2020年7月2日木曜日

「新エクセレントカンパニー」日本の生きる道はこれだ!!

【このテーマの目的・ねらい】
目的:
 これからのビジネスは「人がいちばん」の領域が
 より重要になる、という主張を知っていただきます。
ねらい:
 そのつもりで、ビジネスを考えましょう。
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本書は1982年に「エクセレント・カンパニー」として刊行された
トム・ピーターズの40年間の蓄積を踏まえた続編です。
当時は、効率第1主義の米国型経営に対する警鐘として、
世界中に反響を巻き起こしたそうです。
その時は、日本経済も上り調子でしたから、
人を大事にする経営のモデルとして「日本に見習え」という
風潮もあったようです。
その頃、私は自己流中心型で勉強しませんでしたので、
その名著を知りませんでした。


40年間の蓄積だけあって、その主張は多岐に亘っているのですが、
「人がいちばん大事」
「理屈ではなく実践だ」
「現場から変化が生まれる」などが主張の根幹です。


エクセレント・カンパニーの単純な定義は見当たりませんが、
働く人が「お客様が感心するサービスを提供できる」会社が生き延びる。
それがエクセレント・カンパニーである、ということのようです。

本書の章立てはこうなっています。
1 とにもかくにもまず実践
2 エクセレントはいまから5分間のこと
3 組織文化は不可欠
4 中小企業という開拓者
5 何度でも言う──人がいちばん大事
6 トレーニングの鬼 (トレーニングでエクセレントになれ!)
7 テクノロジーの津波、ホワイトカラー存亡の危機、
  新しい道徳的責務
8 不安定な世界で雇用を安定させる
9 「数打ちゃ当たる」法則と「失敗は成功のもと」法則
10 付き合う相手が私たちをつくる
11 デザインへの情熱──もっとも重要な差別化因子
12 TGR(良質指標)に徹底的にこだわれ
   ──付加価値アップのためのさらなる八つの戦略
13 エクセレントなリーダーは聴き上手
14 最前線にいるエクセレントなリーダーは
  もっとも過小評価されている資産だ
15 エクセレントなリーダーへと駆り立てる26の戦術
   (効果は保証付き) 以下太字は私のお勧め。
  MBWA(歩き回るマネジメント
  50%の法則(半分はスケジュールを埋めるな)
  あなたはあなた自身のスケジュール帳だ
  エクセレント な リーダーシップ を 発揮 する重要 な 場
                           として の 会議
  重要なことは一度に一つずつ
  80%の時間を仲間に向ける
  熱意を伝染させる
  ボディランゲージ5倍の法則
  リーダーであることを愛する
  毎日がスタートだ
  リーダシップを発揮するチャンスは1日10回ある
  リーダーの仕事は人間関係
  承認欲求を満たすことは大事
  ありがとうと感謝する 
  礼節―礼儀、気配り
  リーダーの生活の糧は手助け
  読書せよ
  待て(もある)
  効果的なセルフマネジメント
  リーダーの判断に注意(認知バイアス) 
  女性重視
  コミュニケーションの失敗は100%あなたのせい
  謝罪は報われる
  メールの返信あせるな


というような盛りだくさんのご託宣がいっぱいなのですが、
私はこういうことを受けとめました。


これからデジタル化が進んでも、
人間が能力を発揮できる領域は残る、
サービス度の高い社会に変わっていくチャンスがある、
ということです。


本書の中に以下のような
「エクセレント」な事例が紹介されていました。
そういう心のこもったサービスを多くの人は期待しているのだ、
ということです。
「なるほどそうか!」と思い至りました。

ヒル は、 「コマースメトロ」 を 開店 し、次のように語った。
「 お客様には ぜひ支店に足を運んでほしいですね。
支店では、魂のこもった業務を行ない、
間味の ない 口座番号を
深いつながりを感じさせる 家族に変えることができますから」
ヒルの計画は、華やかで活力に満ち た、ワクワクする〝 ストア〟
(支店を指すコマースメトロ用語)をつくることだった。

賃金をはずみ、とことん訓練した熱意のある従業員を
たっぷりストアに配置して真のサービスを提供し、
顧客を〝 ファン〟( これもヒルのお気に入りの用語)に変える。

長い営業時間もコマース-メトロ で体験できるサービスの特徴 だ。
それらの支店は前例のない週七日営業に踏みきった
( しかも、金曜の夜は 夜中まで開い て いる)。

また、非常に複雑な商取引も
あっというまに済ませることができるし、
どれほど むずかしい 問題でも、
文字どおり、ぜったいに「 ノー」と言うなと教わった窓口のスタッフが
独自の方法で解決しようとしてくれる。

