2021年5月31日月曜日

日本で必要なのはジョブ型雇用ではなくジョブ型処遇です!!

【このテーマの目的・ねらい】
目的:
 日本に必要なのは「ジョブ型雇用」ではなく、
 「ジョブ型処遇」であることを確認いただきます。
 「ジョブ型処遇」実現のための課題を確認いたします。
ねらい:
 日本の産業競争力強化のために
 「ジョブ型処遇」の早期浸透を期待しましょう。
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「日本の雇用形態はメンバーシップ型であるが、
これからはジョブ型に切り替えないと世界で競争できない」
などと言われ「ジョブ型雇用」が「流行り言葉」になっています。

私が、それらの論調や紹介されている「ジョブ型雇用」先進企業の事例
を分析したところでは、
日本の多くの企業で必要としているのは、
「ジョブ型雇用」ではなく「ジョブ型処遇」であることが判明しました。
以下は問題点連関図によるその分析です。


小さくて読めないと思いますので、主要な論点をご説明いたします。
1.「メンバーシップ型雇用」の問題点
 日本の従来型雇用形態は以下の点が問題であるとされています。
 1)担当職務に関する責任権限が明確でない。
 2)担当職務に対する責任権限の大きさと処遇の関係が明確でない。
 3)本人の希望が担当職務に結びつきにくい。
 4)本人の意に副わない職務配置が起きる。
 5)個性ある社員がその能力を発揮しにくい。

2.「ジョブ型雇用」の利点
 これに対して「ジョブ型雇用」は、
 以下の利点があるとされています。
(1)個人として
   個性を活かしたジョブを担当できる。
   ジョブに適した能力を発揮して高い報酬を得ることができる。
(2)企業として
   デジタル化人材など新しい職種の人材を採用できる。
   人材の適材適所が促進できる。
(3)国として
   労働市場の流動化によって、
   成長性のある産業に人材が移動できる。

3.「ジョブ型雇用」の問題点
 かたや日本では、終身雇用を前提として社会が存在していて、
 「ジョブ型雇用」の実現には以下の障害があります。
 1)解雇された人員に対するセーフティネットが不十分である。
    再雇用のための教育制度、再雇用促進制度等。
 2)経営として解雇に対する抵抗感・責任感が強く、
   弾力的に採用・解雇を行うことができない。

4.「ジョブ型処遇」の実現
 そこで、弾力的採用・解雇を前提としないで、
 メンバーシップ型雇用の問題点を解決する人事制度の実現が
 日本の国情に合致した雇用形態として期待されます。

 これは「ジョブ型雇用」ではなく「ジョブ型処遇」の実現であり、
 以下のような内容で多くの先進企業で移行中の方法です。

 1)担当職務(ジョブ)の責任権限を明確にする。
 2)ジョブに対する必要能力を明示する。
 3)ジョブの処遇を明示する。
   1)~3)を記述するものがジョブ定義書と称されています。
   先進企業でも2)の必要能力明示は進行中です。
 4)ジョブの選択に際し、
   要求能力充足を前提に本人の希望を重視する。
 5)デジタル化人材等新たなジョブが必要となった場合は、
   ジョブ定義書を作成の上、社内に対しても公募を行う。
 6)採用は、順次職種別採用としていく。
 7)職種別採用者であっても、
   本人希望により社内での職種転換はありとする。
 8)社内では、いかようにもその人材の活用場面がない場合は、
   解雇を行う。
   (高給とりの窓際族「Windows2000」はいなくなります)

5.「ジョブ型処遇」実現のための対策
 「ジョブ型処遇」制度が有効に機能するためには、
 以下の対策が必要です。

(1)ジョブ定義書の作成
 1)ジョブ体系の設定
  日立では職種区分と階層区分のマトリクスで
  450種としています。
 2)ジョブに対する権限責任・必要能力・処遇の明確化
  これがジョブ定義書ですが、この作業は大仕事です。
  現場と人事の共同作業が必要です。
 3)ジョブ定義書の更新
  どんなに頑張っても完全なものはできません。
  いったん公開して、
  使用しながらレベルアップするのが現実的です。

(2)ジョブ定義書の社内公開
 各人が自分のビジネスライフプランを設定するために、
 ジョブ定義書の公開・周知は重要です。

(3)各人の職種適性の判定
 各人は、ジョブ体系で設定されている職種に対しては、
 希望的観点や経験からの志向だけでなく、
 適性面からも判断する必要があります。
 
 ジョブに対する適性は、能力発揮の重要な条件です。
 システム企画研修社の提供する適職診断ツールCATCHは、
 システム関係職種の適性判定に非常に有効です。

(4)採用方法の変更
 特別な人材の採用に際しては、職種限定採用を行います。
 中途採用も、職種限定採用とします。
 新卒採用は、順次、職種別採用に切り替えます。

 職種限定採用者であっても、社内での公募への応募や
 異動の希望はできるものとします。
 (したがって、厳密な職種限定採用ではありませんが、
 厳密な職種限定採用は意味がありません)

(5)国の制度の補強
 再教育・再雇用を促進するための助成の強化が必要です。
 これまでも、文部科学省管轄で
 「リカレント教育」「再チャレンジ支援」等の推進が
 行われてきています。
 この制度の中に、小学校の「理科支援員等配置事業」がありますが、
 このように具体的な職(ジョブ)に結びつく教育の充実が必要です。

 5月31日、政府が再雇用を促進するための教育を
 大々的に充実する旨の報道がされました。
 結構なことです。

 具体的なジョブに結びつく教育を実施するためには、
 まずどのようなジョブが再雇用可能かの調査から
 始める必要があります。
 この分析は、有識者が知恵を絞らなければなりません。

 ジョブが決まれば、それに必要な教育の設計は
 ある程度の有識者で可能です。

 ここでも、本人側の対応としては、適性判定が必要です。

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