2020年3月18日水曜日

「グリーンインフラの未来像」

【このテーマの目的・ねらい】
目的:
 災害復旧の方法について考えていただきます。
 グリーンインフラという言葉をご理解いただきます。
ねらい:
 原形復旧は止めてほしいですね。
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この項は、學士會会報2020年Ⅱ号掲載
中村太士北大大学院農学研究員教授の「グリーンインフラの未来像」
のご紹介です。
グリーンインフラとは、
「自然環境が有する多様な機能を積極的に活用して、
地域の魅力・居住環境の向上や
防災・減災等の様々な効果を得ようとするもの」
なのだそうです。
例は、森林や湿地などです。


これに対して既存インフラは、多くの場合コンクリートを使うため
グレーインフラと呼ばれています。


筆者はこの両者を組み合わせて利用すべきだと主張しています。



その上でこういう記述をされています。


1.グリーンインフラの多機能性
グリーンインフラは防災・減災効果のみで評価すべきではない。
グリーンインフラの特徴は「多機能性」にあり、
地域の「原風景を守る」ことにある。


グリーンインフラがもつこの二つの特徴を生かせば、
農業等の土地利用を維持したり、
湿地等の自然生態系に復元すれば
生物多様性豊かな地域社会を形成できる。


また逆にグレーインフラに大きく依存する、
つまり図の斜線部分を大きくしすぎると、
たとえば、海の見えない防潮堤を造ることになり、
地域の原風景は失われる。


これは致命的であり、
いくら数十年から百数十年に1回程度の現象に対する
安全性を100%確保できたとしても、
原風景を失った故郷に戻る住民は限られている。
人口減少に歯止めがかからない東北震災地がこれを表している。


気候変動下の地域づくりは、
故郷の原風景を大事にしながら両インフラを相補的に配置し、
気候変動下においては計画規模以上の現象に対しても
堤外のみならず
堤内側の空間も利用しながら減災し、良い環境を維持すべきである。


上野:まったくそのとおりです。
私もかねがねそう主張しています。
高いコストをかけて造る高い防潮堤は、原風景を失うだけでなく
浜を利用した漁業ができなくなります。
そんな防潮堤を造るのではなく、
避難できる高い建物(避難所)を所々に作った方がよい、
と言っています。


2.原形復旧から未来復興へ
著者の主張の要約はこうです。
この考えも大賛成です。


災害が発生した場合、「原型復旧」が原則となっている。
しかし高齢化社会の現状では土地が復旧しても人間は戻らない。
自分で家を建てる力も意欲もない。
住む人のいないゴーストタウンができる可能性もある。


原型復旧により、他場所からの用土の搬入等により
異なる生態系が持ち込まれ自然環境が破壊される。


したがって、原形復旧はやめるべきである。
原形復旧ではなく、
今後のあるべき姿を実現する未来復興を目指すべきである。


未来復興は、計画的に取り組むことは難しい。
したがって災害後に取り組むのがよい。
未来復興はこういうものである。


1)グリーンインフラとグレーインフラのベストミックスを実現する。
2)生物遺産を生かす復興を検討する。
3)受動的再生を原則とする(生態系の回復を待つ)。
4)外来種、異なる地域の種、異なる地域の材料を持ち込まない。
5)生態系の変化、新たな生態系の創生を許容しグリーンインフラとして生かす。
6)人口減少などの社会構造変化、気候変動適応を考慮し、
  地域の産業に寄与する土地利用計画を検討する。

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