【このテーマの目的・ねらい】
目的:
OECDが実施した「国際成人力調査」を知っていただく。
その結果について考えていただく。
今の日本の教育制度の課題を考えていただく。
ねらい:
教育制度改革の検討材料にしていただく。
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皆様もご記憶でしょう。
10月9日の各紙が報道しました。
また、日本が頑張ってるぞ!という話です。
OECDが世界24カ国のの16-65歳を対象に
社会生活の中で求められる能力を測った
初の「国際成人力調査」を実施しました。
日本は、
読解力、数的思考力、ITを活用した問題解決能力
の3分野のうち、前2者で1位をとったのです。
1国5,000人程度を対象にしているようです。
出典:読売新聞2013年10月9日「国際成人力調査」
因みに、OECDでは、
高校生を対象にした学力調査PISAでは
以前から、読解力、数学的リテラシー、科学的リテラシー
の調査が実施しています。
この調査では、2000年に日本は数学的リテラシーで1位、
2003年に科学的リテラシーで1位をとっています。
同じくOECDの、
小学4年生、中学2年生を対象にしたTIMSSという調査では、
数学または算数と理科の学力テストを実施していますが
いずれも2-6位を確保しています。
今回の日本の成人の好成績をどう解釈するかです。
日経新聞では、
ベネッセ教育総合研究所の理事長の
以下のコメントを載せていました。
「終身雇用制度の下で若手をゼロから育て上げる文化があり、
研修制度も充実している。
学校を出た後も能力が上がるのは当然だ」
このコメントには賛同できません。
先ず、学校を出た後も能力が上がっていると判断されていますが、
同一人について上がっているという調査結果はありません。
16―19歳・20―24歳の人よりも
25―29歳の人の能力が高くなっているだけなのです。
この点の解釈としては、
若い年代層に対する教育が不備であるか、
その世代の向学心の低下を言うべきでしょう。
ゆとり教育は、現在12歳から26歳までの年代が
対象となっています。
最も長い間「ゆとり」だったのは18歳から20歳です。
まともに、16-24歳の年代が「被害者」なのです。
もうひとつの「誤解」は、
「終身雇用で研修制度も充実している」という点です。
日本の国全体で投入される教育費のGDPに対する比率は
OECD加盟国中ほぼ最下位なのです。
(2012年4月の当ブログ 「これは凄い!!『成熟日本の進路』」で
取りあげました。
http://uenorio.blogspot.jp/2012/04/blog-post_23.html )
研修事業を生業にしている当社から見ても、
今の日本企業では新入社員研修と資格昇格試験以外は
ほとんど教育をしない企業が大半です。
とても研修制度が充実していると言える状況ではありません。
少なくとも、
企業内研修によって成人の能力が向上しているとは言えないでしょう。
では何が好成績の要因かということになります。
基本は学校教育でしょう。
進学をてこにして勉強する生徒が多いということです。
正確には「多かった」のです。
現在の生徒たちの成績は世界一を滑り落ちています。
韓国は教育に力を入れて、
近年はPISAの成績で日本を抜いているのだそうです。
ですが、韓国の成人の能力は未だ中位より下です。
つまり今回調査された成人力は、
その人が受けた学校教育のレベルを反映している
ということなのです。
ということは今後、PISAによる生徒の能力低下に合わせて、
成人の能力低下が「実現」していくでしょう。
もう一つ、今回の調査結果で注目すべき点があります。
それは、これまで見ました成績は平均点でのことです。
読解力の成績の6段階別構成比も発表されています。
これによると、上から2番め・3番めのランクの構成比は
参加国で最も高かったのですが、
最上位のレベル5は1.2%で、
フィンランドの2.2%を下回っています。
これは読解力でのことですが、
おそらく、他の種目でも同じ傾向があるのではないでしょうか。
つまり、日本人はそこそこの成績(能力)であるが、
非常に優れた人は少ない、ということです。
今回の調査で、米国は平均点で
読解力が16位、数的思考力が21位,IT活用能力でも14位です。
それにもかかわらず、
新しいIT領域の技術・製品サービス等の発信はほとんどが米国です。
勝負すべきは平均点ではないのです。
これからの世界でリーダシップをとろうと思ったら、
英才教育が必要なのではないでしょうか。
以上、今回もマスコミのいい加減なコメントに反論してみました。
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