2020年7月30日木曜日

「自分の心、相手の心、仲間の心」をたいせつにする社会へ!!

[このテーマの目的・ねらい]
目的: 
 これからの社会はどうなっていくのかを考えます。
 その社会を「心たいせつ」の社会ととらえます。
 それを「自分の心、相手の心、仲間の心をたいせつにする」
  でとらえることを理解していただきます。
 その中で、日本はどう生きるべきかを考えます。
ねらい:
 皆様でもっともっと考え、実現いたしましょう。
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これから急変していく社会の動向論のいくつかを目にして、
コロナ後の日本はどうなるのか、どうあるべきかを考えました。

目下の私の結論はこうなりました。
「心たいせつ」の社会が来ます。
それは「自分の心、相手の心、仲間の心をたいせつにする」社会です。
これからの日本は、IT・デジタル化で勝負するのではなく、
「心たいせつ」社会の先導役を目指す方がよい。

「心たいせつ」の思考では、人間を物理的客体としてみるのではなく、
心を持つ主体とみます。その心をたいせつにするのです。

「心たいせつ」とは以下のことを指します。
1)個人としては、自分の心をたいせつにする。
2)人に対しては、相手の心をたいせつにする。
3)組織では、仲間の心をたいせつにする。

以下に解説をいたします。

1.自分の心をたいせつにする
これには2面があります。

その第1面はこうです。
社会のIT・デジタル化によって、
ある面で便利で効率的な生活ができるようになります。

効率的な生活によって肉体的負担が減る分、
精神的活動のウェートが高まります。
結果として、人間本来の特質である
精神・心の満足をより強く求めるようになるのです。

今回のコロナによる自粛活動で、
人との交流ができずにストレスがたまりました。
あらためて、人との交流の価値を再認識したと思われます。
必ずしも学校が好きではない小学生も、
学校が再開して友達に会えると、大喜びをしていました。

効率化社会の欠点を、コロナ騒動は早送りで示してくれたのです。
今後、多くの人は、
コロナ以前よりも人との交流を求めるようになると思われます。

組織や地域のサークル的活動、趣味・娯楽などの会、
ボランティア活動などが、これまで以上に活発になるでしょう。

「自分の心をたいせつにする」の第1面は、
人との交流の中で生きていくのがあるべき姿である
ことを自覚し行動することです。

もう一面は、
情報過多の社会で情報に振り回されやすい状況なのですが、
自分を見失わずに、自分の求めることを求めよう、
ということです。

情報がどんどん流れてくるからといって、
それを受け身の姿勢で受けとめてしまうのでなく、
自分の判断で取捨選択します。
「あなたにお勧めです」とか言って画面に表示される広告だって
うかつに乗ってはいけません。
それは必ずしもあなたのニーズではないのです。

しかし、我がままであれということではありません。
あくまで「自分をたいせつに」の範囲で考えます。
それには、自分の特性はどうなのだろうと見極めることも必要です。

「己を知る」性格診断なども有効です。
簡単な性格診断としては、「類人猿診断」があります。
類人猿診断の紹介サイト http://yakan-hiko.com/gather/

当社で提供している「CAT(コンピテンス診断ツール)」も
将来に向けて自分の適性・適職を判定するのに有効です。
「CATのご案内」 
http://www.newspt.co.jp/data/menu/11CAT.pdf

2.相手の心をたいせつにする
急速に進展したIT化の波に十分乗れない人が大勢います。
あるいは、企業の業務効率化のせいで丁寧な支援が受けられないで
取り残されている人もいます。
ATMだって、きちんと使えない人がいるでしょう。

そういう隙をついて成功したビジネスの例が、
トム・ピーターズ著「新エクセレント・カンパニー」に載っていました。
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徹底してお客様のために行動するサービスの成功例
――銀行の窓口を効率化の対象にするのではなく、
お客様へ行き届いたサービスをする前線にしました――

