2013年10月28日月曜日

「業務改革の教科書」を勉強しましょうか?

【このテーマの目的・ねらい】
目的:
 「業務改革の教科書」を知っていただく。
 業務改革を実施する場合の有効なガイドがあることを
  知っていただく。
 当社も業務改革推進のお手伝いができることを知っていただく。
 当社が普及推進している「目的・ねらい」「価値目標」を 
  知っていただくか、おさらいしていただく。

ねらい:
 業務改革を成功させるために「業務改革の教科書」を活用いただく。
 「目的・ねらい」「価値目標思考」を活用いただく。
 (物事がすっきり整理できるようになります)
 

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このレポートは以下の文書をいただいたことから
始まりました。
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上野さん、はじめまして。榊巻亮(さかまきりょう)と申します。
上野さんのブログ、深い洞察察、独自の切り口が面白く、
紹介された本をよく読んでいます。

これからも楽しみにしています。

私事ですが、このたび「業務改革の教科書」を出版致しましたので、
献本させていただきました。

「業務改革の教科書」は、私と同僚のコンサルタントの
2名で執筆しました。

題名の通り、業務改革をやり切るために、何をどの順番で行うべきか、
どんなことに注意を払うべきなのかを解説しました。

改革プロジェクトにおいて最も重要である立ち上げ・計画策定時期に
重点を置いてノウハウを詰め込んでいます。

こうした業務改革系の書籍はいくつかあるのですが、
ほとんどが海外のものであり、実際に日本企業で業務改革を
進める上で最も悩ましいことが語られていません。

例えば
 ・いかにトップに味方になってもらうか
 ・業務調査は何をどこまで調べれぱいいのか
 ・抵抗勢力とどう対峙するか
などです。

本書では、実名の企業事例、実際に現場で使ったスライドや
分析の結果、当事者のインタビューなどを交えて、
ビジュアルに易しく解説しています。

また、失敗談も盛り込んだ生々しい内容で、
本書を手に取った方がすぐに活用できるよう工夫を
凝らしています。

是非お読みいただき、ドキリとするような書評を
書いていただけれぱ著者冥利に尽きます。

よろしくお願いします。

    2013年10月21日
           ケンブリッジ・テクノロジー・パートナーズ株式会社
           アソシエイト・ディレクター 榊巻亮
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当書の副題は、
「成功率9割のプロが教える全ノウハウ」
となっています。

当書を開いて「おや?」と思ったのは、
「前書き」(はじめに)がないことでした。
いきなり目次から始まっているのです。
前書きと目次で書物の当りをつける私としては面食らいました。

しかし目次のすぐ後ろに、
「プロローグ」という章があり、
通常の前書きの内容が書いてありました。

その中にこういう記述があります。
 「変革をリードできない管理職には価値がない」
 「変革プロジェクトの成否は、最初で9割決まる」
 「この本の特徴」

前二つはまったく同感です。

「変革プロジェクトの成否は、最初で9割決まる」
の内容をご紹介しましょう。

これで
本書のトーンというかスタンスをお分かりいただけると思います。
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「変革プロジェクトの成否は、最初で9割決まる」

「大半の変革プロジェクトが失敗する」と闇いたことはないだろうか。

 例えばIT関係のプロジェクトで言えば、
プロジェクト成功率は31%でしかない(『日綾コンピュータ』調べ)。

大きな本屋には企業変革やプロジェクト管理のコーナーが
古くから必ずあるが、長年にわたって
「ほとんどの変革が失敗する」という事実に変わりはない。

 システム構築とは無関係の業務改革や、
システム構築までたどり着かずにうやむやになる変革を
統計に入れると、もっとずっと低い成功率になるだろう。

 なぜこれほどまでに、成功率が低いのか?

