2012年8月18日土曜日

ロンドンオリンピックの成果は立派なものだったのでしょうか!

【このテーマの目的・ねらい】
目的:
 ロンドンオリンピックの日本の成績を総括していただく。
 ロンドンオリンピックの日本の良い結果を確認していただく。
 メダル数が多かった割に、嬉しくなかった理由を確認していただく。
 本当のメダル奨励策は何かをかんがえていただく。

ねらい:
 
 オリンピック、スポーツ振興策を考えていただく。
 スポーツ振興のために自分ができることを考えていただく。
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1.実績の評価
先ずは、ロンドンオリンピックの成績を確認してみましょう。
(1)メダルの総数 過去最高

メダル総数は過去最高です。
 

過去のメダル総数ランキングは以下のとおりです。
 1位 38個 2012ロンドン
 2位 37個 2004アテネ
 3位 32個 1984ロサンゼルス
 4位 29個 1972ミュンヘン 
 5位 29個 1964東京
 6位 25個 1968メキシコ
 7位 25個 1976モントリオール
 7位 25個 2008北京
 9位 22個 1992バルセロナ

国を挙げて取り組んだ東京オリンピックよりも多いのです。
非常に立派なことです。
途中はどうなることかと心配しましたが、
最後に盛り返しましたね。

(2)メダル獲得の競技数が増えた
今回の大会では26競技が行われました。
その内、日本は、以下の13競技でメダルを取りました。
 
アテネの合計37メダルの時は、
今大会ではなくなった野球とソフトボールを含んで12競技でしたから、
今大会との比較では10競技が13競技になったことになります。

その広がりは大きな称賛に値します。
 
 
 
以下の〇がアテネではなかったメダル獲得競技です。
どれも大きな感激を与えてくれましたね。

(金あり)
 柔道
 レスリング
 体操
〇ボクシング

(銀あり)
 重量挙げ
〇バドミントン
〇卓球
〇サッカー
 アーチェリー
 競泳
〇フェンシング

(銅のみ)
〇バレーボール
 
 ハンマー投げ

参考までに、
アテネでメダルがあって今回はメダルがなくなった競技は
 マラソン、自転車競技、セーリング、
 ソフトボール、野球、です。

(3)女子の方が活躍した?
そういう印象はありますが、以下のようにデータでみると、
男子の方が上です。

      金   銀   銅   合計
男子   3    8   10   21

女子   4    6    7   17

メダル獲得率を参加選手数に対して算出すると
以下のようになります。
補正メダル獲得率は、
金=3、銀=2、銅=1の重み付けをしたものです。

    参加選手数  メダル獲得率 補正メダル獲得率
男子 137人      16%              26%

女子 156人      11%          20%

女性活躍の印象は
バレーボール、卓球、バドミントンなどの盛り上がった競技、
レスリング金の3女傑、
などからの影響だということになります。

(4)日本男子は団体競技がダメ?
メダルの内容を分析すると、
男子は団体競技にはメダルがありません。
体操や競泳など団体種目でのメダルはありますが、
これらの種目は、基本的には個人技の集合でしかありません。

それに対して、女子は、
サッカー、卓球、バドミントン、バレーボール
とチームワークを必要とする競技が4種目もあります。

なぜ男子はダメなのかの詮索はぐっとこらえて、
男の子はもっとサッカーや野球で鍛えられてほしいですね。

(5)メダルが多かったのは国内経済事情の影響

私は、2004年のアテネオリンピックの後で、
「上野則男のブログ」の前身のMIND-REPORTの
「なぜ、メダルがこんなに増えたのか」で
以下のような分析をしました。

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メダルが増えた原因は、
主力選手(20代前半)が10歳の頃の経済情勢が
影響している。





すなわち、1990年にバブルの壊があり、
「就職をしても期待できる人生が送れそうにもない」と
スポーツに力を入れる若者が増えたのであろう。

アテネの前4回の時は、日本は好景気に酔っていたので
サラリーマン指向者が多かった。
メダルの数が極端に少ない。
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その論理からしますと、
北京と今回のロンドンはどうなるでしょう。