 コンピューター の不具合が生じ た とき、ある従業員は、
 顧客が必要としていた期間限定の割引航空券を手にいれるために、
 自分の個人クレジットカードで
 顧客の航空機 の チケット代を仮払いした。
 彼女の機転を きかせた行動 は、 顧客の驚きと畏怖の念だけで なく、
 銀行の上層部からの称賛も引きだし た。
 
 さらに、この銀行は
 つねに「ドッグ・フレンドリー」な銀行であると宣伝してい た。
 いたるところでみられるマスコットのダッフィー
 ( 英国生まれの〝 サー・ダッフィールド〟)はあらゆる宣伝に登場する。
 この銀行に行くと、 出るときには、
 銀行のロゴがつい たイヌ 用の真っ赤なボウル と、
 フンを掃除するときの スコップ( こちらも ロゴ 入り)、
 そしてもちろん イヌ用のビスケットを手にしているだろう
 ( ロンドンで私がそうだったよう に)。
 ビスケットの景品 は、
 数年まえの年次報告では総計200 万個になってい た。

 2007年、 ヒル は 「コマースメトロ」 を
 トロント・ドミニオン銀行 に86億ドルで売却した。
 これこそ、普通とは逆に向かった
 ファン 創出アプローチの効果を実証しているではないか。
(その後、すぐにイギリスで同じようなビジネスを
さらに大規模に展開し成功させました)

デジタル化/AI化で人間は仕事を奪われると心配されています。
極端な説では、半分の人の仕事がなくなる、としています。
この事例は、そのアンチテーゼです。

デジタル化/AI化で,ITやロボットができる仕事を、
私流で整理するとこうなります。

デジタル化/AI化で対応できる「人の価値目標」



人の価値目標体系

デジタル化/AI化

の対応可否

説明

1.五感の満足


支援可能(主体は人)

2.生活の充実


支援可能(主体は人)

3.肉体的負担の軽減


得意とする領域

4.精神的負担の軽減

△→○

部分的に支援可能

5.時間的負担の軽減


得意とする領域

6.金銭的負担の軽減


得意とする領域

7.楽しさの実現


楽しさの内容により

AIが有効である。

8.社会的欲求の実現


AIは人間ではない。

9.承認欲求の実現


AIに認めてもらっても嬉しくない。

10.自己実現欲求の実現


自己実現を助けてくれることがある。


肉体的・時間的・金銭的、そして一部精神的負担を
軽減してくれることは、デジタル/AIが得意です。

楽しくない仕事は、頭を使わない仕事、くり返し作業です。
人間にとっては苦痛(負担)です。

苦痛の対価として給与を受け取っている、と働く人は考えています。
これはAIが代替することが可能です。
人間にとって苦痛である仕事をAIが代わってくれるのは良いことです。

頭を使う仕事は、
楽しいかどうかはともかく少なくとも苦痛ではないはずです。

これから時間給ではなく、成果給に変わっていきます。
成果給は働く者にとってやり甲斐が生まれます。

以下は米国で1978年に刊行されました
ラッセル.L.エイコフ教授の「問題解決のアート」
に掲載されている事例です。
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 小型精密部品を製造しているある会社は、
完成品の検査員として数多くの女性を雇っていた。
これらの女性は、
彼女達の出来高とは無関係に一定の日給を支払われていた。
彼女達の生産性はかなり低下し、同時に、
まちがって合格としたり不良品としたりした品物の数も
増加しつつあった。

生産性を増加させることとミスを減らすことを期待して、
この工場の経営者は、
もし彼女達の出来高が以前に達成していた水準までもどったならば、
以前よりも、かなり多くの賃金を稼ぐことができる
歩合制の報酬制度を提案した。

ただし、この制度では、
もし彼女達がこの時点での水準を維持したとすると、
彼女達の稼ぎは減ることになるという制度であった。
女性達は、この提案を即座に拒絶した。
 その工場経営者は、
 この返答に驚いたがそれ以外の策を思いつかなかった。
 彼はたまたまこの工場で、
 この問題とは無関係の別の問題の研究にとり組んでいた
 外部の研究グループに助けを求めた。
 
 研究者達は、女性達のほとんどが結婚しており、
 彼女達の夫は仕事を持っていて、
 家族が生活するには困らない額のお金を稼いでいる
 ことを知った。

 女性達は、
 欲しいけれども実際になければ困るというほどでない
 商品やサービスを買うために
 必要なお金を稼ぐために働いていたのだった。
 これらの女性は彼女達の夫と同じくらい稼ぐと、
 夫の持っている一家の大黒柱としての自尊心を
 脅かすことになるであろう と信じていたので、
 夫と同じほどは稼ぎたいとは望まなかった
(これは、ウーマンリブ運動が行われる前の話である)。
 このように、
 彼女達はこれまで稼いでいた額よりも多くを稼ぐことは
 決して望んでいなかったのである。