 それは、立ち上げ方が悪いからだ。
 最初がグダグダなプロジェクトは、いくら後から奮闘しても
成功しない。

このことは、デスマーチプロジェクト
(終わりが見えない死の行進のようなプロジェクトのこと)に
配属され、苦しむ人の怨嵯(えんさ)の声を聞くと実感する。

 「これまで決めるべきことを決めてこなかった」
 「最初から負けが決まったプロジェクト」
 「そもそもこの陣容ではやれっこない」
と、恨みの声はプロジェクトの立ち上げ期でのダメさに
集中しているのだ。

これは、コンサルタントとしての実感とも一致する。

仕事がら、うまくいっていないプロジェクトの支援に
入ることもある。そういうプロジェクトは9割がた、
プロジェクトの立ち上げ期にやるべきことをきちんとやっていない。

 大成功した変革をリードしたある方が、プロジェクトを振り返ってこう
言っていた。

 「変革プロジェクトの成功は90%、立ち上げで決まる。
実行局面では社外に優秀な方がたくさんいて、
力を借りられる。でも、やりたいことがこちらで見えて
いなかったり、途中でぶれたら、プロジェクトは必ずうまくいかない」
本当におっしゃる通りだと思う。

 著者である白月・榊巻の2名は、コンサルタントとして、
変革プロジェクトを成功させるべくお客さんの現場で、
毎日毎日汗をかくことを仕事としている。

2人が所属する会社、ケンブリッジ・テクノロジー・
パートナーズ(以下、ケンブリッジ)が支援するプロジェクトの
成功率は今のところ、95.6%。残念ながら100%ではないのだが、
世のプロジェクト成功率と比べると誇れる数字である。

 なぜ成功率がこれほど高いのか。

話せば10時間くらいは必要なのだが、無理やり短くすると
「プロジェクトの立ち上げ期にやるべきことを、
完壁にやり切る」ということになるだろう。

 この本は、
「圧倒的なプロジェクト成功率を誇るケンブリッジが、
業務改革を成功させるために立ち上げ期にやっていること」
を全て書き表した本である。
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「変革をリードできない管理職には価値がない」
については、
当社で推進しておりますMIND-VIPという
部長が中心になって進める業務革新プログラム
での前提コンセプトとなっています。

MIND-VIPのVIPは
Values Innovation Program(価値観を変えるプログラム)
ですが、この価値観の中の一つに、
部長が率先して改革に取り組む。(指示をするのが部長ではない)
が入っています。

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せっかくの機会ですからこのMIND-VIPを少しご紹介します。
このプログラムは、以下の条件で進めるものです。

1.部下を持つ部長さんが中心になって自部門の改善を行う。

2.半年で数字で計測できる成果を実現する。

3.他部門と関係せずに自己責任で遂行できるテーマを選択する。

4.コンサルタント(当社)は改善のための分析手法を部長に教えるだけで、
  解決策・対策を直接教えることは一切しない。

5.半年後に結果を評価して優秀者を社長が表彰する。

これだけで、部長達は必死になって改善に取り組みます。
忙しくて改善なんてできない、とは誰も言いません。
やはり社長の威光は絶大です。

その結果、多くの企業では1クラス15組(15部門)で
半年内で合計億円単位の改善成果を出しました。

最高額は2クラス同時に実施した工事会社で
23億円の改善成果を実現し
危ぶまれた当期の予算利益達成に貢献しました。

この工事会社様からは、冗談半分にですが、
「この数字は公表しないでください。そんなに儲かるのなら、
と値切られると困るから」と言われました。

「自己裁量」「自己責任」「社長による評価」は
人を頑張らせるのです。

MIND-VIPは、大きな改善利益が実現した、
ということを成功と言うなら100%成功でした。
ただし、
各チームが設定した目標値の平均的達成度は85%程度でした。

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本書は副題で成功率9割と称していて、
先ほどの引用文に、成功率95.6%とありましたが、
何を以って成功と言うのかの説明はありません。

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因みにシステム開発の世界では、
開発当初に設定した、納期・コスト・品質目標を達成したものを
成功と言っています。

