

考古学者が、
航空機か人工衛星で取得した何らかのデータを用いて
現在の景観を評価し、遠い昔に地下に埋まった川や、
知られざる古代遺跡を見つけようとする場合は、
もれなく「宇宙考古学」(英語名Archaeology from Space)
をしていることになる。

宇宙考古学は、
「衛星考古学」や「衛星リモートセンシング」とも呼ばれる。
こんな奇妙な名前が付けられた根本的な責任はNASAにある。

2008年にNASAは「宇宙考古学」プログラムを開始した。
これは大規模な考古学研究プロジェクトで
衛星データを利用する科学者に研究助成金を与えるプログラムだ。
私がしていることをNASAが宇宙考古学と呼ぶのなら、
私に反論なんかできない。
(上野注:こんな風に茶化した脱線がよく入ります)

画像に含まれるそれぞれの画素を構成する光には、
スペクトルの可視光部分だけでなく、
人工衛星の撮像システムによるが、
近赤外光や中赤外光も含まれている。

さらに地表のあらゆるものには、独自の化学的特性があって、
それが反射する光の性質に影響している。
たとえば甚句衛星画像では、砂地と森林は全く違って見える。
この違いは肉眼でも簡単にわかる。

一方で森林の中にある樹木の種類を見分ける必用がある場合には、
化学的特性が関わってくる。
コナラ属の木々が示す化学的反応は、マツ属の木々とは異なる。

視覚的には、どの木も同じ緑色に見えるかもしれないが、
さまざまな波長の赤外線を用いて、
植生の健康状態のわずかな違いを視覚化すると、
色のバリエーションを感知することができる。

リモートセンシングの専門家は、
画像に「疑似カラー」を割り当てることで、
そうした違いをはっきりさせ、
地表の状況の個々の種類を識別している。

図の説明 目視では下の図のように変化のない地表が
加工処理すると上の図のように古代集落の跡が浮かび上がる。
どういう風に疑似カラーを設定するかで、
特別な場所を見つけ出すことができるのです。

この方法によって、
非常に多くの、けた違いに多くの遺跡候補が見つかっているそうで、
考古学者にとって業績を上げるには、
これまでと違う能力が必要となっています。
たいへんですね。

こういう例が後掲でありました。
地下に何か遺跡の石などがあると作物の生育に影響し
クロップマーク(作物痕)というその形が顕れる、のです。

本書は、「素人にも分かりやすく」を意図してでしょう、
物語り調で書かれていますので説明が冗長なのです。
申し訳ありませんが、私が苦手な人文科学系著述です。

科学的事実を説明するときには、
クロップマークのようなことを含め
もっと簡潔に説明してほしいと思います。

宇宙考古学手法を用いて、著者たちが遺跡を発掘した事例は、
「第8章首都の発見」にあります。
この首都とは、古代エジプト紀元前2千年頃の「イチ・タウイ」です。

発掘作業は、宇宙考古学でも従来考古学と同じです。
この記述はまさに人文科学的でよいわけで、
楽しく読むことができます。
ご関心ある方は本書をお読みください。

20年ほど前でしょうか。
こういうことがありました。
超能力者で有名な冝保愛子さんが、
吉村作治早稲田大学教授にエジプトへ連れていかれたきに
「この下に遺跡があります」と言いました。
そこを掘ったら本当に遺跡が出てきたというテレビ番組でした。

冝保愛子さんは、ピラミッドの建設について、
「人が作っている。超能力で石が半分の重さになっている」
と透視したそうです。

これまでのところ、
どういう方法でこの壮大なピラミッドが建設されたのかは
謎のままです。
手がかりになる何らかの道具なども見つかっていません。

その点で、何も道具を使わない冝保説は説得力があります。
ですが、当時はそんなに多数、
超能力を行使できる人材がいたのでしょうか。

いたのでしょうね。
超能力は、
人間あるいは動物が生存するために本来備えているものですが、
論理的思考力の発展などによって
その自然の能力が次第に失われたという説もあります。
古代エジプトには
多数の超能力保持者がいたとしても不思議ではありません。

ピラミッド建設法は
「宇宙考古学」では明らかにならないでしょうね。

宇宙考古学は単純に言えば、
超能力者に頼らず、
遺跡が正確に見つけられるようになったということです。
発掘方法は従来と変わりません。

因みに、吉村教授自身も
日本のエジプト考古学第一人者で、
衛星写真分析などのハイテクを導入した調査方法で(宇宙考古学です)
遺跡を発掘する手法が評価される(Wikipedia)
なのだそうですから、純科学的な方です。
不思議な方ですね。

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