1990年過ぎにITバブル崩壊はありましたが、
1997年までは安定成長が続きました。
北京年次はその影響を受けて落ちています。

1998年からはマイナス成長時代です。
今回はそのおかげでスポーツ指向者が多かった
ということになります。

この推論はどうでしょうかね。

2.すなおに喜べない原因
メダルの数はとりましたが、
何となく「最高」の気分になれないのではないでしょうか。
その原因を整理してみます。

(1)金が少ない

その原因の一番目は、金メダルの少なさです。
金メダルが少なく銀メダルが多いということは、
決勝戦で負けを見せられて
「残念」「口惜しい」思いをするのです。

金メダルのランキングだとこうなります。
 1位 16個 2004アテネ
 2位 16個 1964東京
 3位 13個 1972ミュンヘン
 4位 11個 1968メキシコ
 5位 10個 1984ロサンゼルス
 6位  9個 1976モントリオール
 6位  9個 2008北京
 8位  7個 2012ロンドン


(2)期待との差

「問題は目標と現状の差」という定義からしますと、
期待がどうだったのか、期待に応えたのか、
期待外れだったのか、ということが問題になります。

予想の代表として、
アメリカのスポーツイラストレーテッド誌の予想を確認しましょう。

これによると、
金12個、銀14個、銅13個、合計39個でした。
合計はほぼ当たりですが、構成が大きく異なります。

金の予想は、
体操が、男子団体、個人総合
柔道は、男子1、女子3
レスリングは、女子3
水泳は、北島の2、女子の1

このうち当たりは、ご承知のように、
体操個人総合内村航平、柔道女子松本薫、
レスリング女子の3、の合計5個、

これに予想外の男子レスリング米満選手と
男子ボクシング村田選手の終盤での金が加わって
実績は合計7個でした。

レスリングの女子3人(伊調馨、小原日登美、吉田沙保里)
ともが予想どおり金メダルというのは、
信じられないくらい素晴らしいことです。

柔道の松本薫さんはあまり話題にならなかったようですが、
凄いですね、
日本の柔道でただ一つの金メダルを
予想どおりで取ったのですから。
素晴らしいことはありましたが、
予想12に対して実績7は、期待外れでがっかりの方です。

(3)柔道が不振

序盤で柔道が不成績だったことも、
嬉しくない原因です。

先ほど見た予想との差でも、4対1です。
国内での期待はもっと大きかったでしょう。

アテネの金8個、銀2個、銅0と比較しても
今回の金1、銀3、銅3は大きく見劣りがします。
国技と言われた柔道がなぜ不振か、ですが、
理由はいくつか挙げられています。

アテネオリンピックの鈴木圭治さんは
テレビでこう言っていました。

外国選手の取組みは、
反則にならない限り何でもあり、だ。
たとえば、腕の取り方、
日本の柔道は伝統もありきちんと腕と襟首などを掴む、
ところが外国人は柔道着だけを掴んで絞る、
などを行う。

日本は柔道という「道」の中で戦おうとするのに対して、
彼らは「勝つ」という目的で技を考えて闘う、
というのです。

日本は、「伝統の技を守る」のか、「勝つに転ずる」のか、
考えどころです。

以下余談
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それで思い出すことがあります。
私は学生時代に空手をして全日本のベスト8になりました。

私たちが学生の時に、
ルールを決めた試合制度が始まりました。

それまでの稽古は、当ればダメージを受けますから
一応「寸止め」といって、当る直前で止めるという決まりで
やっていました。

それでもうまく止まる保証はありませんから、
稽古は恐ろしいものでした。
「強い」者が勝つのです。

試合制度も、寸止めを前提にしていました。
稽古だと、寸止めしますが終りになりませんから、
入れられても稽古は続き、
弱い者は最終的に痛い目に遭います。

ところが、試合制度は審判がいて、
技が決まれば、1本か技ありです。
審判の判断があって、1本なら終りです。
1本になっていなければ、試合継続です。
今の柔道の試合と同じです。

稽古の時と違うのは、寸止めしないで当ててしまうと
反則負けになることです。

寸止めでも稽古着には当り「ばさっ」と音がします。
止まっているか、体に当ってしまったかは審判の判断です。
柔道の判定よりはるかに難しいものです。

審判の判断で1本勝ちが反則負けになるかです。
どうしても審判の先入観が入り込む余地があります。

それはともかく、
私は「目的思考」で、勝つためにどうするかを考え
試合用の技を練りました。

他校の猛者達に比べて
日頃の稽古では強くありませんでしたが、
「1発決めればよい」ということから考えました。

それは、
相手が突いてくる時、あるいは蹴ってくる時に、
一瞬早く突きを相手の胸か腹にぶち込むのです。
カウンター技ですね。

稽古の時なら、
そんなことをしても突き飛ばされてしまいます。

この作戦で、「強くない」私が
全日本学生空手道選手権大会の個人戦で
ベスト8になりました。

試合制度で勝つことは、
本来の「強さ」の実現からいうと邪道かもしれません。

日本の柔道はどうしますかね。
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日本の柔道が強くなくなったのには、
もっと本質的な原因があります。

