2019年11月8日金曜日

「アマゾン・エフェクト」とは何?

[このテーマの目的・ねらい]
目的:
 アマゾン・エフェクトについて再整理・再確認をいたします。
ねらい:
 アマゾン・エフェクトの対抗策を真剣に検討しましょう。
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皆様ご認識のように、デジタル化革命が急進展しています。
その急先鋒がアマゾン社です。
アマゾン社の猛威を「アマゾン・エフェクト」と称しています。


私もあらためてそのエフェクトを確認しようと、
この本を読みました。18年4月の発刊です。
なんとこの著者鈴木康弘氏は、7-11創始者鈴木敏文氏のご長男なのです。ものすごいイケメンですね。

この書によると、アマゾン・エフェクトはこう説明されています。
 アマゾン・ドット・コムの快進撃の陰で、
 アマゾンが次々と進出する業界で
 業績や株価の低迷にあえぐアメリカ企業が増えている現象をそう呼びます。

 その業界は百貨店やスーパーにかぎらず、
 生鮮品や衣料品、コンテンツ産業など幅広い業態におよびます。
 多くの企業が苦境に追い込まれ、最後にはなぎ倒され、
 それまでの業界の秩序が崩れていく。
 それは「アマゾン・ショック」とも表現されます

本書では、著者のソフトバンクグループ、セブンイレブングループでの事業体験、
特に、各事業の実店舗ビジネスとネットワークビジネスを融合させる
オムニチャネルビジネスの立ち上げの奮闘ぶりが詳しく紹介されています。

鈴木敏文会長が、2016年5月に突如退任されたのは、
非常に残念なことだったことがあらためてよく分かります。


今回、これまでの私の知見を含めて
アマゾン・エフェクトの意義・将来予測をしてみたいと思います。

1.アマゾンの歴史・進出分野
2.アマゾンの成功要因・強み
3.アマゾンの対抗者
4.アマゾン・エフェクトの将来


1.アマゾンの歴史・進出分野 Wikipediaの情報による
  • 1995/7  書籍サービス開始
  • 1998/6  音楽配信事業開始
  • 2000/11 日本語サイト開始
  • 2001/6  音楽,DVD、ビデオ取り扱い開始
  • 2002/7  クラウドサービスAWS開始
  • 2003/7  エレクトロニクス開始
  • 2003/11 ホームキッチン開始
  • 2004/10 おもちゃ&ホビー開始
  • 2005/11 スポーツ開始
  • 2006/8  ヘルス&ビューティー開始
  • 2007/3  時計開始
  • 2007/6  ベビー&マタニティ開始
  • 2007/11 電子書籍販売サービスKindle Store開設
  • 2008/5  コスメ開始
  • 2008/10 食料&飲料開始
  • 2009/5  文房具・オフィス用品開始
  • 2010/10 AmazonマーケットプレイスWebサービス開始
  • 2010/9  ペット用品開始
  • 2015//半ば Amazon Echo米国で販売開始
わずか25年弱で
アマゾン・エフェクトを起こすほどの大事業者になっているのです。


2.アマゾンの成功要因・強み(上野見解)
アマゾンの成功要因の基本は
「お客様第一」(お客様にとって何がよいか)の追求を
確たる経営ビジョンにしていることだ、と言われています。
それはそうでしょうが、私は次の点に着目しています。


はじめのステップで固めた経営ノウハウを生かして
次のステップに進む。


1)はじめは単なる書籍の通販屋でした。


2)そこで得られた通販ノウハウを利用して
 他の商品の通販に展開しました。
 (今や家電、玩具、日用品、食料品、衣料品、など
 消費者が必要とするものは何でも取り扱っています)


3)そこで得られた物流能力を武器にしました。
 物流能力は専門の物流業者を上回るまでになっています。
 (物流業務の受託も行っています)


4)その過程で得られたIT能力を生かして
 クラウドサービスを始めました。
 そのAWS(アマゾンWebサービス)は
 入れ物だけを提供するIaaS型のクラウドサービスでは
 シェア30%で世界一です。


