2020年1月20日月曜日

「amazon『帝国』との共存」 残された道は進化か死か。

【このテーマの目的・ねらい】
目的:
 アマゾンの強みと脅威を再確認します。
 小売業の将来を考えていただきます。 
ねらい:
 強くなりすぎたアマゾンにはどうやって対抗したらよいのでしょう。
 (イオンの社長が3月1日、23年ぶりに交代します。
 新社長はデジタルに強い方のようですので期待いたしましょう)
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これは、米国の小売業界のアナリスト・コンサルタントである
ナタリー・バーグ氏とミヤ・ナイツ氏の著書名で(2019年刊)、
(日本)マイクロソフト社の社長をされた成毛眞氏が監訳をされています。


アマゾン脅威論を伝えるレポートの一つです。


当ブログでは、「『アマゾン・エフェクト』とは何?」(2019,11,7)
http://uenorio.blogspot.com/2019/11/blog-post.html
に続く第2弾です。


本書は米国を中心にした小売業界に精通した両人らしく、
多岐にわたる詳細な実態の分析がされています。


総ページ数は約450の大著で目次はこうなっています。
第1章 アマゾンの世界
第2章 なぜアマゾンは別格なのか
     (アマゾンの価値観ー真の顧客第1主義、大胆なイノベーション、
     アマゾンの3本柱ーマーケットプレース、プライム,AWS)
第3章 アマゾンの最高傑作プライムの脅威
     (優先配送だけでなく、多くの特典が与えられる)


第4章 小売りはアマゾンによって駆逐されるのか?
     (ショッピングモール、スーパーストア、デパートは厳しい)
第5章 EC専業企業の生き残りへの道
     (専業ではムリ、実店舗との融合が必要)
第6章 いまだ果たされない生鮮食品への野望
     (生鮮食品が消費者と最も密な接点を実現する)


第7章 ホールフーズ買収によるリアル店舗新時代へ
第8章 圧倒的に有利なプライベートブランドの破壊力
             (ファッションの世界にも進出している)
第9章 テクノロジーが変える私たちの消費行動
第10章 AIと音声が見せる小売りの新たなフロンティア


第11章 未来のストアのデジタルとフィジカル
     (オンラインとオフライン(実店舗)との連携が成長のカギ)
第12章 「経験」を売る未来のストアが生き残る
     (食事、仕事、娯楽、発見・学習、借用の場)
第13章 ラストワンマイルで顧客を勝ち獲る闘い
     (クリックアンドコレクト、アマゾンペイ、レジレス)


第14章 ラストワンマイルを支えるインフラストラクチャー
     (物流、宅配、実店舗,ITインフラ)
第15章 アマゾンはピークを迎えたか
     (「対抗できる企業はアジアを拠点にした企業である」
      成長阻害要因は、消費者感情、独占禁止法、であり
      競合ではない)


全体的に事実のトピックス的な紹介が多く、
なぜアマゾンが強いのかの分析を切り口にしていない、
特にAI面の解説が弱いのが残念でした。
著者のバックグラウンドからするとやむをえないのでしょう。
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私は、アマゾンが強い原因はこうである、と判断しています。
1.優秀な人材が多数いる。
  高給が支給されるアマゾンの社員は全世界で75万人もいるのです。


2.その人たちが「顧客」の視点でどうあればよいかを必死で考えている。
  必死で考えれば知恵は出るものです。
  日本電産の永守会長のような方が多数いれば強大です。
  新しい道が見えてきます。


3.失敗を恐れずイノベーションにチャレンジする。
  その余裕があるので新分野に進出できます。
  追い詰められた企業にはその余裕がありません。


4.優れたIT/AI技術者が多数いる。
  世界で有数のIT企業です。
  ニーズを具現化できる自力を持っています。
  従来型小売企業はかないません。
  資金があればですが、
  M&Aで技術者を確保しなければなりません。


私は、アマゾンの「顧客第1主義」に異論があります。
顧客のことを第1に考えるということであれば、
クレームや質問を受ける電話窓口を設けるべきだと思います。


最近こういうことがありました。
プリンターインクはいつもアマゾンから購入しているのですが、
在庫を見てblack単体で頼んだり、
color/blackセットで頼んだりします。


blackがなくなったのでセットの箱を開けると、
その中はcolor2本なのです。
「えーーーっつ」印刷ができないとお客様への提案もできません。
「なんでこういうことになっているのだ!!」とクレームしようとしましたが、
そんな窓口はありません。


ひょっとすると、セットの中のcolor2本というのは
私の何らかの勘違いかもしれません。
そういうことは電話でやり取りすれば分かってくるでしょう。


仕方がないので、しぶしぶ返品の手続きと再注文をしました。
他でも入手できるのならもうアマゾンには頼みません。
なんとか、次善の策で切り抜けましたが腹の虫は収まりません。


