2017年1月30日月曜日

日本語で悩むことがおありでしょう?

このテーマの目的・ねらい
目的:
 日本語に関するうん蓄書「日本語雑記帳」
           を知っていただきます。
 「たしかにそうだ」と同感していただきます。
 言葉で困っていることの解決策を得ていただきます。


ねらい:
 適切な日本語を使いましょう。
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本稿は「日本語雑記帳」のご紹介です。
当書は、大学の同級である西中眞二郎氏の著書です。
彼は官僚のエリート省庁である通商産業省に入省し
活躍した人材です。

同級には一番の秀才省庁大蔵省に入った者もいましたが、
人付き合いがよくなく
クラスのOB会にはほとんど顔を出さない
「かわいくない」人でした。

それに引き換え西中氏は
愛嬌のある奥様ともどもOB会には精勤です。
官庁では、
新入社員」は徹底的に文章作成法をしごかれます。
彼は、そこを起点にして日本語文章に関心を持ち、
一家を成したのでしょう。


 

この本は2006年に書かれたものですが、
その時に贈呈を受けたのに読まずにしまってあったのを
最近見つけて読みました。
たいへん参考になることが書かれていましたので
ご紹介するものです。


以下のような内容で
「素人」の「うん蓄書」としてなかなかのものです。


言い回しの難しい言葉
分かりにくい言葉
誤った使い方の言葉
悪文事例集
地名・企業名などの由来

以下に「分かりやすい」実感できる事例をご紹介します。

太字は原文のままの紹介です。


1)見知らぬ男性を呼ぶ適当な言葉がない

女性の場合は「奥さん!」とか「お嬢さん」とかがあるが、
男性の場合は「旦那さん」「大将!」「お兄さん」とかいうのは
商売人とかしか使わない。
客引きが「社長!」という場合も紹介されています。


以前、赤信号で道を横断していたところ、
運悪くお巡りさんに見付かり
「おとうさん、赤信号を渡っちゃダメだよ」と注意されて、
ムカッとしたことがある。


もちろん、渡った私が悪いので、
ムカッとしたのは「お父さん」という呼び掛けに対してなのだが、
後になって考えて見ると、
お巡りさんは何と言って私を呼べば良かったのだろうか。

上野注:
地方によっては年上に「先生(せんせ)」と言う場合もあります。

ですが確かにいい言葉はなく、
「あのー」とか「もしもし」となってしまいます。

これはなぜかについてこういう解説をしています。

「男性中心の社会であったため、
女性を対象とするボキャブラリの方が豊富になった」
という面もあるのかもしれない。


私と違って謙虚な言い方ですね。
男同士は他人事のような呼び方はしないということでしょう。


2)「嬉しかったです」


こういう紹介がありました。

「父上様、母上様、3日とろろ美味しゅうございました。
干し柿、もちも美味しゅうございました」



この文章は、オリンピックのマラソンで活躍し、
後に自殺した円谷幸吉選手の遺書の一部である。

最近稀な格調高い日本語の遺書だと話題になった記憶がある。


これから先は私の全く勝手な想像なのだが、
この部分を書くとき、
円谷選手は表現に迷ったのではないかという気がしないでもない。


と言うのは、「美味しゅうございました」という表現が、
若い男性の言葉として、丁寧過ぎるのではないかと思うからだ。

もっとも、「父上様」からはじまる円谷選手の遺書には、
これがぴったりなのかも知れないが、
それはそれとして、では普通の場合どう書けば良いのか
うまい言葉が思いつかない。


「おいしゅうございました」では
男言葉としては丁寧過ぎるとしても、
「おいしかった」だけでは乱暴過ぎる。


そうかと言って「おいしかったです」では
小学生の作文みたいだし、
(上野注:最近はこういう言い方が普通になってきました)
「おいしく思いました」では
天皇陛下のお言葉のようになってしまう。