この成功の定義は、
日経コンピュータ誌が2003年に
「システム開発の成功率は3割」という調査結果に基づく
特集記事から一般化しました。

この時の「成功」の基準が、
納期・コスト・品質目標のすべてを達成した案件
というものでした。

その時、この世界の事情に詳しくない人は、
「3割しか成功しないのか!!」と驚いたようでしたが、
事情通は
「その定義で言うのなら成功はもっと少ない」
と言っていました。

同誌では同じ調査結果を2008年にも公表しましたが、
成功はやはり3割で
状況はほとんど改善されていませんでした。

詳しく見ると3項目の達成度は、、
 品質:若干改善(達成度46%が52%に)
 納期:横ばい(達成度55%)
 コスト:(76%が63%に悪化)
でした。

なお、この調査は、開発企業ではなく、
発注者側のシステム部門です。

コスト超過の悪化は、超過分を
従来は請負契約で開発している開発企業がかぶっていたのを、
準委任契約が多くなって、
システム部門(発注者)が被るようになった
のが原因と考えられます。

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横道に逸れましたが、
当書の内容構成は以下のようになっています。

その内容は確かに実践的なのと、
事例を具体的社名を挙げて紹介しているのは
著者が主張されるように類書にないことです。
たいへん説得力があります。

第1部 「どんな変革か?」をざっと描く
 C まずは同志を集めよ
 D 変革のゴールを決める
 E なぜ良くなるのかを端的に示す
 F ゴールやコンセプトをどうやってひねり出すか?
 G タイプ別、変革の落とし穴
 H トップの支援を取り付ける
 I プロジェクト体制を固める
 

第2部 現状調査/分析
 J 業務とシステムを棚おろす
 K プロのヒアリング技術
 L 課題を特定する
 M 分析は「構造化と実感」
 N 分析の七つ道具

第3部 将来の姿を描く
 (内容省略)

第4部 計画の価値を示し、Goサインをもらう
 (内容省略)
 最後は丁度Z(ゼット)で終わっています。
 ということは、26項目あるということです。

業務改善屋を自称する私から見て
一つずつごもっともという内容が詰まっています。

確かに、どれも重要なのですが、
「全ノウハウを公開する」という思いが強すぎてか
「成功するためにはこんなにやることがあるのか」
と読者の戦闘意欲を失わせるのではないか、
ということが気がかりです。

私が、1994年,BPRブームが起きた時に出版しました
「システムアナリストのための業務革新ガイドブック」で書いた
業務革新の成功要因は以下の7つでした。

 1.トップのリーダシップ
 2.ミドル・マネージャの積極的参画
 3.強いプロジェクjト・チーム
 4.明確な革新目的の設定
 5.有効な基本アイデアの導出
 6.情報技術(IT)の活用
 7.方法論・支援ツールの活用

この本のタイトルの意味は、
その頃のBPRは経営企画部門等が主導で、
システム部門はカヤの外か脇役ですが、
「全社を横断的に見れるのはシステム部門のあなたたちでしょう!
頑張りなさいよ、システムアナリストさん!!」
ということでした。

でも多くの企業では、現在も相変わらず
システム部門は業務改善の脇役ですね。

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当書で唯一弱いところは、
当書でいうところの「ゴール」の内容が若干あいまいな点です。

当書で示されているゴールの例
 1)日野自動車の人事業務改革プロジェクトのゴール
  
 















 2)古川電工人事BPRのプロジェクトゴール

  
  1.給与関連の業務効率を30%アップする
  2.各工場、各関係会社に散らばっている業務を集約し、
     シェアードサービスセンターを設立する。
  3.人材活用に資するため、人事情報を拡充しディスクローズする
  4.グループ経営の強化に資するため、人事システムを更新する

我田引水ばかりで申し訳ないのですが、
当社が提供している方法論MIND-SAでは、
ゴールについて「目的・ねらい」という概念があります。

「目的・ねらい」とは、
「何か」をするときに実現しようとする成果で、
「何か」の中で実現する成果を目的、
「何か」が実現した後で実現する成果をねらい、
と言います。