ヒルは、「コマースメトロ」を開店し、次のように語った。
「お客様には ぜひ支店に足を運んでほしいですね。
支店では、魂のこもった業務を行ない、
人間味のない口座番号を深いつながりを感じさせる家族に変えることが
できますから」

ヒルの計画は、華やかで活力に満ちた、ワクワクする〝 ストア〟
(支店を指す コマースメトロ用語)をつくることだった。

賃金をはずみ、
とことん訓練した熱意のある従業員をたっぷりストアに配置して
真のサービスを提供し顧客を〝 ファン〟 
これもヒルのお気に入りの用語)に変える。
長い営業時間もコマース-メトロで体験できるサービスの特徴だ。

それらの支店は前例のない週七日営業に踏みきった
(しかも、金曜の夜は 夜中まで開いている)。

また、非常に複雑な商取引もあっというまに済ませることができるし、
どれほど むずかしい問題でも、文字どおり、
ぜったいに「ノー」 と言うなと教わった窓口のスタッフが
独自の方法で解決しようとしてくれる。

コンピューター の不具合が生じたとき、
る従業員は、 
顧客が必要としていた期間限定の割引航空券を手にいれるために、
分の個人クレジットカードで顧客の航空機 のチケット代を仮払いした。

彼女の機転をきかせた行動は、 顧客の驚きと畏怖の念だけでなく、
銀行の上層部からの称賛も引きだした。
 
さらに、
この銀行はつねに「ドッグ・フレンドリ」な銀行であると宣伝していた。
いたるところでみられるマスコットのダッフィー
( 英国生まれの〝 サー・ダッフィールド〟)はあらゆる宣伝に登場する。

この銀行に行くと、出るときには、
銀行のロゴがついたイヌ用の真っ赤なボウルと、
フンを掃除するときのスコップ(こちらもロゴ入り)、 
そしてもちろん イヌ用のビスケットを手にしているだろう
(ロンドンで私がそうだったよう に)。
ビスケットの景品は、
数年まえの年次報告では 総計200万個になっていた。

2007年、 ヒルは「コマースメトロ」を
トロント・ドミニオン銀行に86億ドルで売却した。
これこそ、普通とは逆に向かったファン創出アプローチの効果を
実証しているではないか。
(その後、すぐにイギリスで同じようなビジネスを
さらに大規模に展開し成功させました)
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その延長で私が考えたのは「スーパー・コールセンター」です。

IT化の進展で利用できるサービスが複雑化しています。
多くの人は、良さそうだなと思っても簡単に近寄れません。

便利なツール類の使い方も、
自分が知りたいことに到達するのに大変な手間がかかり
結局よく分からないということが起きます。

隣に精通者がいれば、「これどうしたらいいの?」
と聞けば1分で解決できることなのです。
こんな腹立ち、イライラを感じている人は多いと思います。

私は、今回自分用のPCを買い換えたのですが、
メールデータの変換を始めとして
利用しているソフトやサービスの数種類を移すのに手こずりました。

電話対応だというので喜んで電話すると、
自動案内が「〇〇の方は1番、△△の方は2番を押してください」
とかを何回か繰り返して
結局こちらの知りたいことに到達しないということもありました。
「コンチキキショー!!」と思いました。

問い合わせ窓口の業務は、
多くの企業で「できれば問い合わせはないのがよい」
という発想で効率化の対象でした
(私もその改善に加担してきました)。

昔から会社内のシステム問い合わせに対して、
FAQ(よくある質問の回答)」をユーザに公開して
自分で調べてもらおうとしてきました。

今や、製品やサービスの品質で競争していますが、
どこも大同小異です。
では何で差異化するかと言えば、
お客様への丁寧な対応ではないでしょうか。

「何でもお気軽にお電話ください」という会社があれば、
マニアックな人以外はそこを選ぶのではないでしょうか。
その発想で考えたのが「スーパー・コールセンター」です。
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スーパー・コールセンターとは
以下は主として社内に設置するコールセンターを前提に記述しますが、
自社の製品・サービスのお客様用でも同じことです。

