2012年3月31日土曜日

「日本人の価値観」 日本人は政治に関心高い?

【このテーマの目的・ねらい】
 目的:日本人の価値観について考えていただく
     日本人は政治に関心が強いのかどうか考えていただく
     統計調査の解釈の難しさについて考えていただく
 ねらい:今後の皆様の何らかの行動に活かしていだだく

「日本人の価値観」という本が日経新聞の読書欄で
紹介されていましたので読んでみました。

価値目標思考の提唱者としては、
逃せないタイトルです。

この本は、2012年1月に出たもの(著者は鈴木賢志氏)ですが、
調べてみると、以下のように類書があるのです。

「日本人の価値観・世界ランキング」 高橋徹氏著
「日本は世界で第何位?」 岡崎大五氏著

知らなかったのは甚だ不勉強でした。

これらの本の題材は、世界規模で実施されている
アンケート調査の結果数値の分析です。

したがって、数値をどう分析・解釈するかが
「ウリ」になります。

分析好きの私としては、
「その解釈は違うのではないの?」
という部分を見つけだしてご紹介したいと思います。

どちらの解釈が当っているかは皆様のご判断です。

本書の一説にこういうタイトルがあります。
「日本人は世界的にみて政治への関心が高い民族である」

私たちは
「日本人は政治に対する関心が低い」と考えがちですが、
実はそうではないのです、と書かれています。

その根拠として、
政治に関心のある人の割合が64%で世界8位である
国政選挙の投票率が69%で世界17位である
 (イギリスは65%、フランスは60%、アメリカは48%)
が挙がっています。

しかし、
関心があるかどうかは意識を聞いている調査であって
事実ではありません。
こういう設問では、どう答えたら良いかと考えて回答します。
重視していると答えた方がよい、
というバイアスがかかっている可能性があります。

伝統的な日本人の思考法は、
私の表現では「前例・みんな主義」です。

「前例・みんな主義」とは、こういうことです。

「農耕文化」「他国との孤立」による永年の思考の熟成の結果、
安定社会の継続を願っています。
その結果、その社会の秩序を乱さないように、
自分はどう考えるかの前に、
「前例はどうか」「みんなはどうしているか」と考えます。

「TPPのことを知っていますか」と聞かれると
知らないとまずい、と思えば知っている、と答えます。

そういう思考をうかがい知ることができるのは、
「関心がある」の内訳です。

本書では内訳を示していませんので、
前掲の高橋氏の著書でみますと
「非常に関心がある」と「やや関心がある」に分かれた
数字が示されています。

どの国でも後者の方が多いのですが、
合計のランキングで10位(調査年次が違います)の日本は
「非常に関心がある」のみのランキングでは16位で
相対的にあいまいな「やや関心がある」が多い
という結果になっているのです。
これは付和雷同的な回答者の存在を想定させるものです。

投票率は考え方を聞いているのではなく、
事実ですから、考え方の設問より客観性があります。
ですが、投票はすべきだ、棄権はいけないという
「みんな」の意見があれば、
「前例・みんな主義」の思考法の方は
政治を大事と思うかどうかは別にして投票するでしょう。

ということで、数字に表れているほどは、
日本人は政治に対する関心は高くないでしょう。

その証拠に、同じ項で
「政治的問題を友人とよく議論する人の割合」
が示されていますが、
「よくする」人の割合は日本人は7.4%で69カ国中で64位です。

鈴木氏はこの解釈として、
「みんなが政治に関心がない」と思っているから
友人と議論しないのではないか、としています。

そうでしょうか。

「前例・みんな主義」の日本社会では、
政治はお上(オカミ)に任せておけばよい、
という思考です。

つまり、
オカミは自分たちのことを考えてうまくやってくれるだろうから
任せておけばよい、余計な口出しをしなくてよい、
という考えなのですね。

本書の別項で、「政府・メディアに対する信頼感」
というのがあって、そこでは
「日本人は政府をあまり信用していない、
でも活字やテレビはとても信用する」
という数字と解釈が示されています。

活字は別として、
多くの国民はテレビをよく見ます。
報道番組も見ているでしょう。
報道番組で視聴率の取れる政治ネタは
多くの国民が見ることになります。

事業仕分けとか消費増税とかです。
政策ではなく政局ネタという面もあります。

多くの日本人の政治に対する考え方は
「信頼されている」マスコミが誘導しています。
マスコミは多くの国民に受け入れられる
(視聴率のとれる)題材を探します。

「政府を信用していない」ということも
マスコミからの情報です。
たしかに政府は力不足です。
ダメなネタはいくらでもあるでしょう。
ダメなネタの方が分かりやすくて受けもよいのです。

これがダメだ、あれがダメだ、という人に
ではどうすればよいのですか?と聞くと
ダメな逆を言うだけす。
「増税がダメだ」に対して「増税しない」です。

本来の意見は「増税しない」ではなく、
こうして財政再建すべきだ、でなくてはならないのに。

「ではどうすればよいのですか」
をマスコミに対して聞いても同じことでしょう。
大衆=マスコミなのですから。

「政府を信用しない」ことに戻れば、
どんな政府でも大衆(=多くの国民)は信用しないでしょう。
前掲のようにダメなネタは常にあるからです。

そのことと、オカミ頼みであることとは矛盾しません。
大衆は、
「なんとか誰かがうまくやってほしい」と思っているのです。
自らの責任を自覚して動こうという気はあまりありません。

それは、自由や責任を革命等によって勝ち取った国民と
長らくオカミ頼みで過ごしてきた国民の差で
かなり致命的なものでしょう。
ということで、
マスコミと国民多数派がキャッチボールをして
ドンドンかダンダンか
ある方向に世論を高めていっているのです。
その基は「前例・みんな主義」です。

高まった世論は何かの事件かきっかけがあると
目が覚めてご破算になりことも起きます。
これは日本人のバランス感覚と言われているものです。

いずれにしても、
日本人の政治そのものに対する関心度は
あまり高いとは言えないのでしょう。

ところで、そもそも、これらの議論の基になっている
数字は何かということです。

それは、世界価値観調査というもので、以下の内容です。
世界各国の研究機関が同一の調査票で
5年に1度実施する。
18歳以上の男女合計1000人程度が対象。

1000人程度ですから、
サンプリングの方法が非常に重要です。
特に思考法は年代によって大きく変わります。

私の言う「前例・みんな主義」は
若い世代にはほとんど保有されていないでしょう。
「前例・みんな主義」は戦前の文化に染まっている
高齢者の思考法なのです。

分析は、世代構成を考慮しないと
確実なことは言えません。
そうしないと
数字の独り歩き的な分析になってしまいます。

鈴木氏の分析も私の分析も、どちらが当っているか
何とも言えない、ということになります。
皆様の実感で合致するものを受け止めていただけば
よろしいのではないかと思います。

1 件のコメント:

  1. こんなに理路整然と持論を展開されるご貴殿に敬服です。
    大体において、このご意見に賛同します。
     ちょっと外れますが、日本に民主主義は根付いているか、と
    いうことを考えることがあります。江戸時代の農村は民主的で
    あったと聞いた記憶があります。庄屋や名主を中心に百姓たちが団結して、悪代官や圧政と戦ったといわれます。
     しかし、明治維新後は指導層=オカミに頼りきりだった、と
    いうのが実態でしょう。

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