目的:
日本の終身雇用制度が生んだ雇用問題について
考えてみていただく。
その対策はどうすればよいか、考えてみていただく。
ねらい:
この知識は何かの時に役に立つでしょう。
当事者であれば、
改善に向かって第1歩を踏み出していただく。
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「日本の雇用と中高年」は
日本の雇用問題の大家である濱口桂一郎氏の
最近の著書です。
本書は、以下の構成で、
日本の雇用制度・法制の歴史と現状を解説しています。
専門の方にとっては、
その状況を簡単に把握できる解説書となっています。
・年齢に基づく雇用システム
・中高年受難時代の雇用維持政策
・日本型雇用法理の確立
・日本型雇用システム評価の逆転
・60歳定年延長の時代
・65歳継続雇用の時代
・年齢差別禁止政策
・日本型システムの中の管理職
・中高年を狙い撃ちした成果主義
・中高年女性の居場所
・中高年問題と社会保障
私が関心を持った
濱口氏の主な主張点は以下のとおりです。
中高年が長く働く場を確保したいと思ったら、
「就社」ではなく、「就職」すべきである。
就社は「メンバーシップ型」雇用であり、
その会社のメンバーとして雇用される。
「就職」は欧米型の職務を限定したまさに就職である。
「就社」の雇用条件は、
定年までの期限を切らない終身雇用
職種・職場を限定しない無条件採用
中高年が終身雇用で会社に居座るので、
若者の就職が阻害されると言われるが、それは違う。
リストラの対象になるのは真っ先に中高年であるから。
定年まで給与が年功序列で上がっていくのは、
終身雇用を前提に
中年段階の給与は
生活費(子供の養育・教育費)がかかるのを支援する、
後年段階は永年の勤労に報いる
という意味がある。
したがって、
後年段階の給与はその時の働きに見合っているのではない。
一般的な業務においては、
ある段階からは仕事の能力の成長は止まるからである。
働きに見合わないかろと言って解雇の対象にするのは
広い意味の契約違反である。
一般的な業務において、
中高年で能力が上がる(会社にとってその活動に価値がある)
のはマネジメント職になる場合である。
マネジメントは会社にとって必須の業務であり、
これは中高年の経験が生きる業務である。
したがって、中高年になってマネジメントにならない社員は、
給与と働きが見合わない、ことになるのである。
雇用・勤労を中高年以降も続けていけるようにするには
日本も欧米型のジョブ型の「就職」に切り換えていくべきである。
ジョブ型正社員は一種の専門職であり、
一般職のように能力成長の限界があるわけではない。
欧米での給与体系は年功序列で上がらない。
中年段階の教育費増は社会保障制度がカバーしている。
周知のように欧米の労働組合は職種別組合であり
その職種の地位向上のために活動している。
欧米では、会社の都合で解雇されても、専門性があるので
再就職は容易である。
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上野意見
現状でマネジメント職にならない団塊ジュニア世代の高年者は、
大企業中心にかなり多く存在しています。
その多くは働きと給与が見合っていないで、
会社にとって「お荷物」になっています。
しかし終身雇用の慣行があるため、解雇できません。
その面では、
濱口氏の言われる「中高年層が犠牲になっている」
という場面は限られています。
リストラに遭っているのは、
企業が危機状態になっている場合だけなのです。
「犠牲になっている」という意味では、
以下のような「恵まれない」状況に置かれていることの方が
大きいのではないでしょうか。
企業の方針に従って働いてきたのに、
現状では能力不足となって、
今や会社が期待する仕事ができない、
生き甲斐を感じられない毎日を送らざるを得ない。
窓際族とか、
本書で紹介されている「追い出し部屋」への配属
という状態に置かれている者も多い。
おそらくこの状態は、
割増退職金をもらって失業している状態よりも
悪い状態なのではないでしょうか。
現在はあらゆるビジネスが変革しています。
変革に対応できなければ
企業は生き残れない時代になっています。
日本経済は、
長らく単純高度成長かその後の失われた20年でした。
「恵まれない」人たちは、
変化のあまりない時代にビジネスを経験した
先輩の指導を受けて
変化の少ないビジネス生活を送ってきています。
これでは、
変革対応の思考法・行動原理を身につけられません。
その結果お荷物になってしまっているのです。
これは会社の責任です。
広い意味では社会の責任であり、
個人だけがその責めを負うべきものではないのです。
因みに、私およびシステム企画研修㈱では
20年以上前から、変革対応の思考として
「価値目標思考」を提唱しています。
何か新しいことをする際には、
「それは何のためにするのか」を探求することから
検討を開始しようというものです。
こういう教育を若い時から受けているだけでも、
中高年の受難はずい分減ったと思われます。
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ところで、
濱口氏の言われるジョブ型正社員は、
どんな職種で現実的か検討してみました。
まず、一般的な企業の業務を10分類しました。
その業務の従事者を3分類しました。
専門職:特別な技術・技能を持っている者です。
現場の職人的な人材も含みます。
営業職:人を相手にする仕事です。
対人関係能力が要求され
事務職とは明確な違いがあります。
事務職:人以外を相手にする仕事です。
濱口氏の言われるジョブ型正社員が成立しそうなのは、
専門職、営業職、事務職の〇です。
この人たちはスペシャリストです。
事務職の◎の分は、
専門性ある職種にはなりがたいと思われます。
この事務職はやはり「就社型」でいろいろな業務を経験して
その一部は経営幹部になるのでしょう。
この人たちはいわば総合職です。
スペシャリストに対してゼネラリストです。
経営者の第1歩となりうる経営管理の事務職は、
他の多くの業務を経験した人が成果を上げると思われます。
まさにゼネラリストです。
この表は専門的にはかなり価値のあるものだと思います。
業務
