2012年7月31日火曜日

福島原発事故の原因-上野見解最終集約

【このテーマの目的・ねらい】
目的:
福島原発事故の真の原因を知っていただく。
この事故は防止策を取りうるものであったことを知っていただく。
(それは堤防を高くすることではなく、
予備電源系の防水性を高めることです)
原因分析例を知っていただく。

ねらい:
感情論での原子力発電反対を再考していただく。

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福島原発事故が甚大な被害をもたらしたのは、
放射性物質の拡散です。
それは原子炉建屋の水素爆発によってもたらされたものです。

なぜ水素爆発が起きたのか、
それは原子炉の冷温停止ができなかったからです。

ここまでは、どなたも知っていることです。

ということは、
福島原発事故の被害は、
地震で建屋や原子炉が損壊したからではなく、
原子炉の冷温停止ができなかったから発生した
ということです。

冷温停止できれば、
なんの問題も起きなかったのです。

福島第1原発に隣接している(12キロ南)第2原発は
冷温停止ができて
何の問題も起こしていないことから、
このことは明らかです。

では、なぜ福島第1では冷温停止ができなかったかを
第2原発との比較で整理してみましょう。


この比較表の基になっている資料は、
以下のとおりです。
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「福島第1」事故検証プロジェクト最終報告書 大前研一著
当書の帯の主張
「国会事故調も政府事故調も問題の本質を見誤っている!
電源一つと冷却源さえあれば福島第1原発は
メルトダウンしなかった」
このことは私の1年前からの主張と同じです。

福島原発事故 独立検証委員会
調査・検証報告書 日本再建イニシアティブ編

2011年4月6日朝日新聞記事
「東電、設計の不備指摘 原発事故分析 福島第2と比較」
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冷温停止できなかったのは、
原子炉を冷却できなかったからです。

冷却には電源が必要です。

福島第1原発の正常電源は地震ですべて失われました。

緊急用の主たる予備電源は、ディーゼル発電機です。

ところが、このディーゼル発電機が稼働しませんでした。

その理由は、発電機自体の冠水と
発電機を冷却するための海水を供給するための
海水ポンプの冠水、により
発電機が使用不能になったことです。

発電機自体の冠水は、
水密が十分でないタービン建屋に設置したことにより起きています。
当時の地震学では、津波は5メートルまでだとなっていましたので、
タービン建屋でも問題ないと考えたのでしょう。

第2原発の発電機は、
水密が完全な原子炉建屋に設置されでいたため
発電機自体の水没は免れています。

海水ポンプが必要なのは発電機が水冷式だからです。
この海水ポンプは海の近くに設置されていて、
途中一度津波の高さ予測から底上げはしたようですが、
津波をまともに被ってしまいました。

福島第1原発で、空冷式が3台あるのは、
1994年時点で予備電源の見直しがされたときに、
「2,4,6号機に予備電源が1台ずつしかないのは
まずいのではないか」
ということで増設されたものです。

その際に、
誰かが水冷式のリスクを挙げて空冷式にしたもののようです。

よく確認してみると
長い間にいろいろ補強策はとっているようです。

福島第2では、
当初から予備電源は水冷式が3台ずつありましたから
そのままになっています。

以上をまとめますと、以下のような因果関係が成り立ちます。

        ①              ②               ③
予備電源が         電源盤の          海水ポンプの
水密が完全でない  ×  防水対策が    ×    防水対策が
場所に設置されていた  十分でなかった       十分でなかった

          ↓              ↓               ↓
途中で見直しのチャンスがあったのに  途中の見直しのチャンスに
弱点の補強をしなかった          弱点の補強が不十分だった

    ↓               ↓               ↓
 
 

            想定以上の津波で冠水した 

     
                    ↓               
            ( 正常電源が失われた )

                    ↓
            予備電源が機能しなかった

                    ↓  
            原子炉の冷却ができなかった

                    ↓
           原子燃料がメルトダウンを起こした

                    ↓
      高温により圧力容器・格納容器内に水素を発生させた

                    ↓
            建屋内に水素が漏れ充満した
       
                    ↓   
               水素爆発が起きた

                    ↓
              放射能を飛散させた

予備電源が機能しなかった後のプロセスでも、
水素爆発を起こさない手立てはあったかもしれませんが
そもそもは、予備電源の使用不能が悪いのです。

①②③につきましては、
水冷式の場合、どれ一つが欠けても予備電源は機能しません。
空冷式の場合は、③は無関係です。

そこで、今回の事故の最終原因は、
①発電機を防水が完全でない場所に設置したこと
②電源盤の防水対策が十分でなかったこと
③海水ポンプの防水対策が十分でなかったこと
あるいは水冷式の発電機を採用したこと

その一つずつが独立で事故原因に対して責任があるのです。

福島第2では、この①②③の難を逃れて
3台の予備電源が稼働しました。あっぱれです。

私が、特に問題だと主張するのは、発電機の設置場所です。

福島第2原発では、
防水性の完全な原子炉建屋内に設置したのですから
冠水のリスクを認識していたということだと思います。

それなのに、福島第1に遡及して対応策を講じなかったことは
全体責任者の怠慢だ、と私は断じているのです。

この点が、①②について
「途中で見直しのチャンスがあったのに
弱点の補強をしなかった」としていることです。

③については、2002年に土木学会の見解を受けて、
津波の高さの予測を変更して、
海水ポンプの2メートルほどのかさ上げをしています。
かさ上げだけでなく、防水性の強化もすべきだったのです。

この論理には原子炉の専門知識は一切必要ありません。

大前研一さんは、
東京工大原子力工学科で修士号をとっておられますが

私はこの世界はまったくの「しろうと」です。
ですが、根本原因の見解はほぼ同じです。
いかがでしょうか。

この論理と原子力発電の是非論とはまったく関係がないことを
念のため申し添えておきます。

なお、この論旨の基本部分は2011年6月の
「福島原発の事故およびその被害拡大要因」
で述べているものです。

2 件のコメント:

  1. 上野氏の見解に全面的に賛同します。
     また、事故に至った不備の責任者をはっきりさせる必要は
    やはりあるでしょうね。ある部署のある部課長、その上の
    役員、そして当時の社長、会長は、名乗り出るべきでしょう。

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  2. 青木 正樹2012年8月2日 15:42

    上野さんの見解に賛成です。
    ただ、私がもう一つ疑問に思っているのは、どうして水素爆発を防げなかったかということです。
    水素濃度が爆発限界に達する前に大気中に逃がすことが出来れば、爆発は起きなかったと思います。過酷事故が起きれば、原子炉内部で水素ガスが発生することは分かっていたはずです。であれば、素人考えですが、圧力容器、格納容器、隔壁、建屋など必要な場所に、手動でも水素を逃がす装置があり、それが作動しておれば、次々に水素爆発が起きた事態は防げたのではないかと想像しています。
    私の記憶では、当時は水素爆発を防ぐため、空気を注入しているという報道があったように思います。
    そういう装置は設置が困難とか、在るにはあったが作動させられなかったというのでしょうか。
    あの水素爆発が、大量の放射性物質の急速な、広範囲にわたる放出をもたらした要因だと思います。
    また、爆発によって建屋や内部の装置が破壊され汚染されたことにより、当然その後の調査、復旧作業が極端に困難になり、爆発音と、きのこ雲、内外の無残な破壊の映像が、原発に対する更なる恐怖心を呼び起こしたようにも思います。

    青木 正樹

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