それは柔道人口が減っていることです。

街の道場は最盛期に比べて半減、
柔道の選手を生み出す若者人口も
200万人から100万人に半減、
競技人口はフランス以下、なのだそうです。

これは、テレビ出演者の発言で未確認です。

今の子供たちは、皆、サッカーですものね。
この流れは
ちょっとやそっとでは変えられそうにありません。

(4)水泳と体操も「不振」

水泳はアテネで、金3、銀1、銅3、合計8
      今回が、金0、銀3、銅8、合計11です。
数は増えていますが、質が落ちています。

体操はアテネで、金1、銀1、銅2、合計4
      今回が、金1、銀2、銅0、合計3ですから、
善戦ですが期待はもう少し上でしたでしょう。

これらの得意種目が負けるのは口惜しいのです。

(5)中国と韓国に負けた

もう一つ口惜しい思いの原因は、
中国と韓国に負けることです。

正直のところ、
この両国に負けたくないという国民感情があると思います。

中国は、今やトップのアメリカにも迫ろうという
メダル大国ですから、
「負けても仕方がないか」という気持ちも芽生えてきていますが、
「韓国には負けたくない」気持ちは強いでしょう。

竹島や慰安婦問題で「難くせ」を付けられていますし。

韓国との対戦成績はどうだったのでしょう。
ご存じのとおり、女子バレーボールと男子サッカーの3位決定戦は
1勝1敗でした。
男子サッカーはけんか状態でしたね。
これが負けたのは口惜しいです。

他に、柔道、レスリング、卓球、アーチェリーなどで負けています。
因みに韓国の金メダルは以下の種目です。
 
 射撃       3
 アーチェリー  3
 フェンシング  2
 柔道      2
 レスリング   1
 テコンドー   1
 体操       1

体操を除くと武闘系で、国情を表しているのでしょう。
柔道、レスリング、体操など日本の得意とする競技が多いのも
対抗感情に影響しています。


2.国際比較

(1)国別成績

次は日本の成績は他国と比較してどうかという点です。
これは、金メダルの取得順です。
メダル総数だと、日本は6位です。
矢印はアテネオリンピックとの増減です。
ほぼ同数は、→としています。



この表の「1個当たり人口」とは、
国民何万人でメダル1個を取っているかを示したものです。
国民が多い国がメダルをたくさん取るのは当たり前だからです。

こうして見ると、成績優秀なのは、
ハンガリー、豪州などです。

ハンガリーは、カヌーを中心に、体操、競泳、フェンシングなど、
いろいろこなしています。
豪州は、セーリング、カヌー、ボート、競泳など水周りが得意です。
日本も海洋国家なのに、競泳以外はダメですね。

英国は「主催国特需」です。
カザフスタンも成績優秀です。
重量挙げ、レスリング、ボクシングなど力技が得意です。

ヨーロッパ諸国は200万人に1個前後です。
韓国はその仲間ですが、
日本は米国と並んで成績不良です。

アテネオリンピックの分析の際にも書きましたが、
中国は、かなり低い取得率ですが、
大きく改善進行中です。
中国が欧米並みの取得率になったら、
全メダルを取ってしまう勘定です。
まさに脅威です。

ところで、世界第3位の人口大国のインドが、
銀メダル2個、銅メダル3個しか取っていません。
どなたか、その事情をご存じの方教えてください。

(2)メダル取得への報奨

国別のメダル競争になると、
話題になるのが、メダル取得者への報奨金です。

日本は、
金300万円、銀200万円、銅100万円が
日本オリンピック委員会から出ます。

総額は1億4200万円で、偶然予想どおりだそうです。
偶然というのは、金を15個から18個取る前提の金額だったようで、
その点は予想外なのですから。

この報奨金以外に
企業や競技団体から報奨金が出るようです。

韓国では、男子が金メダルを取れば兵役が免除されることは有名です。
その他にも、メダリストにはポイント計算の上、
ポイントに応じた年金も支給されます。

国際大会の成績がポイントとしてカウントされ、
例えば五輪で金メダルなら90点、銀30点、銅20点。110点以上なら、
メダル獲得の翌月から100万ウォン(約7万円)が生涯に亘ってもらえる
のだそうです。

