2023年5月23日火曜日

「DXはじめの一歩と成功への道筋」が出ます!!

【このテーマの目的・ねらい】
目的:
 本邦初のDX成功要因の調査に基づく
 「DX成功ガイド」をご紹介します。
 「満足度向上」「利便性向上」についてご理解いただきます。
 「デジタルリテラシー」の日本の現状をご理解いただきます。
ねらい:
 ぜひ、本書を必要とされる方にご紹介ください。
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成功事例54件の調査に基づく「DX成功ガイド」
「DXはじめの一歩と成功への道筋」


この書籍が6月1日に「公益社団法人日本情報化協会(通称IT協会)から刊行されます。
著者は、上野則男とIT協会の共著です。
上野としては、久々の著作で出版まで半年をかけました。

本項は、この書籍のご紹介です。

この出版の意図は、本書にこう書かれています。
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[当ガイドブックの発行目的]
・当ガイドブックは、「はじめに」の冒頭で述べましたように、
 「DX成功事例の調査に基づいて、DX成功の基本条件をガイド」し
 「このガイドを受けてDXを進めていただくことによって、
 DXの目的である「事業競争力の強化」を実現していただく」
 ことです。

・特に、前掲の「(2)日本におけるDXの進展状況」
 で確認しましたように、まだDX未着手である多くの法人が、
 DX成功の手がかりを得ていただくことを期待しています。

・そのための基本ガイドが、「第1章 DX成功の道しるべ」の
 「1.DX成功のスタート」です。
 ここでは、まずまともなDXが始められる条件を提示しています。
 その第1番はトップの陣頭指揮です。

・ DX検討のスタート段階で念頭に置くべき留意事項、
 あるいはすでにDXを始めておられる法人が考慮すべき事項は、
 第1章の「2.DX成功のための検討ガイド(各論)」です。

・このガイドブックは、
 経済産業省またはIT協会から表彰を受けたDX成功企業に対する
 独自のアンケート調査を分析した結果得られた教訓が
 基礎になっています。
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このアンケートにご回答いただいた代表的企業は、以下のとおりです。
(順不同、略称です)
日本航空、全日空、JR東日本、
東京海上、三井住友海上、
イーデザイン損保、日本生命、オリックス生命、明治安田生命、
大同生命、東京ガス、フジテック、横河電機、リコー、ダイキン、
日本電気、味の素、コカ・コーラ、AGC、楽天、セブン銀行

以下の構成でこのガイドブックの内容をご紹介します。

Ⅰ.DXとは

Ⅱ.DX成功の3大要因
1.トップのリーダシップ
2.的確なDX実現目的(検討テーマ)の選定
3.適切な推進組織の設定

Ⅲ.意義ある調査結果
1.基本アイディアの源泉                      
2.活用技術の内容                     
3.既存システム対応 
4.デジタルリテラシー

Ⅰ.DXとは
本書ではこのような解説がされています。
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(1)DXとは
経済産業省は、2018年発行の「DX推進ガイドライン」では、
 DXを以下のように定義しています。

 企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、
 データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に、
 製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、
 業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、
 競争上の優位性を確立すること。

・端的に言えば、
 「ビジネスのデジタル化により事業競争力を強化する」
 となります。

(2)日本におけるDXの進展状況
1)2020年12月28日に経産省が発表しました
「デジタルトランスフォーメーションの加速に向けた研究会の中間ガイドブック」
ではこう述べられています。

「約500社におけるDX推進への取組状況を分析した結果、
実に全体の9割以上の企業がDXにまったく取り組めていない(DX未着手企業)レベルか、散発的な実施に留まっている(DX途上企業)状況であることが明らかになった。」と報告され、
「我が国企業全体におけるDXへの取組は全く不十分なレベルにあると認識せざるを得ない。」
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以上を前提に本書が展開されています。

Ⅱ.DX成功の3大要因
それは以下のように解説されています。

成功要因1.トップのリーダシップ
これは一般にも言われていることです。
DXのねらいが事業競争力の強化なのですから、
それに責任のあるトップがDXも主導するのは当然なのです。
トップとは社長とは限らず、大企業の事業部門長を含みます。
アンケート結果でも、こうなっています。

