2012年3月31日土曜日

消費増税議論の是非

【このテーマの目的・ねらい】
 目的:消費増税議論の本質を考えていただく
 ねらい:消費増税に対するご自分の考えを再確認いただく
      (それでこれから反対しても遅いですかねー)

現時点で日本最大のテーマはこれです。
そこで、この議論の論点を整理してみました。

1.現在の国家財政のバランスでは税収不足で
 国家財政は破たんする(すでに破たん状態である)。
      ↓ 
  これは誰も異論がありません。
  国家財政の破たん救済策としては、
  税収増のみでなく、財政支出の見直しもすべきである
  という点については、論者によって強弱があります。

2.特にこれから増えていく社会保障費は賄えなくなる。
      ↓
  この点については概ね異論なしですが
  一部に社会保障費の内容を見直すべきだ
  という意見もありますが、
  その人でも税収増なしでいけるとは言っていません。

3.税収増の方法は消費税が現実的である。
      ↓
  消費増税反対意見は、
  消費増税では選挙に負けるから先送りしたい、が主です。
  「民主党のマニフェストで消費増税しないとなっていたので、
  それに反する」という意見も出ています。
  (これは表面的な強弁で、「選挙に負ける」が本音でしょう)

  より本質的に見える反対意見は、
  「この経済状態が悪い中で、
  さらに足を引っ張るような増税はすべきではない」というものです。

  この意見の背景には、経済は回復し成長軌道に乗るときがある、
  という前提があるようですが、そうなる保証はありません。

  そうなると、さらに財政赤字が拡大し、
  重大な局面に至るぞ!というのが増税派の意見です。
  この10年間、日本の名目GDPは横ばいかマイナス成長です。
  どうしてプラス成長が期待できるのでしょうか。
  

  賛成意見は、
  消費税は高齢者も含めて国民全員が負担することになるので
  公平である、と言っています。
  「日本の消費税率は低いから上げ余地がある」
  ということを根拠に挙げている場合もあります。


上記の1項、2項を認めても
その帰結として3項になるとは限りません。

1.2.を全員が認めるのであれば、
どういう方法で税収増を図るのが、
公平であるのか、あるいは、
今後の日本がどんどん落ち込んでいかずに
明るい将来が描けるのかということになります。

法人増税は、日本の産業が競争力を失って
結果としてますます税収減の悪循環
になってしまいますからダメです。

消費税は公平だと言われますが、
国民全員が収入のすべてを消費するなら、
同じ率で負担することになるので公平と言えるでしょう。

ところがエンゲル係数の例を出すまでもなく、
低所得者ほど消費の比率が高いのです。

であれば、収入に対する消費税負担率は
低所得者ほど高いということになり、
公平ではありません。

ではどの税が公平なのか、ということになります。
その候補に挙げられているのが、
遺産相続税、資産課税、所得税です。
お金持ちに多く出していただこうというのは
負担能力という面からの公平です。

お金持ちに多く出していただくことに対して、
必死であるいは一所懸命働いた人から
その成果を分捕るのはどうか、
働く意欲が低下してしまう、という意見があります。

私は、働いたのはその人かもしれませんが、
得たのは社会からなのですから、
社会にお返しをしたってよいのではないか、
と考えてほしいと思います。

この議論が十分なされていないのは、
政治従事者がお金持ちの反対を恐れるからです。
お金持ちはいろいろな組織を使って反対します。
それに勝てる自信がないのです。

このあたりから、総理大臣を直接選挙制にすべきだ、
選挙の支持者の顔色を見る議員に選ばれる総裁では
思い切ったことができない、
現に橋下大阪市長が強いのは議会の代表ではなく、
市民の直接選挙で選ばれているからだ、
ということも言われ出しています。

日本の国がどういう国を目指すのか、
ということにも関係します。

そういう議論を避けて、
消費増税の是非を論じるのは短絡すぎます。
そういうことであれば、
1項・2項を認めても消費増税には反対すべきです。

以上の議論を目的・ねらい論で整理するとこうなります。

目的は、「国家財政の破たんを救う」ということです。

そのねらいは、
国民が日本の将来に不安を抱かずに
生活できる、働ける、子供を育てる、ことができる、
そうして日本が誇れる国として存在し続ける、
ということでしょう。

消費増税は、
上記の目的・ねらいを達成するための手段です。
手段と言うことは代案がありうるということになります。
消費増税でなくてもよいのです。


なお、波頭 亮氏は「成熟日本への進路」の中で
こういうことを述べられています。

 個人金融資産1400兆円に対して
 固定資産税並みの1.4%の資産課税で
 毎年20兆円が得られる。

 遺産相続に対する実効税率を50%にすると
 毎年14兆円が得られる。

 この合計金額は
 消費増税10%で期待する税収22兆円を上回ることになる。

この「成熟日本への進路」は
明快に今後の日本の進路を示唆しています。
あらためてご紹介したいと思います。

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