中国は、金メダル450万円といわれていますから、
それほど大きな金額ではありません。
でも職業の当てのない者にとっては魅力的なのかもしれません。

中国などではメダリストも使い捨て発想のようです。
新興国はそれでも何だらドリームでよいのでしょう。

アテネの女子マラソンの金メダリスト野口みずきさんが
会社から5000万円の報奨金をもらったといって話題になりました。

5000万円なら、何年かは持つかもしれませんが、
多少の金額ではすぐなくなってしまいます。
それよりも、選手生活を終えた後の生活の設計の方が重要です。

スポーツ選手にとっては、
地域でスポーツ振興に貢献できるとか、
スポーツの経験が活かせる生活を保証することが魅力になるでしょう。

そのためには、スポーツの鍛錬だけでなく、
そのような働きができるような教育をしておくことも必要です。
スポーツバカでは困るのです。

そのような対策を準備して初めて、
日本は長期的にメダル大国のモデルになれるのでしょう。

たかがスポーツ、
たかがオリンピック、ではないのです。
観戦、応援を通じて日本国民の気持ちが一つになれる
大きなチャンスです。

因みに、テレビの視聴率ランキングは以下のとおりでした。
1.サッカー1次リーグ 女子日本×スウェーデン 30.8%
2.サッカー決勝 女子日本×米国          29.1%
3.サッカー1次リーグ男子日本×スぺイン     26.0%
4.開会式                        24.9%
5.男子マラソン                     24.3%
6.サッカー準々決勝男子日本×エジプト      23.9%
7.女子マラソン                     22.5%
8.バレーボール3位決定戦女子日本×韓国    21.7%
9.レスリング予選ー準決勝女子55キロ72キロ級 21.2%
9.体操種目別決勝・男子床・女子跳馬       21.2%

1.を除いては深夜なのに、皆さんよく見ました。
日本中の20%から30%の人が同じ時間に同じものを見て
「日本頑張れ!!」と声援していたのです。

明るい日本のために、
スポーツ奨励策をみんなで考えましょう!!






 


5 件のコメント:

  1. 上野さんらしい分析ですね。男女の活躍はイメージと実態で
    違うことが明確になりました。思い込みは怖いですね。感謝!
    オリンピックは国際間の紛争を一時棚上げすることも理念の一つですが、どういう訳かより一層ナショナリズムを掻き立てる演出が多く矛盾していると思いました。

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  2. 「スポーツバカでは困るのです」に共感。
    上野さんのコメントを私的文集に引用することをお許しください。

    返信削除
  3. 青野さん

    いつもコメントありがとうございます。
    どうぞお使いください。  上野 

    返信削除
  4. 政井さん
    お久しぶりです。
    ナショナリズムを掻き立てるのは
    それぞれの国にとってはいいことなのではないでしょうか。
    日本もこういうことがないと、国が一つにまとまりませんもの。

    返信削除
  5. ueno@newspt.co.jp2012年9月3日 10:03

    私の帝人時代のヨット部仲間の羽山さんからのご意見です。
    今でも時々ヨットに乗っている現役セーラーです。
    ヨットでの単独太平洋横断にも成功した方です。
    (堀江謙一さんや鹿島?さんが有名ですが、
    羽山さんは何人目ですかね)
                    以上 上野記
    ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
    「日本は海洋国家なのに競泳以外は駄目でしたね」
    と上野さんが言われました。

    私は、日本は海洋国家だと全く思っていません。
    確かに一時、日本は海洋国家だという表現が
    充満していた時代がありました。
    軍国主義が都合よく表現していたのではと思っています。

    日本は周囲を海に囲まれた島国です。
    魚食を好む民族ですから欧米諸国に比べれば
    漁民の比率も高かったでしょう。
    それをもって海洋国家とは言えません。

    外国に行ってはいけない、
    耐航性ある船の建造は禁止
    だの長い鎖国時代を持った農耕民族です。

    これがアメリカだと、祝日として感謝祭を祝います。
    小学校では必須授業として感謝祭のいわれを教えます。
    子供達全員が、
    先祖が帆船に乗って大洋を渡ってきたことを知ります。

    日本人よりも彼らの方が
    はるかに海や船に親しみを持っているのは当然でしょう。
    カリフオルニアの或るマリーナに2ヶ月半暮らして
    つくづくそう感じました。
    豪州でも同様に感じます。

    日本人は海や船に関心があるのかしら?????

                       羽山泰夫

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