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専門職
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事務職
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営業職
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1)経営管理
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△(経営計画専門家)
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2)総務
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△(法務など)
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3)研究・商品開発
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〇(研究者)
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◎(商品企画等)
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4)生産
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〇(技能者)
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◎(生産管理)
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5)購買・調達
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|
6)営業
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〇
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7)物流
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〇(技能者)
|
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8)人事
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9)資金・財務
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△(資金運用者)
|
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10)原価・経理
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最後になりますが、
現在システム企画研修㈱では、
「ベテラン社員を元気にする研修」と称する
プログラム提供を始めています。
前掲の「割りを食っている」人を対象にして、
その人が「本当は何をしたいのか、何ができるのか」を
潜在意識に働きかけて探り出し、
新しい道を見つけていただこうというプログラムです。
これは、
社会的にずい分大きな意義のあるプログラムになる
と考えています。
ご関心ある方はお問い合わせください。
mind-pc@newspt.co.jp
4 件のコメント:
「ベテラン社員を元気にする研修」の実績・成果は如何に。
実施はこれからです。成果をご期待ください。
1. ドイツにはこのような研修会社(replacement会社)はいくつかあります。 他社を吸収合併した企業が不要な中堅以上の社員の転職支援に使っています。同一企業内での転職ということもあるでしょう。
2.日本企業の場合は特定のグループが人事権、予算権を握り、覇権を持ってしまうことが問題です。 共産国の共産党、イスラム国の特定宗派グループ、 アフリカ発展途上国の特定部族、 総合電機会社の重電グループ、 東電の地上げ屋上がりグループ、 NKKの事務屋共産党グループなどです。 東電の用地担当副社長とは筆頭副社長のこと、原発用地部とは原発本丸のこと。東電の常識は世間の非常識です。 このような組織・集団では多くの人が元気がない方が生きていけます。 元気になった人は反抗か脱出を考えます。
3.欧米の優良企業では、投資家から選ばれるCEOは投資収益率(短期的とは限らない)を上げるためのその時点の課題・目標をよく理解していることが最重要です。 CEOを補佐するのがゼネラルスペシャリストです。 Apple, Google, Microsoft、Tesla Motorの南アフリカ人創業経営者、(高級高額電気自動車ですでにToyata Lexas Hybridを台数で3倍、金額ではさらに上回っている。) Costcuter Gohsn社長、債券販売で15年間利益の60%以上を稼いだドイツ銀行のインド人頭取、携帯電話部門を売りInternetビジネスに転換するNokiaのインド人社長、これらのCEOは企業との終身雇用的・文化的関係は少ないです。
4.日本では、人材と資本・資金の配分は国・企業内で中央集権的に決められます。 欧米先進国のような多様性がありません。 これが共産国的不満と構造改善の緩慢さにつながっています。
ベンチャーキャピタルやシリコンバレーのような活動は日本ではうまくいきません。 これらの能力がある人は不満居士になっていることでしょう。 このような人達をどうすれば元気を出させることができるのか、貴社の研修成果に注目しています。
5.欧米人やインド人、南アフリカ人、フィリッピン人、マレー人は英語で仕事をすることは、日本人よりはるかに容易です。 日本人の場合は米国への脱出も簡単ではないので困ったものです。
元NGM代表さん
ご経験に基づく豊富な情報ありがとうございます。
早く日本のガラパゴスを潰さなければなりませんね。
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