2011年3月14日月曜日

「自由にお持ちください」

 (この記事は、大震災前に書いたものです)

 私ごとで恐縮ですが、
 今月我が家の1階に娘一家が引っ越してきました。
 
 この1階は、
 以前、家内のお母さん(義母)が住んでいましたが、
 17年前に亡くなってから
 多少手入れをして、子供たちの集会所や
 一族が集まる新年会の会場として使うくらいで
 ほぼ空き家状態だったのです。

 この1階のキッチンには、
 スペースがあるものですから、
 義母の時代からの食器類が大量に保管されていました。
 
 おそらく、
 お祝いや引き出物・志等でいただいたものなのでしょう。
 年に1度の新年会でその一部が使われましたが、
 まったく使われたことのないものも多数ありました。

 この食器類を片付けることになりました。
 
 お手伝いに来ていた隣の奥さんは
 捨てるのが大好きな人で
 その旦那と二人で片っ端からゴミ袋詰めしてしまいました。

 もったいないな、でも使わないなら仕方がない、と
 私は見守っていました。
 
 ところが翌朝思いつきました。
 「そうだ、道路に並べて
 『自由にお持ちください』と書いておけば
 持っていく人がいるかもしれない。
 ダメモトだ」

 そこで、早速出勤前、
 それらの食器を陳列しました。
 丁度、粗大ゴミで出そうと思っていた
 2段重ねの和ダンスがあったので、
 その上に並べたのです。

 その時の陳列状態は写真1,2をご覧ください。
 写真2の引き出しの中に多数の湯飲み茶わんが
 写っています。
 写真1


 写真2

 

 家族は、
 「そんなの持って行く人がいるわけない。
 時間のムダだ」
 と、極めて、極めて冷ややかでした。

 しかし、並べているそばから
 「何をしているのですか」と聞く人が続出し、
 その朝、並べ終わるまでに3人が
 お皿やコップを持って行ってくれました。
 
 楽しみにして仕事から帰ってくると
 半分以上が無くなっていました。
 これはだめだろう、と思っていた
 少し埃で汚れた大皿たちもありませんでした。
 
 そこで、予備として道路にじかに置いていたものを
 棚の上に置きました。

 そうして2日目帰宅してみると、
 ほとんどのものが無くなっていました。
 景品でもらったようなガラスコップ多数や灰皿数個も
 ひとつ残らず、です。
 今どき、灰皿を新規に入手する人がいるのは驚きです。
 
 近所の飲み屋さんに「要りませんか」
 と持って行ったら、
 「今頃は日本酒を飲む人はいないので」
 と断られた徳利とお猪口多数もありませんでした。
 誰が持っていくのでしょう。

 2日間合計で、
 200点以上を引きとっていただいたのです。
 私は、良いことをした、という満足感で一杯でした。

 すっかりなくなった状態の写真3.4をご覧ください。
 写真3

 
 写真4

 

 残されたものが、なぜなのかは不明です。
 1枚ものは他にもありましたし。
 好みや考え方なのでしょうね。
 価値観の多様化時代を実感できました。

 私たち世代は
 「もったいない」という価値観を強く持っています。
 その次の世代人は
 「要らない」という価値観が強いのです。
 
 でも今は、
 ものを大事にするエコの時代になったのです。
 使えるものをどんどん捨てるのはいけません。

 省資源時代のキーワードは3Rなのですって。
  Reduce:使うのや捨てるのを減らす。
  Reuse:再利用、今回のがそれです。
  Recycle:再資源化

 「目的・ねらい」論でこのことを考えてみましょう。

 「食器を片づける」は「目的」です。
 「捨てるため」か「リサイクルするため」かは
 「ねらい」です。

 「捨てるための片づけ」であれば、
 割れてもかまわずに袋に放り込めばよいのです。
 
 しかし今回は
 片づける人が「割れると怪我をする」と言って
 一つずつ丁寧に紙でくるんでいました。
 そのために、片づける過程で割れたものは
 一つもありませんでした。
 捨てる目的からすると過剰品質です。