5)同じくIT能力を生かしてスマートスピーカーEchoなど
 AI(人工知能)分野にも強力な進出をしています。
 Echoは米国スマートスピーカー市場の約7割を獲得している。


つまり、新分野進出の際は、
必ず既存の経営ノウハウを利用しているのです。
多くの新規事業進出者が手ぶらで新領域にチャレンジし
成功していないのと対照的です。


現在のアマゾンの強みは、
そのようにして集積した経営ノウハウと並んで
お客様データです。
(アメリカにおけるアマゾン会員数は
2017年7月に8500万人だそうです。-当書
アメリカの成人人口の約4割を押さえています)


通販はその特性からしてお客様データを把握し集積できます。
そのお客様基盤がアマゾンの絶対的強みとなっているのです。


3.アマゾンの対抗者
当書ではアマゾンの対抗者として、
アメリカではウォルマートのみ(だけだそうです)、
日本はセブンイレブングループ、イオングループ
の動きが紹介されています。


勝負は資金とそれに裏付けされた人材のようです。
日本勢は厳しいですね。


4.アマゾン・エフェクトの将来
私は、アマゾンに加担したくないと思っていますが、
便利さに負けて利用しています。
書籍はもちろんですが、
ヘルス&ビューティー、オフィス用品まで買っています。


オフィス用品は、小型プリンター用のインクです。
製造元のHP社に注文すると「在庫がない」と言うのです。
「とんでもない、印刷ができなければ仕事が止まってしまいます!」
そうしたら、HP社の営業が「アマゾンにはあるかもしれません」
と言いました。
ビックりですね!!アマゾンにあったのです。
それだけアマゾンの商品調達力はすごいということです。


アマゾンは、築き上げてきたお客様基盤を生かせば
ほとんどの個人向けビジネスに進出可能です。


これから20年もすれば、早ければ10年、
すべての国民がスマホ等の利用者になるでしょう。
小売の世界は完全制覇可能です。


サービスの世界はどうでしょうか。
床屋の例で考えてみました。
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私は今までカットのみの1000円床屋を利用しています。
しかし、ここでは何のお客様情報把握もしていません。
アマゾン流だとどうなるでしょうか。
まずどこか「大手のチェーン」を買収するでしょう。


その上で、各店舗の地域のお客様に
お客様の特性に合ったサービスメニュの案内をして集客します。
一律1000円である必要はありません。
「そろそろいかがですか」の案内も送ります。
時間帯別の料金制も可能です。


店の運営面では、店により繁閑の状況が異なるでしょうから、
それを考慮した従業員の弾力的配置をします。
(「シフト管理」システム利用)
従業員の成果についても把握し給与対応します。


店員の稼働率を上げるためには、
他の業種・業態店舗との相互乗り入れも行います。
店員も給与アップになり歓迎でしょう。


こうなれば、他の類似チェーンは立ち行かなくなるでしょう。
申し訳ありませんが、
地元密着型の床屋さんもますますじり貧でしょう。
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飲食店チェーンも同様にいけそうです。


学習塾はすでにAI活用が始まっていますが、
アマゾンのような大開発力を持っているところが参入すれば、
素晴らしいサービスが実現するでしょう。


ユニクロなどの製造小売りは、
今まで以上に製品企画力が勝負どころとなり、
小売店網の力だけでは戦えません。


公共サービスも民営化すれば、
もっともっと利用者視点のサービス提供ができそうです。


個人を対象とするB2Cのビジネスは、
基本的にはお客様基盤が勝負です。
どれだけ多くのお客様を囲い込めるかで決まりです。


しかし、それだけではありませんね。
モノやサービスを入手するという面では
上に述べたアマゾン流でいけるでしょうが、
人間には別の欲求があります。


人との「ふれあい」です。
アマゾン流に太刀打ちできない場合は、
この「ふれあい」を強化すれば、
お客様を維持確保していけるのではないでしょうか。


床屋さんもどれだけそのようなお客様を持っているかで、
生き延びが決まります。


アマゾン社はB2Cのビジネスを席巻した後は、
法人対象のB2Bビジネスをターゲットにするでしょう。


情報サービス,ITサービスの世界はどうなるでしょうか。
アマゾンのクラウドサービスで影響を受けているのは、
「汎用機」やサーバを提供している大手ベンダで、
圧倒的多数の情報サービス企業はその埒外です。


