2017年6月30日金曜日

「生産性」

【このテーマの目的・ねらい】
目的:
 生産性とは何かを再確認していただきます。
 生産性を上げるためにはインプットの削減(効率化)よりも
  成果(価値)の増大の方が重要であることを
                      再認識していただきます。
 成果の増大の例を確認していただきます。

ねらい:
 みんなで協力して日本のビジネスの生産性を上げましょう!!

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この書名はマッキンゼー社で活躍された伊賀泰代さんのものです。
ダイヤモンド社の出版なのですが、
よくこんなそっけない書名を付けたものだと感心します。




しかし、内容はなかなか立派なものです。
基本的なスタンスは、以下です。
私も同感です。


生産性の定義=アウトプット(成果)÷インプット(投入資源) である。
しかし、
ややもすると生産性の改善=インプットの削減が中心になっている。
これは効率化と言われるもので、取り組みやすいが不十分である。

本来の生産性改善は、成果の増大を目指すべきである。


その分かりやすい例として、以下が解説されています。


1)会議の改善
 会議時間を削減する対策(1時間以内とする、立って会議をする、など)
 が流布しているが、
 会議の目的をどうすればより達成できる科の検討をすべきである。
 
 例:当日の達成目標を明確にする(何ができたらよいのか)
   資料は説明させない(資料は見れば分かる、
          説明を聞くより見る方が早く内容を把握できる)
   自分の意見を明確にする
   意思決定のロジックを決める
   全員がファシリテーションスキルを身につける
    (これは本来はそうあるべきでしょうがマッキンゼー社の場合です)


2)資料の作り方
  アウトプットイメージを持つ
  まずブランク資料を持つ、
  など、よいアドバイスがあります。
 
  ところが解説の中に以下のくだりがありました。
  「資料は1枚にしろ」というルールを見かけるが、
  これは必ずしも賛成しかねる。
  必要であれば、何枚かにすればよい。
  印刷コストなどしれたものである」
  
これは1枚主義の正しい目的を理解していない発言です。
1枚主義はこういう意図なのです。
  
「1枚にしようとすると内容を再吟味して、論理が明確になる。
あるいは図にするとなお論理が的確に整理される」
ということで、1枚にならない内容は未熟なのです。
  
これは真理です。

石川島播磨重工の社長、電電公社の総裁をされた
真藤恒さんの逸話で有名なものに
「自分宛の資料は1枚になっていないものは受け付けない」
というのがあります。

「電電ざっくばらん」という氏の著書に
そのこととその理由が書いてありました。

それはそうとして、
伊賀さんのマッキンゼー社での主な経験は
人事部門でしたので
その例がイントロとして紹介されています。

採用の生産性は、採用者の数がアウトプットなのではない。
要求水準を満たす採用者の数でなくてはならない。
それをなるべく少ない工数で実現するには
応募者にフィルタをかける必要がある。

以下のような条件を提示することで、
「ザコ」(これは上野の言葉です)を減らすことができる。

 体育会でしっかりリーダーシップを発揮してきた社員
 NPOや留学生支援にリーダーシップを発揮してきた社員
 研究室や学会活動の中でリーダーシップを発揮してきた社員

 労働環境の厳しさが問題にされた
 ユニクロのファーストリテーリング社は、
 こういうアナウンスをした。
 
  トップ自ら労働環境の改善を約束し、 
  全社員の給与レベル(グレード別)を公開した。

 これにより厳しいがやりがいのある会社
 という印象を与えることに成功した。 


冒頭の生産性の定義も行い、
なぜ日本が効率化重視なのかについて
以下のような興味深いコメントをされています。

 日本では、製造現場における改善活動から
 生産性という概念が普及したため、
 「生産性を上げる手段 = 改善的な手法によるコスト削減」
 という感覚が定着してしまっています。


6月30日の日経新聞で、日本の社会保障制度の問題点を特集した
「砂上の安心網」に以下の記述がありました。


 厚労省は5月、省内の働き方を見直すべく中間報告書を公開した。
 対策に「コミュニケーション強化月間(仮称)」の創設を掲げた。
 その一つが「朝のあいさつの励行。目を見て明るく元気にさわやかに」
 驚いた。
 
 さらに目を疑ったのは
 「業務の中に生産性向上の概念が十分に組み込まれていなかった」
 という一文だった。


 製造業の現場だけでなくホワイトカラー職場でも
 業務効率を高めるのは常識。
 民間企業は長い間、知恵を絞ってきた。
 平成も終わりに近付いた今ごろ掲げるとはーーーー。


厚労省の「遅れ」は確かですが、
私の見るところでは、一般の民間企業のオフィス現場も、
厚労省と50歩100歩だと思います。
この記者の買いかぶりですね。



伊賀さんは、
生産性を上げる4つの方法として以下を上げています。
前掲の分母と分子を改善により実現するか,
革新により実現するかです。

 ①改善により投入資源を小さくする
 ②革新により投入資源を小さくする
 ③改善により成果を大きくする
 ④革新により成果を大きくする。


これは当たり前のことのようですが、
実際の局面では、
このいずれかのアプローチに絞っている場合が多いようです。

システム企画研修社がすすめているエンハンス業務で言えば、
フォワード・コンソーシアムの活動は①と少し③
アライアンスによるエンハンス業務の革新はは②が中心です。

伊賀さんは、
常にアプローチの幅を広げて検討しなさい、
と言っておられるのです。


会議と資料以外で具体的な主張は以下があります。

 戦力外中高年を放置していけない。
  再教育とあらためての目標を与えるべきである。

 ストップウォッチをオフィスにも
  オフィスワークも作業時間の把握分析をしなさい。
  改善すべき事項が明確になりますよ。

 定期的な業務し分けの価値
  ルーチンワークは、環境変化により、
  その必要性・重要性は変わる。
  定期的な棚卸をして、不要・非効率な業務を削ぎ落としなさい。
 
 長期休養者が出たら大チャンス
  その時、ほかの人は仕事の領域を広げるチャンスである。

 3割と3%の両方を意識する(「改善と革新を意識せよ」)
  3%は改善、3割となったら革新でないと実現しない。
  常に両方を意識して臨みなさい。

 仕事をブラックボックス化しない
  安易に非正規社員に委ねたりすると、改善は永遠にされない。
  (上野もそれはエンハンス業務において痛感します。
   だから改善されずに放置されているのです)

トップパフォーマーの能力を引き出す方法についても
詳述しています。
マッキンゼーならではでのテーマで、
普通の企業ではそんなことは検討課題にならないでしょう。

総論としては当たり前のことが多いのですが、
「成果の増大を重視しなさい」ということが主張のポイントです。

この点は私も再々主張していることです。

「日本の労働生産性が低いのはなぜか」
http://uenorio.blogspot.jp/2017/05/blog-post_30.html


「人手不足なのになぜ賃金が上がらないのか」
http://uenorio.blogspot.jp/2017/06/blog-post.html



マッキンゼー社の場合という内容がミソで説得力があります。
ご関心のある方はご一読ください。


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