2020年11月30日月曜日

「心臓突然死を防ぐために」

【このテーマの目的・ねらい】
目的:
 心臓突然死などの突然死の原因や対策を
 確認していただきます。
ねらい:
 いざというとき、慌てずに対応しましょう。
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本テーマは、学士會会報2020年Ⅵ号に掲載された
坂本哲也帝京大学附属病院長の同名寄稿のご紹介です。
その要旨にこう述べられています。
心停止で倒れた者にバイスタンダー(居合わせた人)が
AEDや心肺蘇生を施す例が増え、
この10年で心停止後の社会復帰率は大きく向上した。

なぜ心臓は突然止まるのか。
どのような病気や事故で起こりやすいのか。
救急医療の最前線に立ち、
心肺蘇生教育にも尽力してきた専門医が語る。

このテーマは、すべての人にとって他人事ではありません。
以下のような内容が述べられています。

1.心臓突然死とは
WHOでは、「突然死」を
「発症から24時間以内の予期せぬ内因性(病)死」
と定義しています。
その中でも、心臓に原因があると推定される病死を
「心臓突然死」と言います。

仮に24時間以内に死亡しなくても、
突然の心停止から心拍再開後、
数日から数か月の期間を経て死に至った場合も、
心臓突然死の中に含めます。

新型コロナウィルス感染症のために血栓ができ、
突然死を引き起こすこともあると言われています。

2.心臓突然死の発生場所
1)自宅 68%
  独居の場合は助かりません。
2)公共の場所 8%
3)道路上 7%
4)老人ホーム 5%
5)医院 2%

自宅にはAEDはありませんから、
救急車を呼ぶしかないですね。
その前にすべきことは、次項です。

3.斃れた人を見たら
1)肩を叩いて反応を確認
 反応なければ心停止です。
2)助けを呼んだ後、救急車を呼ぶ
3) 呼吸の確認と胸骨圧迫の開始
 呼吸がなければ心停止です。
 胸骨圧迫をします。
 胸骨圧迫は胸の真ん中が5センチくらい沈むくらい強く
 1分間100~120回のテンポで続けます。
4)AEDが入手できたら使用
 電極PADを胸部に貼ります。
 あとはAEDの指示に従います。

4.AEDの設置状況
2004年に一般人のAED使用が認められて以来、
急速に普及し、東京都の場合、
すべての駅、すべての交番に設置されています。

東京都での使用頻度は、
 駅 32%
 スポーツ施設 13% なぜ多いのでしょうか。
 道路 11%
 公共施設 9%

日本救急医療財団ではAEDマップを公開していますので、
自宅、職場、よく行く場所の近くのAEDの確認をすることが
勧められています。

5.病気による突然死
(1)急性心筋梗塞
冠動脈が血の塊(血栓)で詰まって、血流が止まり、
心筋の一部が壊死するものです。
発症から2時間以内に治療が完了すれば助かる可能性が高まります。
通常は「病院に到着する前に亡くなる」のです。

したがって、以下のような初期症状に気づいたら
直ちに医院に行くか救急車を呼ぶのがお勧めです。
1)胸の真ん中に突然生じて持続する強い痛み
2)胸が締め付けられるような重苦しさ・圧迫感
 (胸の上に象が乗っているような感じ)
3)胸やけ(胸が焼き付くような感じ)

(2)脳卒中 これは心臓突然死ではありませんが。
(2.1)脳梗塞
脳の動脈が詰まって神経細胞が壊死するのですが、
発症後4時間半以内に血栓を溶かす薬を注射すれば、
3分の1の患者は後遺症を軽減できます。

こういう前兆に気をつけましょう。
1)手足の片方だけに麻痺、痺れ、脱力感
2)顔面の歪み
3)言語障害(ろれつが回らない)

(2.2)脳出血
脳の細かい動脈が破れて出血する病気です。
主に高血圧の人が罹りますが、
降圧剤による治療が普及して以来患者は減少しています。

(2.3)くも膜下出血
脳の表面にある動脈瘤が破裂し出血した血液が
脳の表面に広がる病気です。
以下のような典型的症状(前兆)が起きたら
直ちに救急車です。

1)生まれて初めて経験するような激しい頭痛
2)意識消失
3)悪心・嘔吐
4)めまい
5)視力障碍

6.事故による突然死 これも心臓突然死以外
1)食べ物の誤嚥
なんとこの死者数(2014年4900件)は
交通事故死者数(4100件)を上回っています。
発生したら、まずは背中の真ん中を強く叩きます。

2)浴槽内での溺死
この死者数(2014年5300件)も
交通事故死者数(4100件)を上回っています。

入浴の際の心停止の理由は以下のとおりです。
1)温まりすぎて熱中症になり失神
2)血管が拡張して血圧が下がり過ぎ失神
3)熱い風呂に入った瞬間、血圧が上がって脳卒中を来す
4)不整脈が生じる

対策は以下ですが、今やかなり実践されていますね。
1)冬場は浴室や脱衣所。廊下を温めておく
2)飲酒後や眠気を催す薬の服用後の入浴を避ける
3)長時間の入浴や熱いお湯を避ける
4)肩までつからず、半身浴にする
5)こまめに水分をとる
6)家族が様子をみる

7.スポーツ中の突然死
マラソン、ジョギング、自転車等、心拍数が上がり
心臓に負荷のかかるスポーツで心停止が起きています。

一般人はムリをしないで、
ゆっくり「有酸素運動」をすることです。

高齢者ではゴルフやゲートボールの最中に起きています。
ゴルフでは朝のティーショット後に集中しています。
緊張して血圧が上がるのです。

因みに、
東京マラソンでは第1回(2007年)から第8回(2014年)までに
7人(松村邦洋さんを含む)のランナーが
心停止を起こしていますが、
全員AEDにより救命されています。
AEDさまさまです。

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