 したがって、捨てるつもりの片づけが
 リサイクルのための片付けに転用できたのです。
 結果としては、非常に良いことにつながりました。

 これがビジネスであれば、
 捨てる目的での片づけなら
 丁寧に包むなどということはありえないでしょう。

 「ねらい」によって、
 「目的」のあり方は変わるという一例でした。 

 【3月27日追記】
 その後、味をしめて、
 不用品を同じように並べました。

 引きとっていただけたものは、以下のとおりでした。

 プラスチック製の衣装箱 5個
 上掲写真和ダンス・開き戸の中の桐製の引き出し
                            4枚
 テーブル(和室用) 1台
 傘 男物4本、
    女物日傘2本(家内の母が使っていた古いもの)
            変色していたもの1本はさすがに残りました。
 金属製の本立てのようなもの 3点

 わが方にとっては、粗大ごみの引き取り料
 (衣装箱は1個200円なので、5個で1000円です) 
 が助かった上に、ものを捨てないで
 どなたかに使っていただけるのですから
 たいへん嬉しいことです。
 
 

2 件のコメント:

匿名 さんのコメント...

:「上野則男メルマガ」4月号への返信

 今年の独遊会では貴兄と語る機会があまりなく、文字通り残念でしたが、その代り30頁に及ぶ上記4月号をもらったので、補いはつきました。同意見、同感のところ少なからず、例えば、次のごとし。
・前原辞任―必要なし。民主党もだらしないが、過去50年の
自民党支配の体質と方法はあまり好まない。
・帰宅難民―3月11日は、小生も本郷のビルで地震に会い、丸
の内まで5kmを歩いて帰り、17階まで歩いて昇る。電気系
統、暖房、上下水道に支障なかったので、その夜は泊ま
り、翌朝は地下鉄とバスで帰る。この体験から耐震設計、
施工のビルは強い、家具の転倒防止の措置があれば、やた らに 外へ飛び出さない。屋内は雨、風、寒さをしのげる、 少しでも体をやすませられる、レールの交通機関が止まっ ているときに中に居る人々を退去させたり、帰宅させるこ とは疑問。幼児や小児をつれた女の人も大変だった。地震
 のときの避難の仕方を社会的システムを検討すべし(慣行 でよい)。
・原発事故―震災直後、電灯も信号もついて、生活に不便がな
かったので、これで復旧は早いかもしれないと思った。地
震・津波は天災だが、原発事故は人災。下司のあと智恵で
 すが、補助電源の確保、維持が粗末。やりようでは想定外
 の地震でも耐えられた(地震そのものによる建物、設備の
 損傷はほとんどない)。原子力安全委員長の別の訴訟での 「割切りです」との発言は「認識ある過失」を認めたもの
 ではないか。ここがしっかりしていたら、水掛け騒ぎと
 か、放射能洩れとそれによる避難民も少なく、電力供給に
 よる産業の回復はもっと早いでしょう。
・不用品の措置―私も同感。昔から考えていたが実行力がとも
 なわなかっただけ。米国では、garage sale(タダでも)
 は当り前のこと、教会などが中古品をもらい、安い値の受
 取証を渡し、所得税の確定申告のときの所得控除にしてい
 たところもあると聞いていた。英国ではOXFAMその他が中古
 品をもらい、volunteerの人達が勝手に加工して、店で
 堂々と売っていた(うちの娘も古本の値段などつけてい
 た)。これらのことも社会的システムとして作るとよい。
 場当たりの善意と努力だけでは限りはある。

「上野則男メルマガ」は読んでいないこともありますが、読むときもあり、とにかく継続して下さい。
                  
                   草々
                     高桑 昭

上野 則男 さんのコメント...

高桑さん
コメントありがとうございました。
内容が多岐に亘っていたのですが、
私が最も嬉しかったこのテーマに入れさせていただきました。
外国の情報が分かり有益でした。
本当にこのような考え方を、これからますます大事にしないといけませんね。