2017年5月30日火曜日

「なぜ、残業はなくならないのか」 なぜ日本の労働生産性は低いのか?



【このテーマの目的・ねらい】
目的:
 残業の必要性について再確認していただきます。
 長時間労働と合わせて問題にされる日本の労働生産性の低さ
  についても考えていただきます。


ねらい:
 残業についての偏見を正しましょう。
 日本の労働生産性の改善については諦めましょう。


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「なぜ、残業はなくならないのか」は常見陽平氏の書籍のタイトルです。
常見陽平氏は、
労働社会学が専門の千葉商科大学専任講師をしておられる方です。




当書では、
電通事件を初め働き方に関わるテーマを幅広く取り上げておられますが、
当稿では、論点を絞らせていただきました。


政府が推進している「働き方改革」では、
残業=悪というイメージで残業を減らす
ことを推進しているような印象を受けます。


これは常見氏の主張ですが、
私もそう思ってきています。

本書では、以下の調査結果が紹介されています。
1.厚生労働省「平成28年版過労死等防止対策白書」の調査
(1)残業が発生する理由 経営者側の意見
 1)顧客(消費者)からの不規則な要望に対応する必要があるため
 2)業務量が多いため
 3)仕事の反感の差が大きいため

(2)同 従業員側の意見
 1)人員が足りないため(仕事量が多いため)
 2)予定外の仕事が突発的に発生するため
 3)業務の繁閑が激しいため

2.2007年「独立行政法人労働政策研究・研修機構」の調査
(1)経営者側に対する質問
 「長時間労働が発生するのはどのような要因からだと思うか」の回答

 1)所定内労働時間では対応できない仕事量だから     47.6%
 2)事業活動の繁閑の差が大きいから              38.4%
 3)突発的な業務がしばしば発生するから            36.3%
 4)仕事の性格上、
       残業や休日出勤でないとできない仕事であるから             32.5%
                                  
 5)取引先との関係で、時間を合わせる必要があるから       29.5%
 6)最近の人員削減により、人で不足だから               23.3%
 7)組織または個人の仕事の進め方にムダが多いから          16.2%

(2)従業員側の回答
 1)所定時間では片付かない仕事量だから                             57.2%
 2)突発的な業務がしばしば発生するから                               45.9%
 3)最近の人員削減により人手不足だから                              20.3%
 4)取引先との関係で、時間を合わせる必要があるから          18.8%
 5)事業活動の繁閑の差が大きいから                                     16.5% 

常見氏は、この二つの調査から、
仕事量、突発的な業務、業務の繁閑の問題の3点を
残業の主たる要因として整理しています。


私はこう整理します。
1.恒常的に残業が発生するのであれば、それは人員不足である。
2.ある時期、残業が発生するのであれば、正当な企業経営である。
  
一般的業務では、仕事量が毎日一定だということはありません。
たとえば、
 週末に仕事量が多い。
 月末に仕事が集中する。
 季節的にある時期に仕事量が多い。
 予算編成時に仕事が増える。
 ランダムに仕事量にばらつきがある。


一般的なビジネスの状況では
以下のような繁閑のばらつきがあるということです。




その場合に、ピークに合わせて人員を用意していれば残業は発生しませんが、
ピーク以外はアソビが出る、ということになります。


営利目的の民間企業では、
そんな非効率な経営はしません。


ある水準を目安に人員を設定し、
それを超える仕事量は残業(超過勤務)で対応するのです。
その水準以下の場合は、
納期条件の緩い業務(学習を含みます)を行います。


ですから、残業=悪なのではなく、
通常は残業=必然なのです。
その残業がどの程度かが問題であって、
恒常的残業の場合は、人員不足で経営の責任です。




政府が規制しようとしている月間最大100時間は
正規な労働時間を150時間(7.5時間×20日)とすると
67%になります。
対案の60時間でも40%でかなりの高率です。


150時間を平均労働時間だとすると、
こんなイメージになります。




もう一つ、重要な当書の指摘があります。
それは、今や日本だけが長時間労働国ではない、
ということです。


むしろ、過去30年以上の間の改善状況は、
先進他国を抜いてダントツの好成績なのです。
以下の図をご覧ください。



しかし、これは正規労働者・非正規労働者込みの数字で
正規労働者の労働時間は横ばいなのだそうです。


日本の労働生産性が低いことも俎上に載せられています。
この労働生産性とは、国のGDPを総労働時間で割ったものです。


GDPは国が生み出している付加価値で、
それを生み出しているのは、
最終的には機械ではなく人間の労働ですから
労働生産性の出し方としては間違っていません。


それにしても先進国中最下位というのは納得できません。
どこにそのからくりがあるのでしょうか。


この労働生産性は
人口一人当たり国民所得であったり
就業者一人当たりであったり
労働時間1時間当たりであったりします。


多くの議論は就業者数がおかしい、
労働時間の取り方がおかしい、ということに集中しています。
つまり労働生産性の分母を問題視しているのです。


私の見るところでは日本の労働生産性が低い原因は、
分母よりむしろ分子つまり稼ぎの方にあるのです。

儲かる産業が少ないということです。


米国の金融業/IT産業を見てください。
労働生産性世界一のルクセンブルグも金融で稼いでいるのです。


日本の労働者が従事している産業は、
サービス業ーーー超過当競争で儲かりません、
製造業-ーーここも右へ倣えの同質競争で儲かりません。


オリジナリティがあって儲かっているのはごくごく一部の企業です。

私はこの点について詳しい分析はしていませんが、
今度時間が取れたら分析してみようと思います。
この結論は間違っていないでしょう。


したがって、日本の労働生産性が低いのは、
「だらだら働いている」労働者の責任ではなく、
経営の責任なのです。

だから、会議の改善や働き方改革をしたって、
日本の生産性が世界のトップに近づくことはありえません。

本当にオリジナリティがあるビジネスが少ないからなのです。
人の真似しかできないのではだめです。


その点、ソフトバンクの孫社長、日本電産の永守社長、
ユニクロの柳井正社長、ユーグレナの出雲充社長、
の後に続けですね。




 

2 件のコメント:

  1. 私も現在長時間残業の原因と対策を研究中ですが、上野さんの指摘は正しいと思います。日本人のサービス業の生産性が低いと言われているのは、仕事の質・ビジネスモデルの違いが原因です。例えば、米国の小売店、スーパー等の扱うロットは単位が大きいですが、日本は小ロットです。品揃え、陳列、レジでの作業など、どれを見ても米国に比較して生産性が上がらない構造です。その他のビジネスも、日本人の商売は顧客満足第一主義ですが、それが売価に反映されていないので、生産性向上厳しいですね。日本の商習慣はバイヤー絶対優位ですから、この習慣を直さないと生産性は上がらないです。要はサービスの質に応じた対価を貰うということですが、これは経営者の問題が大きいです。漸くこのことに目覚めて、クロネコヤマトなど多くの企業が行動を起こし始めたと言えるでしょう。日本の労働者の質は非常に素晴らしいと思います。

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  2. 生産性が低いポイントは品質担保にあるように思います。何重チェックとしている。また国民性として品質の質にこだわりがあるように思います。前の方のコメントにもありますが、品質に見合ったそれ相応の単価(売値)になっていないのではないでしょうか。

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