 トップ自らが陣頭指揮した案件が 31%
 トップがDX推進の必要性を常時主張している案件が 72%

ップがリーダシップを発揮された結果は、
以下のように好影響が実現しているのです。

)推進組織メンバが「もっともふさわしいメンバばかり集まっている」比率はこうなっています。明らかな差があります。
  トップ主導の案件の場合 65%
  部長主導案件の場合   49%
  それ以外の場合                4%
2)「トップがDX推進の必要性を常時主張している」場合の部長の参画度はそうでない場合に比べて以下のように大きく違っています。
  案件の主導 4倍以上
  推進組織の編成、予算の確保、根回し・調整、推進組織の鼓舞 
        いずれも3倍前後

成功要因2.的確なDX実現目的(検討テーマ)の選定
DXで何をするのか、です。
何が、当社の「事業競争力強化」につながるのか?
を検討することです。
事業競争力の強化は、
ビジネスの「短納期、高品質、低コスト」を実現することで
達成できます。

𠮷野家が言い始めた「早い、うまい、安い」です。この中で、
「早い」と「安い」は定量的尺度ですから分かりやすいのですが、
「うまい」はお客様が感じることなので難しいのです。
本書では、
主にお客様の「満足度向上」と「利便性向上」に焦点を当てて
検討することを勧めています。

「満足度向上」については以下の解説があります。

・ここでの「満足度向上」は、当社の製品・サービスに対する不満をなくす、というレベルではなく、お客様に「楽しい」「嬉しい」「ありがたい」「すごい」という気持ちを持っていただけることを言います。

当社の製品・サービスまたはその延長上で、お客様に「楽しい」「嬉しい」「ありがたい」「すごい」と思っていただけることはあるだろうか。と検討します。

・ 今回の調査結果では、以下のような「満足度向上」の9事例がありました。

対象業務

満足の内容

満足の種類

テニスレッスン

ラケット装着センサーと自分の映像を基にコーチの指導を受ける。上達が納得できる。

楽しい

嬉しい

航空機乗客のフォロー

個々の乗客の全情報と飛行状態とを組み合わせて、タイムリーに乗客をフォローする。

すごい

レシピ案内

個人のニーズに合った献立を提供する。

ありがたい

日常生活分析

個人の各種の移動データを把握解析し、健康に結びつけるアドバイスを提供する。

すごい

ありがたい

コインランドリー利用

空き状態や進行状態をスマホで知ることができる。

ありがたい

無店舗銀行の問い合わせ対応業務

問い合わせ内容の解析により的確な自動応答を実現し待ち時間もない。

嬉しい

ECにおける商品推奨

非常に多くの利用者の購買情報のAIによる解析から、個人に合った商品を推奨する。

すごい

使用エアコンの問い合わせ・修理依頼対応

対応方法に各種の工夫・改善を行って、待ち時間レスでの応答を可能とした。

嬉しい

団体生保サービス

保険加入申込者は、スマホの処理だけで(非対面で)手続きができる。営業担当も加入者も大幅な労力削減が可能となった。

ありがたい



「利便性向上」については以下の解説があります。 

・「利便性向上」に該当するのは、端的に言うと「今までできなかったことができるようになる」または「面倒なことをしないですむ」ということです。「多少楽になった」レベルのものは含みません。

・ そこで、この観点からの検討は、「当社の提供製品・サービスで、お客様にとって面倒なこと、厄介なことは何だろう?」「それをなくすことはできないだろうか?」と考えることです。

