牛丼チェーンのゼンショー(すき家)、吉野家、松屋
3社は、低価格競争をしながら、
10年4~12月期でいずれも増益となっています。
ご存じですか?
牛丼チェーンの元祖吉野家は、売上高で、
ゼンショーに2倍以上の水を開けられているのですよ。
(10年4~12月で、2792億円対1290億円)
逆転のきっかけは、約10年前の
狂牛病発生に伴う米国産牛肉の輸入禁止でした。
吉野家は従来からの輸入チャネルの牛肉でないと、
牛丼の味が維持できないとして
牛肉在庫切れと共に牛丼の提供を中止しました。
他の牛丼チェーンはオーストラリア等に輸入先を切り替えて
牛丼を提供し、吉野家の牙城を突き破ったのです。
吉野家の安部社長のこだわりは
吉野家ファンにとっては納得のいくものだったのでしょうが、
単なる牛丼ファンにとっては
そこまでのこだわりはなかったのでしょう。
吉野家の現在のモットーは
「うまい、やすい、はやい」です。
たしか創業時は「早い、安い、うまい」だったのです。
「うまい」はそれほど売りでなかったのですが、
いつのころからか「うまい」で勝負するようになったのです。
「うまい」での勝負は、商品の競争として本命です。
しかし、消費者は多様です。
もしこのまま、吉野家が敗退することになれば、
「吉野家は、自社の商品にこだわり過ぎて
価値観の多様化時代に対応できなかった」
ということになるのでしょう。
吉野家も低価格競争に参戦するために、
280円の牛鍋丼を出しています。
これは、牛肉の量を減らして豆腐やしらたき等を入れて
コストダウンをしているメニュです。
結構、集客力を持っているようです。
あくまで、現状のコスト構造の上で
コスト割れは起こさない、という方針が見え見えです。
すき家の作戦は違います。
低価格メニュを集客に使って
セットメニュや他のメニュで採算を取ろう、
という作戦です。
最近、
小伝馬町の当社の近くに「すき家」が出店しました。
私も何回か「視察」で食べにいきました。
分かったことがいくつかあります。
1. メニュが豊富です。
何を食べようかと楽しみになります。
組み合わせを含めると優に100種類を超えます。
2. 基本の牛丼は280円ですが、
セットメニュや他の商品売り込みで
客単価増に必死です。
280円の牛丼を食べに来たお客様に
もっと高い商品を売り込んで客単価増を狙うのです。
私の3回の客単価は平均500円でした。
3. 牛丼の味は吉野家の方が上です。
これは好みですから絶対的な基準はないでしょう。
たれも煮込みの程度もやはり本家が上と思いました。
ところで、すき屋は目下、牛丼にだし汁をかけて食べる
「牛まぶし」を盛んに宣伝しています。
これも客単価アップ作戦の一環で
このメニュは480円です。
乗せられて食べてみました。
なかなかの味でした。
しかし、気に入らないことがありました。
「さらさらと食べる」といううたい文句ですが、
ドンブリのヘリが反り返っているものを使っているので、
うまく口に咥えられません。
テレビのCMではレンゲを使って食べているようですが、
これでは「さらさら」になりません。
メニュ開発者は
料理を食べて「これはいける」と
GOサインを出したのでしょうが、
食器との組み合わせはどの段階で誰が決めたのでしょう?
「サラサラと食べられるかどうか食べてみろ!」
と言いたいです。
美味しく食べるという目的の追求が不十分なのです。
トヨタが米国で起こしたアクセルペダルとフロアマットの
不適合によるリコール事件と同じことです。
全体設計者が必要なのです。
吉野家に話を戻します。
当社で勧めている価値目標思考では、
何かを実現しようとする時の目標である
価値目標の基本は「早い、うまい、安い」
だと言っています。
現在の社会の激動・流動時代には、
とにかく「早く」ないと、競争の土俵に上がれません。
それからお客様の好みに合う「うまい」です。
そうして、同じものなら「安い」のがよい、
という意味です。
この「早い、うまい、安い」は
英語では、QCD(Quality、Cost、Delivery)ですが、
吉野家に習ってこうしたのです。
吉野家も時代に合わせて、
3者の順番を変えているようです。
ついでに近くの松屋にも行ってみました。
なんと、松屋は事前にチケットを買う方式なのです。
これだと、吉野家がやっている追っかけ注文
(「これも追加してみようかな」と頼む)は
期待できません。
チケット販売機の制約上、
メニュが固定的になりやすいでしょうし。
この松屋、結構健闘しているということです。
量は多いようでしたが、何が売りなのか。
よく分かりませんでした。
こうして、すき屋、松屋と比較すると、
吉野家の店は元気さが足りない、
明るくない印象です。なぜでしょうか。
牛丼競争の行く末はたいへん興味があります。
本家吉野家さんに頑張っていただきたいものです。
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