2019年3月18日月曜日

「日本は勝利の方程式を持っていた!」

【このテーマの目的・ねらい】
目的:
 国の浮沈をかける大イベントでも、当事者の能力・思考で
 結果は+-分かれることになることを再認識しましょう。
ねらい:
 戦争の是非とは別に、客観的な事実を知ることには
  積極的になりましょう。
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このテーマは我が畏友茂木弘道氏の大力作です。
氏は、「史実を世界に発信する会」を主宰し、
歪められた戦後の日本観を是正する情報を
世界に発信しています。


本書は大東亜戦争のことを記述しているのですが、
氏は決して感情的にならずに淡々と史実を解明して、
その事実を解説されています。
氏の筆力にあらためて敬服しました。


私は今さら太平洋戦争を肯定しようとか、
どうすれば勝てたのかを研究しようということではなく
本書を読みました。


そこから私なりに読み取れたのは、
以下のような組織と人間論でした。


1.日本には当初、現実的実戦的な素晴らしい戦略があった。
  開戦前に作成されたものでその内容は以下のとおりです。
  米国の敵陣に攻め入らずアジアで戦陣を固めよう(敵を引き込もう)
  というまことに理に適った基本戦略です。
  本書ではこの内容を逐条解説しています。
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対米英蘭蒋戦争終末促進に関する腹案

昭和十六年十一月十五日 大本営政府連絡会議決定

方 針
一.速に極東に於ける米英蘭の根拠を覆滅して
  自存自衛を確立すると共に、更に積極的措置に依り
  蒋政権の屈伏を促進し、独伊と提携して先ず英の屈伏を図り、
  米の継戦意志を喪失せしむるに勉む

二、極力戦争相手の拡大を防止し第三国の利導に勉む

要 領


一.帝国は迅速なる武力戦を遂行し
  束亜及南太平洋に於ける米英蘭の根拠を覆滅し、
  戦略上優位の態勢を確立すると共に、
  重要資源地域址主要交通線を確保して、
  長期自給白足の態勢を整う



凡有手段を尽して適時米海軍主力を誘致し
  之を撃滅するに勉む


二、日独伊三国協力して先ず英の屈伏を図る
(一)帝国は左の(以下の)諸方策を執る
 イ、濠洲印度に対し政略及通商破壊等の手段に依り、
   英本国との連鎖を遮断し其の離反を策す

ロ、ビルマの独立を促進し其の成果を利導して
   印度の独立を刺戟す


(二)独伊をして左の(以下の)諸方策を執らしむるに勉む 
 イ、近東、北阿、スエズ作戦を実施すると共に
   印度に対し施策を行う

ロ、対英封鎖を強化す
 ハ、情勢之を許すに至らば英本土上陸作戦を実施す


(三)三国は協力して左の(以下の)諸方策を執る
 イ、印度洋を通ずる三国問の連絡提携に勉む
 ロ、海上作戦を強化す
 ハ、占領地資源の対英流出を禁絶す


三、日独伊は協力して対英措置と並行して
  米の戦意を喪失せしむるに勉む

(一)帝国は左の(以下の)諸方策を執る
 イ、比島の取扱は差し当り現政権を存続せしむることとし、
   戦争終末促進に資する如く考慮す

ロ、対米通商破壊戦を徹底す
 ハ、支那及南洋資源の対米流出を禁絶す

ニ、対米宣伝謀略を強化す
   其の重点を米海軍主力の極東への誘致並
   米極東政策の反省と日米戦無意義指摘に置き
   米国与論の厭戦誘致に導く

ホ、米濠関係の離隔を図る


(二)独伊をして左の諸方策を執らしむるに勉む
 イ、大西洋及印度洋方面に於ける対米海上攻勢を強化す
 ロ、中南米に対する軍事、経済、政治的攻勢を強化す


四、支那に対しては、対米英蘭戦争、
 特に其の作戦の成果を活用して援蒋の禁絶、
 抗戦力の減殺を図り、在支租界の把握、
 南洋華僑の利導、作戦の強化等、政戦略の手段を積極化し、
 以て重慶政権の屈伏を促進す



五、帝国は南方に対する作戦間、
 極力対ソ戦争の惹起を防止するに勉む
 独ソ両国の意向に依りては両国を講和せしめ、
 ソを枢軸側に引き入れ、他方日蘇関係を調整しつつ
 場合に依りては、
 ソ連の印度イラン方面進出を助長することを考慮す


六、仏印に対しては現施策を続行し、泰に対しては
 対英失地恢復を以て帝国の施策に協調する如く誘導す


七、常時戦局の推移、国際情勢、敵国民心の動向等に対し
 厳密なる監視考察を加えつつ、
 戦争終結の為左記(以下)の如き機会を捕捉するに勉む

イ、南方に対する作戦の主要段落
 ロ、支那に対する作戦の主要段落、特に蒋政権の屈伏

ハ、欧州戦局の情勢変化の好機、特に英本土の没落、
   独ソ戦の終末、対印度施策の成功
   之が為速に南米諸国、瑞典、葡国、法王庁に対する
   外交雌宣伝の施策を強化す
 
