2011年5月28日土曜日

柔よく剛を制す


5月24日の日経新聞に以下の記事が載っていました。

「ひょうたん島」 松 生き延びた
岩手県の蓬莱島
(ひょっこりひょうたん島のモデルなのだそうです)
に生えているアカマツが
奇跡的に津波を生き延び、復興のシンボルとして
注目を集めている。

中略

この島には、社と鳥居、灯台があった。
津波で鳥居と灯台は流され、陸と結ぶ堤防も
なくなったが、松は残った。

根元からポッキリ折れた灯台と残った松を含む
島全体の写真が載っていました。
高さ3~4メートルの2本の松は
比較的元気なのだそうです。

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同じく日経新聞ですが、
5月15日に「瓦礫の中の若木」というタイトルで
巌谷國士という方が
こういうことを書いておられました。
名文なのでそのままご紹介します。
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3月18日のテレビの画面に、
三陸のとある港町の映像が映った。

大津波におそわれて壊滅し、
いちめんに瓦礫の堆積する住宅地のなかを、
ひとりの高齢の女性がさまよっている。
行方不明になった幼い孫娘の写真をもって。

つい1週間前まで家のあったところへ来たが、
建物は跡形もない。
すさまじい残骸のあいだに、
1本の細い若木が見つかった。

ひょろりと垂直にのびているその若木は梅で、
あの大津波にも根こそぎにされなかったばかりか
折られもせず、厳寒のさなかに、
新芽と小さな蕾さえつけているように見えた。

中略

梅の苗は孫娘の産まれた記念に植えられたのだという。
今はこの世にいない彼女の身代わりのようにして、
若木は育っている。

もしかするとその後、
瓦礫の中で花を咲かせたかもしれない。
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感動的な内容です。
巌谷さんは仏文学者なのだそうです。
さすがですね。
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次に、5月22日の日経新聞ですが、
以下のような記事が出ていました。

現在の高層ビルは、耐震・免震構造になっていて、
ビル自体は地震に耐えられるが、
中の梁や天井などが外れるとか落ちる
とかの被害がある。
これに対して対策を取ろうということで、
建築業界で研究を始めている。

ご存じのように高層ビルは、
しっかり壊れないように固く作るのではなく、
地震の揺れを受け流すように作る柔構造が、
現在の主流です。
柳の木の原理です。

「ビルが倒れない」という目的を追求してできたのが、
柔構造です。
現在の要求は「倒れないだけでなく、内装が壊れない」
となったのです。

その目的を達成するように研究が行われているのです。
おそらく内装自身も柔構造にするしかないでしょう。

この目的が達成されたらどうなるでしょうか。
「船酔いのように気持ちが悪くなる揺れをやめてくれ」
とでもなるのでしょうか。

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翻って、福島原発です。
5月25日の朝日新聞に、
「第1原子炉の冷却給水用の配管が
地震で破損していた疑いが出てきた」
ことが報道されていました。

これが事実とすればこういうことでしょう。
「原子炉容器は頑丈に作ったが、
そこに繋ぐ配管は、
原子炉側の揺れを吸収できる柔構造
になっていなかった」


以上を通じて言えることは、
昔から言われる「柔よく剛を制す」です。
以下は余談です。

これで思い出すのは、
空手と合気道の違いです。

空手の基本的な攻撃は突きとか蹴りです。
言わば剛です。

これに対して、合気道は相手が攻めてくる力を利用して
相手を制します。
柔と言えるでしょう。
ですから女性でもできるのです。

私が学生の頃、空手・柔道・剣道の道場(練習場)に
一人で黙々と合気道の練習をしている
「薄汚い」男がいました。

空手部の仲間は「邪魔な奴だ。おかしな奴だ」
という目で見ていました。
この男が東大の合気道部の創始者である
亀井静香氏でした。

彼の政治的なスタンスは、
柔ではなく攻め込む剛のようです。
お得意の柔の要素をもう少し取り入れたら
よいのではないでしょうか。

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