2024年2月22日木曜日

「世にもあいまいなことばの秘密」

【このテーマの目的・ねらい】
目的:
 誤解されやすい言葉の例を確認していただきます。
ねらい:
 もっと多くの例を知りたい方は、本書をご参照ください。
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本項は、言語学の専門家川添愛津田塾大学准教授著の
「世にもあいまいなことばの秘密」のご紹介です。
日経新聞の書評欄に以下の紹介がありました。

因みに。「世にもあいまいな」は、おそらく出版社がつけたもので、
そんなに驚くほどのことではありません。

「まだ署名やっているよ」という文は、書名を呼びかけているのか、
署名活動を揶揄しているのか、文言だけでは分からない。
対話アプリやSNSのように、
画面上の短文だけでやりとりすることが増えた今こそ、
送信・投稿前に一呼吸入れたい。

以下の表では、本書に示されているこの数倍の例文の中から
(たいへん良く集めています。人文科学者です)、
実際に間違えそうなものを抜き出しました。

これらの例につきましては、
文章を書く人は注意をすべきだと思われます。
他の例は、文脈の中でその真意が伝わるもので、
間違えられる心配はないものだと考えられます。

学者の立場からは、こういう解釈がありうるということで
掲載されていると思われます。
後掲の注1にあります「頭が赤い魚を食べる猫」の解釈は
現実にはあり得ないでしょう。

このような誤りを防ぐ方法について著者はこう言っています。
前掲の書評では「すぐに役立ちそうだ」と評価されています、
1.短い言葉に注意する。
 言葉を補うようにする。
 「20歳未満ではありませんか」に対して「はい」はどちらか不明。
 「はい、20歳未満です」「はい、20歳未満ではありません」
 「スプーンを持ってきて」に対して「何するスプーン」かを言う。
2.言いたいことを予測してもらう
 結論を先に言う。
 「しかし」「たとえば」などの接続詞で予想させる。
3.文脈の影響を考慮する
 話題を変える場合には、そのことを明示する表現をとる。
 「ところで」昼飯どうする?のように。

4.第3者の目を入れる
 重要な文書の場合はそうする。
 自分で読み返すだけでも効果がある。
5.相手の立場を考える。
 これが基本です。










本書におけるあいまいなことばの例示

1.文章での曖昧さ

大人気

「だいにんき」か、「おとなげ」か

人気がない

「にんき」か、「ひとけ」か

今年金いくらもらえるか

「いまねんきん」か、「ことしかね」か

2.曖昧なことば

OKです

了解か遠慮・辞退か

結構です

同上

大丈夫です

同上 若い人たちは辞退の場合に使っている。間違えやすい。

微妙

良くない場合にも使う。

止められますか?

受け身、尊敬、可能、自発の意味がある。

3.普通名詞の曖昧さ

先生が変わった

先生が交代したのか、変身したのか

お酒を控えて

日本酒を指すか、アルコール全般を指すか

4.修飾語と名詞の関係

私には双子の妹がいます

自分と双子である妹か、双子の妹か

誰の絵ですか?

絵の所有者を聞いているか、絵に描かれた人を聞いているか

○○氏の名誉棄損

○○氏が起こした名誉棄損か、○○氏が侵された名誉棄損か

5.構造的な曖昧さ

有名な女性の肖像画

有名なのは女性か肖像画か

年賀状を送った人

年賀状送りをした人か、年賀状の送り先の人か

頭が赤い魚を食べる猫

頭が赤いのは魚か猫か。「頭」を主語にする解釈もありうる。注1

太郎が好きな人が多い場所

「太郎が」が主語の場合で、好きの相手が人と場所がありうる。「太郎が」が「太郎を」の解釈もありうる。注2

6.やっかいな並列

2日、5日、8日の午後が空いています

8日だけ午後なのか,他の日も午後なのか

桜井さんと相場さんが結婚した

桜井さんも相場さんも結婚したのか、桜井さんが相場さんと結婚したのか

7.否定文・疑問文の曖昧さ

20歳未満ではありませんか

20歳未満ではないと思って聞いているのか、20歳未満なのではないかと疑って聞いているのか

すぐに走って逃げてクマを興奮させない

「すぐに走って逃げて」は「クマを興奮させない」と並列なのか、クマを興奮させるの原因を指しているのか

7割以上の問題に正解できなかった場合

正解が7割以上の問題なのか、正解できないが7割以上なのか

8.代名詞の曖昧さ

自分はそれですね

「それ」がどこまでのことを表わしているか不明である。

9.言外の意味と不明確性

お風呂に入らない子はだあれ?

入りなさい、と促している。

なるべく早く

真意は、「なるべく」ではなく「早く」である。


注1




上は頭が猫で、赤い魚を食べています。
下も頭が赤い猫で、魚を食べています。


















注2

上は、「太郎を好き」を示しています。

中は、太郎が好きな「場所」を示しています。

下は、「太郎が好きな人」のいる場所を示しています。

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