 
 
そうして、「ねらい」のために何かに取り組むのですから、
「ねらい」は「価値目標」でなければならない、としています。

「価値目標」とは実現できれば嬉しいことで、
ビジネスの場合の「価値目標」の基本は
「早い、うまい、安い(QCD)」だと言っています。
これに「人の能力・意欲向上」を付け加える場合もあります。

その観点からすると、上記日野自動車のゴールは、
「ねらい」とする「価値目標」が明確には示されていません。

この場合の「価値目標」は、
 事業の方向性に合致する人材の育成
 従業員の活性化
 制度変革への対応
等で「うまい」か「人の能力・意欲向上」です。
 

古川電工の例では、かなり「価値目標」が示されていますが、
明確に整理すると以下の表のようになります。
2番目の「シェアードサービスセンターの設立」は
何のために行うのかが不明です。

 
業務改革事例の目的・ねらい、価値目標



目的

ねらい

価値目標

給与関連の業務改善

給与関連の業務効率を30%アップする。

コストダウン

各工場、各関係会社に散らばっている業務を集約し、シェアードサービスセンターを設立する。

不明

 

人事情報を拡充しディスクローズする。

人材活用に資する。

(具体化が必要)

社員の能力向上

人事システムを更新する。

グループ経営の強化に資する。(具体化が必要)

経営強化(うまい)

 
「ねらい」(価値目標)が示されていないと、
こういう点が不具合です。

業務の標準化は価値目標ではありません。
コストダウンのための標準化と品質向上のための標準化では
標準化の方向が異なります。

通常はこの両者は相反します。

シェアードサービスセンター設立のねらいが、
 社内人材のより付加価値の高い仕事への活用
 社内業務のコストダウン
 他社から受注し収益を稼ぐ
のいずれであるかによって、センターのあり方が異なります。

あいまいにして取り組むと虻蜂取らずになるでしょう。

「目的・ねらい」や「価値目標」につきましての詳細は、
拙著「価値目標思考のすすめ」を
ご参照いただければ幸甚です。

榊巻さん 
たいへん良い題材のご提供、
どうもありがとうございました。

2 件のコメント:

  1. 上野さん
    榊巻です。取り上げていただいてありがとうございます。

    「価値目標」という考え方は、興味深く読ませていただきました。我々は「それをやると何が嬉しいのか?」という問いかけで、価値目標を明らかにするようにしています。
    これからは「価値目標」という単語を使って見ようかと思います。

    また、「成功の定義」は、ご指摘の通り、納期・コスト・品質(米国Standish Groupに準拠)になります。
    キチンと記載しておけば良かったですね・・・。漏れですね・・・。

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  2. 当社の研修の受講生からいただいた
    メールを転載させていただきます。

    ご無沙汰しております。A社のIZです。
    随分以前に、超プロマネ研修に参加させて戴きました。。。
    最後の点数は散々でしたが、、、
    今では、社内でプロマネの心を人に教える立場にまでなりました。


    今月のプログは大変為になりました。

    珍しく、他者の書籍「業務改革の教科書」を
    紹介でもされるのかと思って読んでおりましたら、
    紹介ではなくて題材にしてお勉強会を開催されるとは
    恐れ入りました。

    最後は
    「榊巻さん たいへん良い題材のご提供、
    どうもありがとうございました。 」と締めるところが、
    他のブログにはなく読後の満足感も十分でした。

    直接お話を伺うことも暫くありませんが、
    十分上野節を堪能させて戴きました。
    終了直前には、CMも入っておりましたが、、、

    メンバーに価値目標を理解させる時の
    具体例の一つにしたいと思います。


    価値目標の「丸い三角形」は未だに愛用させて戴いており、
    「価値目標思考のすすめ」を気に入って
    メンバーに貸してしまう(戻ってきません・・・)ので、
    何度となくAMAZONなどで
    新たに購入するはめになっております。。。


    又、何処かでお会いできるのを楽しみにしております。

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