目的:
新卒者の一括採用をやめて通年採用にすることの
課題を検討します。
ねらい:
学校教育のあり方、企業のビジネスのあり方とも関係するので
一朝一夕にはできません。どうすべきなのでしょうか?
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
ご承知のように、経団連の自主規制だった現在の終活ルール
(説明会などの広報活動は3年次終りの3月以降に、
面接をはじめとする選考活動は4年次6月以降に行う)は
2021年入社者から廃止されます。
代わりに政府が大学4年次6月からの面接解禁というルールを設け
各企業の周知するとしているようです。
経団連の終活ルール廃止は、
単に採用活動の時期を自由にしようというだけでなく
年度一括採用も見直し、
通年採用に切り替えるという流れにもなるようです。
マスコミでは、通年採用が一般化していくような報道をしています。
ところがある調査では、
「通年採用を実施予定の企業は21%である」となっています。
それはそうでしょう。
でき上がっている専門職の採用であれば、いつでもよいのでしょうが、
新卒者の場合はそうはいきません。
新卒者は、最低でも1か月、長い企業では3か月の
新入社員研修を実施して
当該社企業人としての基礎知識を身につけてもらう
ようになっているのです。
人事部門としてはたいへんな大仕事なのです。
研修の後の配属の仕事も厄介です。
通年採用になったら
その新入社員研修はどうするのでしょうか。
人事部門が頑張ったとしてもせいぜい年2回の実施でしょう。
通年採用の意味があまりありませんね。
新卒者全員が、
希望する職種の最低限度の能力を身につけているようになるまでは
新卒者の通年採用は実現しないでしょう。
それには、企業で働く人間の職種がジョブ型(万能型でなく専門型)
にならなければならないのでいつの事やらの感じです。
ここで、一橋大学大学院の社会学研究科の田中拓道教授が、
學士会会報2019-Ⅱ号に掲載された
「就活ルールと日本資本主義」のご意見をご紹介します。
「就活ルールと日本資本主義」の要約
資本主義のパターン
|
その特徴
|
従来の教育体制
|
最近の動向
|
英米型自由主義市場経済
|
企業は短期的な企業価値の向上を目指す。
労働市場は流動的で、解雇や中途採用も容易
|
労働者は教育を通じて一般的な資格を取得した後、企業での職業経験を通じて専門技能を身に付ける。
|
労働市場の一層の流動化・規制緩和が進み、失業者への教育・職業訓練費用も抑制される。
教育への私的な投資が重視されるようになり、高度な教育を受けていない者は薄給に甘んじなければならない。
|
主要ヨーロッパ型調整的市場経済
|
労使協調のもとで労働者を長期的に雇用する傾向にある。
|
労働者は高度な公教育を受けた後、産業ごとに特化された技能訓練を長期的に受ける。
|
労使の話合いにより、働き方の柔軟化が行われている。
労働者の技能形成に政府が大きな役割を果たしている。高等教育費の8-9割は公的負担である。
|
日本
|
ヨーロッパ型だが、労使協調が産業別ではなく企業単位である。
|
公教育は一般的な教養レベルにとどまり大学での教育課程は企業では軽視され、企業に雇用された後の技能訓練8OJT)が重視されてきた。
大企業は、長期雇用を武器に人材を抱え込み、労働市場の流動化が進まない。
|
正規労働者に対しては日本型雇用(年功賃金、長期雇用)に大きな変化が見られない。
日本型雇用に従わない非正規労働者の比率が急拡大して労働市場の矛盾の調整弁となっている。
技能形成コストの絞り込み縮小をしている。厳しい国際競争条件のもとで教育への負担が困難になり、人材育成を大学に期待している。
|
日本は極めて中途半端です。
弱い者にしわ寄せが行ってそのままになっています。
非正規労働者のクーデターが起きてもおかしくない状況ですのに、
日本人はおとなしいのですね。
田中教授は、こう結んでおられます。
日本の現状では、若者や失業者への職業紹介・職業訓練への公的支出は、
ヨーロッパに比較して著しく低い。
就職困難学生への支援、就活早期化への歯止めに
政府がより大きな役割を果たすべきである。
0 件のコメント:
コメントを投稿