その上、のんびりしたペースで神経をとがらせずに働くことで、
退屈で単調な仕事にある種のくつろぎを得つつ、
仕事をしながら同僚とおしゃべりすることができたのであった。


さらに重要なことは、
女性達の″ほとんどが就学児童を持っており、
子供達が学校から帰宅したときに家で迎えてやれない
ことに対して非常に罪悪感を持っているということを、
研究者達は発見した。

子供達は
自分で自分の身の回りのことをしなければならないので、
このことが母親達の心配の種であった。
そうでなければ、誰か他人に世話をしてもらうかだった。
このことはまた、人に子供達の世話を押しつけているという
気持の負担を母親達に感じさせていた。

どちらにしても、女性達は
このような不愉快で罪悪感を起こさせる状況を生みだした原因は
会社にあると思い込んでいた。
  研究者達がこのことを知ったとき、
  彼らはひとつの新しい奨励システムを設計した。
  ある“正当な1日の仕事量"――正しく検査された品物の数――
  が具体的に決められた。


 それは検査員の女性達が
 以前に達成していた出来高の最高水準に置かれた。
 そのかわり女性達には、
 決められた出来高に達したときには
 いつでも仕事を終えて家へ帰ることが許され、
 また、それ以上は、彼女達が働きたいと望む時間まで、
 必要生産高に余裕のある限り、
 出来高払いで仕事を続けることができるようにした。


 女性達は、この提案を熱烈に受け入れた。
 彼女達の検査の速さは2倍以上になり、
 子供達が学校から帰ってくるのを迎えるのに
 十分間に合う時間に工場を退社した。
 ミスは減り、満足感は増えた。
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検査員の女性たちが望んでいたのは、給与の高さではなく
時間だったのです。


成果給制度は、このように目標の成果を達成すれば時間は自由だ
ということです。
それだったら、仕事をする人は一所懸命頭を使い工夫して
生産性を高めるでしょう。
本人も充実するし、会社にとってもいいことなのです。

さらに、人々が苦痛になる仕事をやめて、
人に満足・喜びを与えられるような仕事に従事するようにすれば、

今までよりも、人間の満足度が高い社会になります。

満足のいくサービスにはお客様は対価を払います。

人間でなくてはできない仕事、人間がすると喜ばれる仕事が
いくらでもあるのです。

前掲のコマースメトロバンクの例はその典型です。
そういう成功例がどんどん出てくれればいいのです。


今のIT企業の対応は人に不親切で、イライラさせます。
なかなか電話対応をしてくれないのです。
FAQとか称して、「まずそれを見てください」となっていますが、
どれを見たらよいかよく分かりません。
「クソ―」と思います。

私の友人H氏は、私の新著Kindle書籍を購入しようとしました。
しかしどうしても購入にたどりつけないのです。
ギブアップしてしまいました。
私もその著書作成段階で多くの疑問点があり、
それの答えが分かるまでにたいへんな苦労をしました。
途中で「チャット」があることが分かり、ずい分楽になりました。
「チャット」は人間が対応してくれるのです。


今のIT企業、特に米系企業は、
お客様対応をコストだと考えて、効率化を優先しています。

しかし、見ていただいた「コマースメトロ」では、
違う考え方をしています。
「お客様対応はコストではない!!
お客様に対する提供価値そのものである。
効率化をやめ、高いサービスを売りにする、
その対価を認めてもらう。
丁寧に人間が対応するようにすればよいのだ」
ということで、お客様対応に人を投入するのです。
そうすれば、お客様はそちらになびきますね!!


だから、これからのビジネスは、デジタルが担当する領域と
人間が対応する温かみのある領域に2極化していくでしょう。
デジタルが一方的にビジネスを支配するのではありません。


今の状況では日本企業は、
デジタル技術でビジネスを変革していく領域は
米国、そしてひょっとして中国のIT企業にかないません。
しかし、人と温かく接することについては、
「おもてなし」とか「思いやり」の文化を持つ日本が得意のはずで、
これを突き詰めることで、
そういうビジネスで世界に勝てるのではないでしょうか。



しかし、教育・指導をしても、
どうしてもそういう仕事に従事できない人は、
BI(ベーシックインカム)で生活していただくしかないでしょう。
その負担は社会的にみてどこかでできるはずで、
それを決めるのは政治です。


話があちこち飛んで申し訳ありませんでしたが、
そのくらいこれからの社会の行く末は混とんとしているのです。
(言い訳、ごめんなさい)

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