要するに、
形容詞の過去形とでもいうべきこの種の言葉についての、
ほどほどの丁寧語が日本語には存在しない
ということかと思う。


たしかに同感です。
私もこの点について悩んできましたが、
現在は「たいへんおいしく思いました」を使っています。


同じようなことですが、
最近、メールの依頼文で
「○○してください」と言うと命令調なので
「○○してくださいませ」と言うときがあります。

これは女言葉ですね。


3)「御挨拶申し上げます」


これは正しい言い方でしょうか。


自分の言葉に御はおかしい、という説と
相手を立てて御を付けるのだ、という説とがあります。

国語審議会の解釈では、後者だそうです。
安心してこの言い方を使いましょう。


4)敬称の「お」


動物では馬と猿にはおをつけるが、
お犬さん、お牛さん、お猫さんとは言わない。
兎も、鳩も、そう。

なぜ馬と猿だけが別格なのだろう?


と西中氏は疑問に思っています。


さらに、以下の例示があります。
空、山はおがつく、
海、川、陸はつかない。

星や月はお星さま、お月さまと様まで付く。


耳、鼻、口、顔、へそ、はつく。
目はお目目、手はお手々になってしまう。


座敷、台所、便所、窓はつく。
応接間、書斎、洗面所はつかない。


豆腐はつくが、
「ちくわ」や「がんもどき」などはつかない。


本は、お本ではなくご本になる。



「御」の付くものと付かないもの、
付くものでも「お」と「御」の使い分け、
更には本来の言葉自体が変わってしまうもの、
日本人にとっては何でもないことだが、
これから日本語を勉強する外国人などにとっては、
随分むずかしいことだと思うし、

私にはそのルールがさっぱり判らない。

そこで私は考えてみました。

以下の要素がありそうです。

1.幼児言葉
 赤ん坊や幼児に教えるときに「お」を付けた。
 ちくわやがんもどきは幼児が食べない。

2.その場合でも最近の言葉には「お」が付かない。
 応接間、書斎→「お」を付ける家庭もありました。

3.大事にするあるいは尊敬の念がある
 お馬、お猿

4.語感
 お目目、ご本
 
5)結構です

お客様に「コーヒーでもいかがですか」とお勧めしたとき、
「結構です」という返事が返って来ることがあるが、
多くの場合は
「要らない」という意味だと解釈して良いだろう。

しかしにっこり笑って「結構ですねえ」と言われれば、
「下さい」という意味に解釈した方が良さそうだ。

「いいです」でも同じことが言えるだろう。


6)昼からの出勤のときの言葉
朝の出勤では誰しも「おはようございます」です。
しかし、出かけていて戻るときの「ただいま(帰りました)」
ではないときの午後の出勤時になんと言いますか?


私もこれについては悩んでいました。
他の人もそういう時は、
もそもそと部屋に入ってくるのです。


こちらは、「何とか挨拶しろ」と思うのですが、
確かにいい言葉がないのです。

いっそ、芸能界や飲食業界のように、
何時であっても「おはようございます」にすれば
すっきりしますね。

これから出勤時間が自由になってくると、
昼からの出勤が増えます。
早く何らかの方法が定着するとよいと思います。



そこでわが社では2月から、
「おはようございます」ではないときは
「ただいま!」ということにします。
「只今参りました」という意味です。
迎える方は「ご苦労様です!」と言います。


この点は、当初を読んだ具体的成果です。
西中さん、ありがとう。

悪文の例として以下が挙げられています。


どこで切れるのか判りにくい

主語不明
文章の中に挟んだ文章の掛かり方がはっきりしない
簡単すぎて理解しにくい
詳し過ぎて理解しにくい
論理事態に問題がある
適当な言葉がない


それぞれの例題がたいへん参考になります。


ことばを作る」の章では、
市町村合併での新市町村名の付け方
企業名、商品名の付け方、
などが紹介されています。


「ことばで遊ぶ」の章では
回文(上から読んでも下から読んでも同じ)
いろは歌(いろは文字を一度だけ使う)
などが紹介されています。
これは肩の凝らない楽しい章です。


日本語は楽しいものですね。
小学校でこういう国語の勉強をしたら、
生徒たちはもっともっと
国語の時間が楽しくなるのではないでしょうか。



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