・ 今回の調査結果では、以下のような「利便性向上」の例がありました。 

対象業務

便利になった点

部品・資材供給

納品先に「ストッカー」を設置し、「富山の薬売り」方式で補給する。

納品先は、いちいち発注しないですむ。

新幹線

チケットなしで利用可能とした。

自動改札機の処理はソフトで対応している。

現金受け取りサービス

銀行に口座がなくても受け取れるようにした

生保サービス

5万人の営業職員がタブレットを持ち、その画面でお客様とやりとりする。必要な情報・提案を瞬時に入手することができ、「検討してご提案します」が不要となる。

損保サービス

見積り・契約、事故対応、契約更新がスマホで完結する。安全運転サポートも行う。

団体生保サービス

保険加入申込者は、スマホの処理だけで(非対面で)手続きができる。営業担当も加入者も大幅な労力削減が可能となった。

 このように成功事例では、的確なテーマ選定がなされています。

実現目的には次の3領域があり、
アンケート結果(複数回答)の実施率ではこうなっています。
 
  お客様サービスの向上     74%
  お客様への新サービスの開発  59%
  自社業務の効率化・高度化   61%

お客様サービスの向上が最も身近で取り組みやすい領域です。
生産資材を「富山の置き薬」方式で供給する方式や、
新幹線のチケットレス化などは分かりやすい例です。

お客様への新サービスの開発としては、
 コンビニでの現金受け取りサービス
 スマホで完結する保険契約
などお客様の立場で考えたサービスが中心です

自社業務の効率化・高度化は、多くの場合、
お客様対応の結果で実現しているのですが、
単独でこれを実現した案件も少数ありました。
プラントの自動運転や生産の自動化です。

成功要因3.適切な推進組織の設定
検討テーマが決まりましたらそのテーマに合った人選で
推進組織を編成する必要があります。
DX推進組織が既存の場合に、その組織が適任とは限りません。
アンケート結果ではこうなっています。

A

DX推進専門組織が進めた

22%

B

DX推進プロジェクトチームが進めた(専任メンバーあり)

17%

C

DX推進プロジェクトチームが進めた(専任メンバーなし)

2%

D

このテーマ用のプロジェクトチームが進めた(専任メンバーあり)

39%

E

このテーマ用のプロジェクトチームが進めた(専任メンバーなし)

20%


DX推進専門組織が進めた」は22%しかなく、
 「DX推進プロジェクトチームが進めた」 も19% で
「このテーマ用のプロジェクトチームが進めた」 が59%なのです。
既存組織はこのテーマのために作られたものではないでしょうから、
こういう結果になるのです。

注目すべきは、この59%のうち、
「専任メンバーなし」が20%もあるのです。
優れた適任のメンバーを専任で集めることは困難ですから、
専任かどうかよりも適任かどうかを優先しているのです。
現実的な選択だと思われます。
メンバー選定で考慮すべき重要な判断基準であると思われます。

Ⅲ.意義ある調査結果
アンケート調査では以下の項目について調査しています。
その中で、意義あるユニークな結果をご紹介します。
1.DX実現目的                       
2.保有機能                        
3.基本アイディア                      
4.活用技術                         
5.トップのリーダーシップ                  
6.部長の参画                        
7.推進組織の対応                      
8.現場の巻き込み                      
9.既存システム対応 
10. デジタルリテラシー

1.基本アイディアの由来
対象DX案件の中核を成す仕掛けのアイディアは
どこから生まれましたか?という設問の回答です。
具体的な仕掛けの内容ではなく
そのヒントをどこから得ましたか?の質問なのです。
その回答はこうなっています。 

自分たちで考えた

76%

海外の同業他社事例を参考にした

7%

国内の同業他社事例を参考にした

4%

国内外の他産業の事例を参考にした

9%


回答者は「自分たちで考えた」と言いたいでしょう。
この設問は、単一選択にしたのが誤りでした。
複数選択にすれば、
もっと「参考にした」が多かったのではないかと思われます。

