日高義樹氏の「アメリカにはもう頼れない」を読みました。
日高氏は、「日高義樹のワシントンレポート」で著名ですが、
私との関係では、大学空手部の1年先輩です。
空手ではそれほど強くありませんでしたが、
日米関係については強いですね。
テレビ番組で、石原慎太郎都知事が、
アメリカで社交のできる日本人はただ一人日高さんだ、
と言われていました。
本書でも、キッシンジャーさんをはじめ多数の
米国要人からの取材情報が紹介されています。
タイトルの意味は
「頼らないで自立しよう」
と言う鳩山さん的発言ではなく、
「(アメリカの戦略で日本は重視してもらえなくなるから)
自立しなければダメですよ」という警句なのです。
「目からうろこ」で教えられるところがたくさんありました。
いかに日本がアメリカに甘え切っているか
ということがよく分かりました。
世界情勢の見方が変わります。
普天間基地移転問題もこのような文脈の中で
理解すべきです。
(米国がそんなに焦っていないのが理解できます)
以下、日高氏の主張を私なりに要約します。
詳細は是非原本を読まれるとよいと思います。
本報告の目的は、少しでも多くの方に
このような大局観を持っていただきたいということです。
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・終戦後、米国が日本の世話を焼いていたのは
日本が再び米国に戦争を仕掛けてこないようにする
ためであった(これは常識ですね)。
・米ソ冷戦時代は、日本はソ連に対する防波堤として
米国にとって大きな戦略的な価値があった。
・ 日米安保は、
その前提(米国や米国の価値観を守る目的)
で存在しており、
米国が米国の経費と兵隊の犠牲のもとに
日本自体を守ろうとしているわけではない。
・ 中国が尖閣諸島に上陸したりしても、
(中国が周辺のシーレーンの航行の安全を阻害したり、
中国の艦艇が海上自衛隊を攻撃したりしない限り)
米国はその「侵略」等を武力で排除することに対して
協力しないであろう。
・ その場合の米軍の行動は自らの安全確保が目的で、
必ずしも日米安保に基づくものではない。
・ 現在の日本の陸、海、空の自衛隊の戦力は、
中国や北朝鮮、韓国を上回っている。
そんな強国は、
核で攻撃された場合以外に助ける必要はない、
と考えるのが米国の常識だろう。
・ 現代、大国の軍備の戦略は、
実際に戦争をする能力を高めるというよりは
仮想敵国に対して
強大な攻撃力または防衛力を誇示することによって
戦争を思い留めさせる抑止力に重点がある
(これも常識)。
・現在の米国の核の能力は、
14隻あるミサイル原子力潜水艦の一隻で、
広島・長崎級の1千倍の威力を持つ核弾頭を
2880発も持っている。
地球全体を14回も壊滅する能力があるのである。
そんな能力が実際の戦闘で必要なわけがない。
・ 国際社会における発言力は、最後は武力次第である。
現在の武力は核の保持である。
・ 核を保持していない国は、
核を保持している国の強硬な姿勢に対しては
対抗手段を持たない
(国連等による平和的な解決というのは甘い考えである)。
・ 鳩山さんが、
「アメリカとの関係を変える(対等に付き合う)」
と発言した時に、アメリカのキーマンやマスコミは
「関係を変えるということは、
日本が核を持つという意思表明なのか」
と色めき立ったそうである。
・それが単なる「無知の思いつき的発言」だったので、
鳩山さんおよび日本の評価はガタ落ちだったそうな。
・ 核以外の戦力を、仮想敵国近くに配備して
現実的な抑止力(たとえば、
尖閣諸島を実効支配しようとすることに対しての抑止力)
を維持することは非常に大きなコストがかかる。
・ 現在の米軍の機動力は非常に大きくなっている。
(たとえば、
C17という長距離高速輸送機は戦車も搭載できる)
・ 中国・北朝鮮も核を保持し、
近くの米軍基地を攻撃することができるようになったので
軍隊の前線配備が意味をなさなくなった
(大きな被害を受けてしまう)。
・ サイバー兵器の時代が始まり軍事常識が一変する。
・ そこで、戦闘力の前線配備をやめ、
ハワイ、グァム、アラスカに最新鋭の潜水艦と航空機
(無人偵察機グローバルホークを含む)
を集中保持して、
いざという時に直ちに現地の出動できるように
切り替えつつある。
(上野注:
この方法はビジネスにおける在庫管理問題と同じです。
集中した方がはるかに少量の在庫ですむのです)
・前線の戦力は、
グァム・横須賀・佐世保・シンガポール基地所属の
機動力ある海軍の艦隊が中心である
(基地にいる兵力が頼りではない)。
・ そうなると、
日本国内の米軍陸上基地の戦略的な価値は薄れるか
無くなってしまう。
・オバマ大統領は親中国派であり、
中国との「融和」を図っている
(上野注:
その後、中間選挙で米国民主党が大敗したこともあり、
オバマ大統領の親中国路線は軌道修正されている)
・(若干脱線) 一方で、
中国は経済拡大が止まり中国共産党は崩壊するだろう。
・ そういう流れの中にあるという認識をして
日本の国家戦略を立案・実行していかなければならない。
・ その基本戦略では、
自ら核を保持するか、
米軍と共同で戦う体制を作り
「アメリカの核兵器に手をかける」権利を持つNATO方式
かの核戦略は避けて通れないであろう。
・ 早く戦後の甘え状態から脱却しなければならない。
・ 「日本人は考えられないことを考える力がある」
という未来学者ハーマンカーン博士の言葉にもあるように、
日本の新しい方向付けは可能であろうと信じている。
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