2011年12月26日月曜日

イトーヨーカドー 現場型仮説検証の限界

高収益を誇ったスーパ-(GMS)の
イトーヨーカ堂が苦戦しています。

ヨーカドーグループが高収益を実現できたのは、
鈴木敏文会長が提唱した現場重視の「仮説検証」が
その一因でした。

「明日は雨だから○が売れる」
「明日は近くの小学校の運動会だから、
△が売れるだろう」

という具合に「頭を使って発注をせよ」
「結果が思うようにいかなかった場合は
『なぜそうだったか』を考え次に生かせ」
ということをパートの女性にまでも叩き込みました。

ところが、
このような現場型の「仮説検証」方式は、
商品構成が安定している場合には有効ですが、
現在はそうはいきません。

売れ筋商品の傾向が大きく替わっていくのです。
取扱い商品を決めるバイヤ(商品調達担当)の判断が
販売を左右することになります。
取り扱っていない商品については
発注のしようがありません。

特に、日用品としての肌着類を除く衣料品の場合は
現場の判断ではどうにもなりません。

そこで、ヨーカドーでは百貨店方式の導入や、
売れる店への商品の「移動集約」方式の導入など、
「改革」を実践中です。

教訓は次のとおりです。
1.業績の良い企業や現場は新しい波に乗り遅れる。
 現状に安住してしまうのです。

2. 現場型の仮説検証は、改革時には効果を発揮しない。
 現場の運営の効率化では、
  環境変化には対応しきれません。

興味深いのは、
鈴木敏文会長は改革にも成功するだろうか、
という点です。

2011年11月28日の日経MJに
鈴木会長のこういう取材記事が載っていました。

「衣料品のレベルを上げていく。
商品政策(MD)を強化することで
(GMSの)再生は可能だ」

ここから少し話題を変えます。

鈴木会長は私が畏敬している経営者の一人です。

創業者の伊藤雅俊氏が、
不祥事で急きょ引責辞任となったときに、
鈴木氏が後を継ぎ
見事に優良企業グループに育て上げたのです。

一族ではない鈴木氏が社内におられたことは、
ヨーカドーグループにとって幸運なことでした。

ジャスコ(イオン)は創業者2世の岡田元也社長が
大活躍しておられます。

それに引き換え、
ポスト中内功氏の出現がなかったダイエーは
すっかり凋落してしまいました。

2位以下と2倍以上の売上規模で
ダントツのナンバ1が、
3位グループだったイオンの傘下に
入ることになってしまったのです。

少なくとも伝統的大企業以外では、
トップの力量が経営を決めると言ってよいようです。

経営者の一番の責任は
経営の発展を継続できるように(「ねらい」)
その状況を社内に作ること(「目的」)です。

そのためには、
優秀な後継者を発見・育成し
その方にバトンタッチしなければなりません。

出来の良くない息子に後を継がせることが、
目的になってはいけません。

このことは
社会を見ている創業者は学んでいて、
「一族には継がせない」を宣言しておられます。

成功例と失敗例がGMS業界にあるのです。

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