2011年1月22日土曜日

「アメリカにはもう頼れない」

 日高義樹氏の「アメリカにはもう頼れない」を読みました。  
 日高氏は、「日高義樹のワシントンレポート」で著名ですが、
 私との関係では、大学空手部の1年先輩です。

 空手ではそれほど強くありませんでしたが、
 日米関係については強いですね。

 テレビ番組で、石原慎太郎都知事が、
 アメリカで社交のできる日本人はただ一人日高さんだ、
 と言われていました。
 本書でも、キッシンジャーさんをはじめ多数の
 米国要人からの取材情報が紹介されています。

 タイトルの意味は
 「頼らないで自立しよう」
 と言う鳩山さん的発言ではなく、
 「(アメリカの戦略で日本は重視してもらえなくなるから)
 自立しなければダメですよ」という警句なのです。
 「目からうろこ」で教えられるところがたくさんありました。

 いかに日本がアメリカに甘え切っているか
 ということがよく分かりました。
 世界情勢の見方が変わります。
 
 普天間基地移転問題もこのような文脈の中で
 理解すべきです。
 (米国がそんなに焦っていないのが理解できます)

 以下、日高氏の主張を私なりに要約します。
 詳細は是非原本を読まれるとよいと思います。

 本報告の目的は、少しでも多くの方に
 このような大局観を持っていただきたいということです。

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・終戦後、米国が日本の世話を焼いていたのは
 日本が再び米国に戦争を仕掛けてこないようにする
 ためであった(これは常識ですね)。

・米ソ冷戦時代は、日本はソ連に対する防波堤として
 米国にとって大きな戦略的な価値があった。

・ 日米安保は、
 その前提(米国や米国の価値観を守る目的)
 で存在しており、
 米国が米国の経費と兵隊の犠牲のもとに
 日本自体を守ろうとしているわけではない。

・ 中国が尖閣諸島に上陸したりしても、
 (中国が周辺のシーレーンの航行の安全を阻害したり、
 中国の艦艇が海上自衛隊を攻撃したりしない限り)
 米国はその「侵略」等を武力で排除することに対して
 協力しないであろう。

・ その場合の米軍の行動は自らの安全確保が目的で、
 必ずしも日米安保に基づくものではない。

・ 現在の日本の陸、海、空の自衛隊の戦力は、
 中国や北朝鮮、韓国を上回っている。
 そんな強国は、
 核で攻撃された場合以外に助ける必要はない、
 と考えるのが米国の常識だろう。

・ 現代、大国の軍備の戦略は、
 実際に戦争をする能力を高めるというよりは
 仮想敵国に対して
 強大な攻撃力または防衛力を誇示することによって
 戦争を思い留めさせる抑止力に重点がある
 (これも常識)。

・現在の米国の核の能力は、
 14隻あるミサイル原子力潜水艦の一隻で、
 広島・長崎級の1千倍の威力を持つ核弾頭を
 2880発も持っている。
 地球全体を14回も壊滅する能力があるのである。
 そんな能力が実際の戦闘で必要なわけがない。

・ 国際社会における発言力は、最後は武力次第である。
 現在の武力は核の保持である。

・ 核を保持していない国は、
 核を保持している国の強硬な姿勢に対しては 
 対抗手段を持たない
 (国連等による平和的な解決というのは甘い考えである)。

・ 鳩山さんが、
 「アメリカとの関係を変える(対等に付き合う)」
 と発言した時に、アメリカのキーマンやマスコミは
 「関係を変えるということは、
 日本が核を持つという意思表明なのか」
 と色めき立ったそうである。

・それが単なる「無知の思いつき的発言」だったので、
 鳩山さんおよび日本の評価はガタ落ちだったそうな。

・ 核以外の戦力を、仮想敵国近くに配備して
 現実的な抑止力(たとえば、
 尖閣諸島を実効支配しようとすることに対しての抑止力)
 を維持することは非常に大きなコストがかかる。

・ 現在の米軍の機動力は非常に大きくなっている。
 (たとえば、
 C17という長距離高速輸送機は戦車も搭載できる)

・ 中国・北朝鮮も核を保持し、
 近くの米軍基地を攻撃することができるようになったので
 軍隊の前線配備が意味をなさなくなった
 (大きな被害を受けてしまう)。

・ サイバー兵器の時代が始まり軍事常識が一変する。

・ そこで、戦闘力の前線配備をやめ、
 ハワイ、グァム、アラスカに最新鋭の潜水艦と航空機
 (無人偵察機グローバルホークを含む)
 を集中保持して、
 いざという時に直ちに現地の出動できるように
 切り替えつつある。

 (上野注:
 この方法はビジネスにおける在庫管理問題と同じです。
 集中した方がはるかに少量の在庫ですむのです)

・前線の戦力は、
 グァム・横須賀・佐世保・シンガポール基地所属の
 機動力ある海軍の艦隊が中心である
 (基地にいる兵力が頼りではない)。

・ そうなると、
 日本国内の米軍陸上基地の戦略的な価値は薄れるか
 無くなってしまう。

・オバマ大統領は親中国派であり、
 中国との「融和」を図っている
 (上野注:
 その後、中間選挙で米国民主党が大敗したこともあり、
 オバマ大統領の親中国路線は軌道修正されている)

・(若干脱線) 一方で、
 中国は経済拡大が止まり中国共産党は崩壊するだろう。

・ そういう流れの中にあるという認識をして
 日本の国家戦略を立案・実行していかなければならない。

・ その基本戦略では、
 自ら核を保持するか、
 米軍と共同で戦う体制を作り
 「アメリカの核兵器に手をかける」権利を持つNATO方式
 かの核戦略は避けて通れないであろう。

・ 早く戦後の甘え状態から脱却しなければならない。

・ 「日本人は考えられないことを考える力がある」
 という未来学者ハーマンカーン博士の言葉にもあるように、
 日本の新しい方向付けは可能であろうと信じている。

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