問い合わせ対応のこれからの改善目標は、
これまで考えられてきた「効率化」ではありません。
質の向上、「サービス向上」です。

利用者は、電話ならすぐ済むことが、
FAQなどで調べていたら時間がかかるし
結局分からないことも残ります。
今のFAQ方式に不満を持っている人は非常に多いと思われます。

IT関係はどんどん複雑化・多様化します。
何でも捌いてくれる窓口があったらたいへん嬉しいことです。

スーパー・コールセンターではどんな質問でも受けます。
社内システムのことだけでなく、
流通しているオフィスツール類についての質問も受けます。

QAデータベースを作り、自動メンテします。
ときどき管理者が整理します。
これは主としてコールセンター要員が使用します。
慣れている要員であれば,QAデータベースの利用も容易です。

即答できないものは「折り返し回答」にします。
たとえば、保守担当やインフラ担当でないと分からないものは、
担当に聞いて理解して自分で回答します。
オフィスツールに関する質問でも調べて回答します。
細かい複雑な質問の場合だけ、「有識者」に回答依頼します。

このような「原則自ら回答」方式により、
コールセンター要員の能力向上になります。
(コールセンター要員の成果把握システムも必要です)。

コールセンター要員は女性でなくても、
「的確な対応をしてくれるなら男性でもよい」のです。

このようなコールセンターによって、実現するのは、
問い合わせ対応業務の効率化ではなく、
ユーザの仕事の効率化です。
価値あるユーザ業務の効率化の効果は非常に大きいと思われます。

それを評価される意思決定者のところでこの方式を実現します。

社内用の場合、
このコールセンターは自営するか、アウトソーシングか?ですが、
会社・システム部門の状況・考えによりますが、
即自営切り替えは困難でしょう。 

ウイルスバスターを提供しているトレンドマイクロ社は、
他社の製品・サービスに関する問い合わせも受ける
電話窓口を設置しています。

まさに、スーパーコールセンターなのですが、
やはり限界があり、
「それはマイクロソフトの○○に問い合わせてください」
とかになります。
それでも、その問い合わせ窓口が分かるだけでも助かります。

とにかく、
「何が本当に相手(お客様)のためになるか」
を第一に考えることが肝要です。
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これができるにはそれなりの知能と心遣いが必要で、
日本人の特性に合致していると思われます。
効率化で削減される人材の受入れ場になるという面もあります。

3.仲間の心をたいせつにする
取り組む人たちの心の和(共感)が、
物事の成功にとって重要であることを
野中郁次郎先生は最近の著書「共感経営」で主張しておられます。
共感は「人、モノ、金、情報、知識」に次いで6番目の経営資源である
とされています。

当書では、必ずしも暖かくない組織の中で、チームが一丸となって
難題を解決した成功例が9つも紹介されています。
 日産ノートe-POWER
 よみうりランド グッジョバ
 NTTドコモ アグリガール、など。

上野則男のブログ 野中郁次郎先生著「共感経営」をご参照ください。
http://uenorio.blogspot.com/2020/07/blog-post_26.html

4.日本はどうする?
以上の「心たいせつ」の社会では、日本はどうすればよいのでしょうか。

効率性を追求するビジネスは米国大手IT企業と中国企業が先行し、
他国は追随しかできません。
日本もITの先進国として発展するのはムリでしょう。

それに対して、「心たいせつ」社会では「ココロ」を大事にするのです。
この領域は、「おもてなし」で有名になったように、
おそらく世界で日本が一番得意とするところのはずです。

1)前掲のスーパー・コールセンターもビジネスになりそうです。
言葉のハンデがあるかもしれません。

2)おもてなしの心を大事にする観光立国
以前から言われていることです。
アクセンチュア社長の書かれた「2030年日本の針路」でも
強調されています。
(上野則男のブログ「2030年日本の針路」
http://uenorio.blogspot.com/2020/07/blog-post_25.html