質問に対しても「Q&Aを見てください」となっています。
これも顧客第1主義ではないですね。効率第1主義です。
中国のあるECサイトは丁寧に電話応対することで伸びている
という記事を見ましたが、まさにそうだと思います。


なぜそういう対応をしないのでしょうか。
そのためにコールセンターの体制が必要になると思いますが、
顧客第1を標榜するならその負担をすべきです。
その中国のECサイトが日本に進出してきたら
消費者にとって有意義な戦いになると思います。
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第2章に「今後の予測」という項目があり、これが、
本書の要約のようなものですので掲載させていただきます。


本書の冒頭で触れたように、競合に大きく差をつけたアマゾンの勝因は
テクノロジー企業としてのルーツと創造への情熱にある。


事実、アマゾンがこれまで行ってきたイノベーションの多くは、
それがそもそもイノベーションであったことすら忘れてしまうほど、
現在の日常に溶け込んでいる。


1990年代を振り返れば、
オンラインショッピングのいやに面倒なプロセスが脳裏に蘇る。
その煩わしさを解消したのが、アマゾンの1クリック注文であり(特許取得)、
ユーザーに合ったおすすめ商品の表示や、
ユーザーによる評価とレビューの導入だった。


配送もはじめからスピーディではなかったし、無料でもなかった。
プライムの配送サービスが顧客の期待を集めると、
競合各社もフルフィルメントに投資さざるを得なくなった。


2011年にはオンラインにおける最大の障壁の1つだった
「配達時不在」の問題を解消すべく、アマゾン・ロッカーのサービスを開始。
今では、欧米の大手小売業のほとんどが、クリックアンドコレクト
(通信販売で購入した商品を自宅以外で受け取るサービス)
を提供している。


キンドルが登場するまで、電子書籍はSFの世界のものだった。
カテゴリー増加の裏で売上は減少傾向にあるが
(デジタル疲れが原因とみられる)、
1台に何百冊もの書籍を保存できる便利さは、
当時としては非常に画期的だった。


 「私たちは確かに小売業者だが、本質はテクノロジー企業である。
 ジェフは本屋を開きたくてアマゾンを立ち上げたのではなかったのだ。
 (ワーナー・ヴォルゲス アマゾンCTO)」


アマゾンは究極の創造的破壊者だ。
ここまでいくつか例を挙げてきたが、
それらは買い物形態と消費行動に革命を起こした
ほんの一例にすぎない。


ライバルたちは、アマゾンのイノベーションが巻き上げる後塵を拝すばかりで、
イニシャチブを取るどころか、目の前で起こる変化に反応するのが精一杯だ。


しかし、唯一その恩恵を享受する者がいる。消費者だ。
アマゾンのイノベーションの嵐が顧客の期待を大いにかき立て、
それが技術向上への努力へと競合をいざなう。
そしてすべてが最終的に、より良質な顧客体験として実を結ぶのだ。
今日の小売業界では、現状にあぐらをかくことなど許されない。
 
 「今日のデジタル変革は、
 ビクトリア時代に鉄道が登場したときと似ている。
 そのスピードはとても比べものにならないが。
 ダグ・ガー アマゾンUK事業責任者」


変革の波間に浮上するのが、誰が業界で生き残り、
次の変革をもたらすかという疑問だ。
アマゾンはすでに、配送、決済、音声技術の分野を劇的に変える触媒となり、
欧米における小売りの未来をほぼ単独で作り上げようとしている。


ここで今後の予想を挙げてみよう。
(その解説部分は省略します、ご関心ある方は本書をご覧ください)


・アマゾンの実店舗展開の動きが
 eコマース専業企業へのとどめの一撃になるだろう。


・「実用的な買い物」と「娯楽的なショッピング」が
 より明確に区別されるだろう。


・現代の小売りにおける勝利とは、アマゾンにない分野で秀でること、
 ひいては商品よりも
 体験、サービス、コミュニティ、専門技術を強化することを意味する。


・米eコマースの前に長らく立ちはだかる壁をテクノロジーが打ち砕き、
 アマゾンが生鮮食品のオンラインショッピングを民主化するだろう。


・プライムが実店舗型へ移行すれば、
 小売りはロイヤルティ・プログラムの大幅な見直しを迫られる。
 (ポイント還元の概念は薄れていく)


・従来型小売業者が、その最高の資産である「店舗」をミニ倉庫として
 活用するようになり、都市部では1時間配送が通例化するだろう。


・アマゾンは顧客の利益のためにイノベーションを続け、
 買い物客を驚かせると同時に、
 より多くのセクターに変革をもたらすだろう。
 (助言、商品選択、レジ、配送、試着など)


・2021年を目途に、
 アマゾンはサービスベースの企業へ変遷していくだろう。


・今後はより多くの小売業者がアマゾンに追随するようになるだろう。



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