しかし、AI技術力面で、アマゾンが
「アマゾンEcho」などの製品開発をするだけでなく、
業務をAI化するノウハウを習得すれば、
B2B(法人相手)のビジネスをしている企業も脅威を受けます。


アマゾンが集めているAI技術者は、
技術の専門家であって、AI技術を適用する企画者ではありません。
したがって、
既存の業務プロセスを改善することは得意ではないはずです。


ところが、AIの進歩の状況からすると、
現在のプロセスを改善するのではなく、
全く新しい方式でサービスを作り出すことを考えつくかもしれません。


AI技術ではありませんが,3Dプリンターの技術が、
従来の金型を作って製品を作るという方式を葬り去ったようにです。


これまでアマゾンの事業を支えてきた、あるいは製品開発をしてきた
社内に抱えている豊富かつ高度なIT人材は、
ひょっとすると、
画期的なシステム開発保守の方式を編み出すかもしれません。


そうなると、この技術・手法が
これまでのIT人材を社会の片隅に追いやってしまうかもしれません。
そうなれば、「2025年の壁」問題も消えてしまいます。
しかし、それは大分先のことでしょうね。


それよりも、IT業界としては、
アマゾン・エフェクトによってお客様がどうにかなってしまうこと、
あるいはアマゾン・エフェクト対応で
システムを大幅にかつ素早く変える要求が出てくること
の方を心配すべきでしょう。


アマゾン社としては、IT業界を狙うよりも
AI化・IoT化により高品質・短納期・低価格を実現すべく
製造業で次々と勝負に出てくるのではないでしょうか。


その場合、これまでのアマゾン流からすると、
机上で構想してビジネスを始めるのではなく、
その世界での有力企業を傘下に入れて実証したうえで
ビジネス展開するでしょう。


日本が得意とする商社も取引の仲介では勝負できず、
ますます資源開発・商品開発力が勝負となります。
製造小売りともども、レベルの高い「アタマ」が重要となります。
たいへんです!!


つまり法人対象ビジネスでは、すでに想定されているように
AI力が武器でその勝負になるのです。


このようなサービス強化は、独占という面では問題ですが、
利用者からみれば「悪くない」ことです。
規制は入りうるでしょうか。


著者は、当書の冒頭で以下の問題提起をされています。


以下の4つのショックが日本に押し寄せている。
1)アマゾン・ショック
2)クラウドショック(作らないで利用する文化)
3)AI/IoTショック
4)教育ショック


教育ショックの内容はこう書かれています。
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このままいくと、
IT人材の育成に国家としてとりくみ始めたアメリカと
育成がおくれる日本との間で大きな隔たりが予想されるのです。


企業内の人材の構成を見ても、
アメリカと日本では大きな違いが出ています。


たとえば、アマゾンは、IT企業というよりは、
広い意味では流通業に属しますが、
社員の半分以上はエンジニアが占めるといわれます。


だから自前でシステムを構築し、
顧客のニーズに合うよう、適宜迅速に更新したり、
変更していくことができます。


企業が自らすぐれたIT人材を多く抱える。
そこへ、国家レベルで育成にとりくんだIT人材がどんどん入り、
システムをどんどん進化させていく。


一方、日本企業では依然、
システム開発を外部のITベンダーに委託し、
いわゆる”丸投げ”をするケースが多く見られます。


いま、日本ではIT人材不足が深刻化していますが、
国家をあげて育成にとりくむアメリカのような対策は
いまだ見られません。


デジタルシフトの時代は、
アマゾンのように、自前でシステム開発ができることが、
スピード的にも、コスト的にも必要であり、
いかに社内に人材を確保し、育成できるかが競争力を左右します。


このままでは世界と日本の差が広がるばかりです。
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大事な技術は社内に確保しろという主張は至極ごもっともです。
ご自身も、7-11時代に内製を実践されていました。
私はこれを「内製化のすすめ」と称しています。

この点、真剣に取り組むべきですね!!

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