 日独伊二国は単独不講和を取極むると共に、
 英の屈伏に際し之と直に講和することなく、
 英をして米を誘導せしむる如く施策するに勉む
 
 対米和平促進の方策として
 南洋方面に於ける錫、護謨の供給及比島の取扱に関し考慮す

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戦いの戦略だけでなく、国際世論、相手国の民意についてまで配慮する
周到さです。
戦略とはこういうものかと再認識しました。


吉田松陰はじめ維新の志士たちは極めて優秀でしたが、
この戦略を起案した人たちは並々ならぬ知見・洞察力を持っていて、
維新の志士に匹敵します。。
 


2.そのとおり実行していれば、米国の講和を引き出すことは可能だった。
  その後10年以上に亘る強い立場の維持ができたかどうかは不明ですが。
  勝利の可能性について、本書は丁寧に傍証しています。


3、この戦略を実行しなかったのは海軍の大暴走である。
  連合艦隊司令長官山本五十六が
  海軍内の軍令部の指揮にも従わず
  陸軍をも従属させた。
  山本長官は海軍として短期的戦果を挙げることに終始した。
  真珠湾の見せかけの戦果が海軍の増長を招き
  暴走を許してしまったのです。
 


4.それを束ねるトップのリーダシップが足りなかった。
  東條首相は首相兼陸軍大臣でしたが、
  開戦時には軍に対する統帥権を持っておらず、
  参謀総長、軍令部総長が陸軍・海軍の統帥権を握っていました。
  組織の権限の問題で東條個人の問題ではありません。
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(以下当書からの転載です)
東條首相は、この大綱(元の戦略「腹案」の改悪「大綱」)を
「攻勢戦略か守勢戦略か意味が通じない」
と非難したそうですが、

首相兼陸軍大臣の東條首相は、
この時点(昭和17年3月)では統帥に対する権限を持っておらず、
参謀総長、軍令部総長が陸軍、海軍の統帥権を握っていました。


したがって、これを覆すことはできなかったのです。
しかし形式上は、「大綱」は東條首相、杉山参謀総長、
永野軍令部総長の連名となっています。


よく束條首相を独裁者のように言う人がいますが、
実際は全く見当はずれです。

アメリカのルーズベルト、イギリスのチャーチル、
ソ連のスターリン、中国の蒋介石は
軍の統帥権も実質握っていましたので、
まさしく独裁者でしたが、東條首相は違いました。


「海軍の実力に関する判断を誤れり、
しかも海軍に引きずられた。
攻勢終末点を誤れり、
印度洋に方向を採るべきであった」


昭和20年(1945年)2月16日、
首相を退任していた東條大将は、
参謀の種村佐孝大佐にこのように語ったそうです。
痛恨の叫びでしょう。


東條大将は、
「腹案」についてはその本質をかなり理解していた
ようです。ですから、この叫びが出てきたのでしょう。


たとえば、第1段作戦の中でのラバウル占領です。
1月23日に第4艦隊に配属した陸軍南海支隊は
ラバウルを占領します。


その後は海軍陸戦隊に任せて引き揚げるはずでしたが、
海軍の要請に負けてそのまま居残りました。

東條首相はこれに対し、
戦線の伸び過ぎをもたらすとして大反対しました。


塚田参謀次長も同様でした。
しかし、海軍の勢いと、
シンガポール攻略に海軍航空隊を参加させるという
交換条件で認めさせられてしまったということです。

こういうところを見ても、東條首相の戦略眼、
「腹案」への理鮮度は、
かなり深いものであったことが伺われます。
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5.戦術的にもいくつかのミスがあった。
  いつの世にも「間抜け」がいるのです。
  ひょっとしたら戦略とは別にそのミスがなければ、
  もう少し何とかなった可能性もある。
 1)真珠湾攻撃の不備
  戦艦のみを攻撃対象として、
  敵の戦闘能力を喪失させる兵站への攻撃を行っていないのです。

  この真珠湾攻撃は、ルーズベルト大統領の陰謀で
  日本の宣戦布告とは関係なく、日本軍の動向を知っていたにもかかわらず
  あえて奇襲攻撃をさせて国民の戦争参加への支持をとった、
  軍艦も避難させずに犠牲者を出すことまで平気でやった、、
  ということは今や衆知の事実です。

 2)ガダルカナル島の奪取作戦
   日本海軍が構築した航空拠点基地があっさり米海兵隊に奪取されたのを
   取り返すべく派遣された三川第8艦隊は
   敵の巡洋艦4隻を沈めたが輸送船団には一指も触れずに引き揚げ
   「ミカン取りに行って皮だけ持って帰ったのか」と言われた。
   海軍は全般的に「補給」の重要性を認識していない。



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