本書の校正段階で、アンケート回答者に確認しましたら、
「参考にした」回答の修正がありました。
「自分たちで考えた」への変更でした。その気持は分かります。

2.活用技術の内容
アンケート回答はこうなっています。

1

スマホ、タブレット

72%

2

ビッグデータ、データマイニング技術

72%

3

一般的IT

72%

4

AI

69%

5

センサ、IoT

52%

6

SNS、インターネット

39%

7

GPS、ドローン

24%

8

ロボット、3Dプリンター

20%

9

ウェアラブル端末

13%

 
AIやビッグデータ分析が多いことは当然として、
IoTが多いこと、GPS、ドローン、ロボット、ウェアラブル端末が
案外多いことも注目に値します。

複数利用技術の案件も多く、
その最多は、9種類で2件も該当がありました。

3.既存システム対応 
既存ITシステムとの連携がどうなっているかの調査です。

A

完全に独立している

24%

B

ほとんど独立している

11%

C

若干関連している

6%

D

かなり関連している

30%

E

密接に関連している

30%













既存システムに頼らない場合が24%あるということです。

既存システムとの関連がある場合の対応方法はこうなっています。

A

既存システムを作り替えた

17%

B

既存システムに手を入れた

28%

C

既存システムとの連携機能を開発した

46%

D

既存システムとはAPIで連携した

43%

かなりの比率で既存システムに手を入れています。

既存システムに手を入れた場合の、後掲のデジタルリテラシー調査の
データの全社共有基盤の有無との関連を見ると以下の状況でした。

既存システム対応

データ全社共有基盤あり

データ全社共有基盤なし

既存システムを作り替えた

25%

16%

既存システムに手を入れた

50%

28%

既存システムとの連携機能を開発した

63%

56%

既存システムとはAPIで連携した

63%

52%


これについて本書ではこういう解説がされています。
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【データの全社共有基盤の有無の影響の状況】
・これによると、「データ全社共有基盤あり」の場合は、
 既存システムとの関係がかなりあるものが多いのですが、
 その中で既存システムに手を入れている場合が半数あります。

・データの共有基盤があれば、
 既存システムに手を入れるのも容易であることが示されています。

・逆に、「データ全社共有基盤なし」の場合は、
 「あり」の場合には1件しかない「既存システムとの関係なし」の案件
 が、かなりの高率で存在しています(32%)。
・「データ全社共有基盤なし」の場合は、
 そういう方向で検討せざるを得ないということが想定されます。

・いずれにしても、
デジタル化に対して
 「全社データ共有基盤」の有無が大きな影響を与えていることが
 確認できます。
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4.デジタルリテラシー
これに関しては、本書で以下の解説があります。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
・「デジタルリテラシー」は、
 「デジタル技術を理解して適切に活用するスキル」
 であるとされています。

・本書の観点からは、
 「ビジネスのデジタル化を成功させる能力」であり、
   調査対象案件の関係者はデジタルリテラシーが高いと言えます。

・このデジタルリテラシー項目を以下のように分類整理してみました。
 【デジタルリテラシーの状況】

区分

項目

達成状況


ビジネス
リテラシー

経営はDX重視を鮮明にしている

65%

組織風土としてチャレンジ精神や共働が重視されている

65%

ビジネスの実施方法の革新が進んでいる

54%

業務の遂行方法がかなり変化してきている

46&

システム
リテラシー

データの全社共有基盤ができている

31%

システムが要求対応によって弾力的に改変されている

24%

ヒューマン
リテラシー

人材活用は脱「年功序列型」が進んでいる

7%

人材教育が進んでいる   (今回調査対象外)



・これを見ますと、 
 組織風土や経営マインドなどの「ビジネスリテラシ―」
 は高得点ですが、
 データ基盤の整備やシステム改変の弾力性など、
 既存システムに関する「システムリテラシー」
 は低得点です。

・さらに、ビジネスリテラシーやシステムリテラシーを生み出す
 人的資源活用の「ヒューマンリテラシー」は極めて「低得点」です。

・今回は調査対象外でしたが「ヒューマンリテラシー」の
 人材教育、特にDX関係の社員研修は、
 おそらく今回の対象企業殿では半数以上が、
 一般の企業でもその1-2割は
 何らかの研修ないし啓蒙活動を実施されていると見込まれます。
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ですが、この状態は遅れている状況を取り戻すために
研修を始めている段階で、
とても「進んでいる状況」とは言えないのではないでしょうか。
日本のDXが遅れている大きな原因は、
やはり「ヒューマンリテラシー」の低さにありそうです。

2 件のコメント:

匿名 さんのコメント...

大きな課題にも関わらず、短時日のうちに要領よくまとめ、的確な指針を提示されたこと、評価したいと思います。今後さらなる素晴らしい成功例が陸続と出現するのを楽しみにしています。

上野 則男 さんのコメント...

匿名さん
ご評価ありがとうございます。
短時日と仰いますが、1年がかりだったのです。
けっこう大変でした。

確かに、続編を期待したいですね。
(この本がヒットしたら、ですね)
ご支援,よろしくお願いします!!上野