2018年4月23日月曜日

「AIとBIはいかに人間を変えるのか」

【このテーマの目的・ねらい】
目的:
 BI(ベーシック・インカム)の制度が
 いかに有効であるかを知っていただきます。

ねらい:
 BIの賛成者・推進者になりましょう。

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これは、私が敬服している波頭亮氏の著書です。
AIとBIと言うと,
BIはビジネスインテリジェンスを思い浮かべました。
なぜBIがAIと並列なのかと思いました。


ところが違っていました。
BIはベーシック・インカムなのです。
「ああ聞いたことはあるけれど、詳しくは知らない」

というものです。


当書を読んでみてなるほどAIと並ぶものだと分かりました。
さすが波頭さん、という感じです。


本項では,AI部分のご紹介は省略いたします。

AIに関する結論はこうでした。

AIが人間を超えることはない、
人間でしかできないのは感情労働である。
感情労働とはこういうものを指す。

「状況を読み取り、対峙する相手の気持ちを汲んで、
臨機応変かつ親密に相手に対応することで
相手に情緒的価値を提供する労働を指す」

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そもそもBIとは何か、それはこう定義されているようです。
「すべての国民に対して生活を賄えるだけの一定額の金銭を
 無条件で無期限に給付する制度」


かみ砕くとこうなります。
 1.無条件給付である
 2.全国民に一律で支給される
 3.最低限度の生活を営むに足る額の現金給付である
 4.受給期間に制限がなく永続的である




 BIに関する当書の主張は以下の点です。
 1.BIは社会保障制度として極めて有効である
 2.BIによる社会保障制度の運用は低コストで実現できる。
 3.BIは経済産業政策としても有効である。

 4.BIを維持するための財源確保はそれほど困難ではない。
 5.BIによって人間が怠惰になってしまうということはない。
 6.AIとBIによって
   人間がより人間らしい生活ができるようになる。

以上の点を、
各国の先進的実験等の結果も紹介しながら主張されています。


以下順番にその論点をご紹介します。

1.BIは社会保障制度として極めて有効である

 日本全国では1000万人が生活保護資格者であるのに対して
 実際の給付対象者は200万人で多くの人が救われていない。
 この人たちにも最低限度の生活補償金が支給されることになる。 

2.BIによる社会保障制度の運用は低コストで実現できる
 貧富に関わらず一律支給なので、審査等の手間が不要である。
 現行の生活保護に関連する職員は全国で1.4万人いる。
 これに非常勤や外注なども多く使われている。
 それらのほとんどが不要となる。


3.BIは経済産業政策としても有効である
 下層の人たちに渡る現金は消費に回る。
 GDPを引き上げる効果が期待できる。
 BIの財源は富裕層からの移転であるが
 富裕層の支出が減ることはほとんどないので、
 プラス効果が残る。

 企業にとっても、

 解雇規制の緩和や雇用保険の軽減が期待できる。
 終身雇用の負担からも解放される。

4.BIを維持するための財源確保はそれほど困難ではない

 問題の財源ですが、氏はこういう試算をしています。
 支給対象者は1.27億人で一律支給金額を1人当たり8万円とすると
 年間122兆円が必要になる。 

 この財源として以下が考えられる
  国民年金・基礎年金額 22.2兆円
  生活保護の生活扶助費 1.2兆円
  失業保険費      1.5兆円
  厚生年金       32.4兆円
   合計        57.3兆円 
残り64.7兆円必要。 

これは、
現在の国民負担率(租税負担+社会保障負担/国民所得)42%を
ヨーロッパ先進国並みの60%にすると77兆円が調達できる。 

実際の課税種目案としては、
  消費税で15兆円
  金融資産課税で42兆円
  法人税の増税で2.9兆円
   合計    60兆円 

残りは、以下の候補がある。
  高所得者の累進課税強化、
  奢侈的消費に対する物品税の導入
  相続税の税率アップ 
  
基本的には富の再配分ということです。

5.BIによって人間が怠惰になってしまうということはない

人間は働かなくてもよくなったら皆堕落するのではないかという
懸念がBIの反対派から表明されています。

ところが、これまでに実施された実験では、
そのようなことは起きないとなっています。

その代表例が紹介されています。
カナダのマニトバ州で1974年に行われた5年間の試行です。

収入が一定以下の住民は希望すれば
年間最大131万円の現金が支給されました。

対象住民1万人のうち3割が参加しました。

その結果は、こうです。

労働時間を減らした住民は男性で1%、既婚女性で3%、
未婚女性で5%に過ぎなかった。

その減少分は単に楽をするために使われたわけではなかった。

幼い子供を持つ母親は育児に専念することができ、
学生はより長い時間を勉学に費やせるようになったことが、
成果として挙げられている。

6、AIとBIによって
 人間がより人間らしい生活ができるようになる 

これは、人間はやらなければならないことが無くなった時に
どうなるか、ということです。

定年になって「毎日が日曜日」状態になると、
有意義な生活ができる人とそうでない人がいるでしょう。

定年前からそれに近い状態になるのです。

この難問に対して、波頭氏は、それが新しい時代の必要能力で
「経験と修練」によって生きがいを見つけることができる、
と述べられています。
そうあってほしいですね。






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