これからの観光は、単に受け身で楽しむだけでなく、
伝統工芸とかを体験できる参加型が本命でしょうね。

3)もっと世界に先駆けることのできるビジネスがあります。
それは、高齢者の強化を支援するビジネスです。
高齢者の介護ではなく、
高齢者にもっと強く健康になっていただくことによって、
本人も幸せな生活が送ることができ、
医療費の削減にもなるのです。

それには、
高齢者にとって嬉しいことを実現すればよいのです。
基本的には人との交流ができる場を提供します。
今、高齢者が医院でたむろしているのは
他に行く良い場所がないからです。

高齢者のスポーツ・趣味のサークル活動を専門にする、
今のフィットネスクラブのような施設もいいでしょう。
ゲートボール場も増やします。

公園を高齢者向きにするのも良い案です。
集まっておしゃべりがしやすいような作りにします。
遊具なども年寄り向きにします。
今でも一部そうなっています。

「何をすれば高齢者は嬉しいか」
を高齢者の立場でトコトン考えて実現することです。
当初は国の補助も必要でしょう。

高齢者専用のお見合いセンターもいいのではないでしょうか。
現在ある高齢者用「婚活」SNSは、
抵抗がある人が多いと思われます。

その気になれば、もっといろいろ考えられるでしょう。

4)高齢者介護のビジネスも、工夫によって
よりよいビジネスモデルができるのではないでしょうか。

5)製造業は、
細かい工夫改良型高品質製品が日本の土俵でしょう。
製造自体は3D・IoTですぐできるようになるでしょうから、
発想が勝負です。その際「心たいせつ」の精神が生きるのです。

考える前提を「心たいせつ」の精神とすると、
たくさんのことを思いつきそうです。
皆様もどうぞお考えください。

というようなことを考え始めました。
とにかく「心たいせつ」ですね。

8月1日 追記
当初は、「たいせつ」を「大切」と漢字表記していました。
タイセツに特別なニュアンスを表せるようにひらがな表記にしました。

また、「心たいせつ」も当初は「心重視」でした。
思い表現ですので、それをやめて「心たいせつ」にしました。

4 件のコメント:

杉本 さんのコメント...

情報に振りまわされ自分を失っていることよくあります。
大切なこと、重要なこと、あまり考えずに使い分けていいますが、「心たいせつ」は響きがとても良い!ありがとうございます。

上野 則男 さんのコメント...

HH先輩からのコメントです。

 「心のこと」-自分の心、相手の心、仲間の心。ご尤もです。
 わが国には古来、“近江商人の「三方良し」”の職業倫理があります。
 自分良し、相手良し、世間良し、です。
 今回の貴兄の “三方の心”は
 商業道徳よりもっと次元の高い“心”の問題なので、
 商取引以上の値打ちがありますね。
 
 尤も、仏教では “自利、利他”の教えがあります。
 われわれロータリアンは“ロータリーの基本は職業倫理にある、”と思っています。
 その基本は“He profits most who serves best”としています。
  (1910年、アーサー・シェルドン)

上野 則男 さんのコメント...

HH先輩

たいへん博識なコメントありがとうございます。
「三方良し」はそうでしたね。
「心たいせつ」を考えたときにはそのことは忘れていました。
「世間」が「仲間」に変わっています。
「自分良し、相手良し」と「自分の心、相手の心」はほぼ同じですが、
「世間良し」はどちらかと言えば、多くの人に役立とうというニュアンスかと思いますが、
「仲間の心」は、仲間で心を一つにしようということなので、少し視点が違いますね。
「自利、利他」も同じことでした。

自利・利他は、不変の真理なのですね。
ありがとうございました。

上野 則男 さんのコメント...

どこの杉本さんか存じあげませんが、
「心たいせつ」をお褒めいただき、たいへん嬉しいです。
皆さんからの反応があまりないので寂しく思っていました。