先日、ひょんなきっかけである人から
当社の「専売特許」だと思っていました目的重視思考について、
「その英語訳がGoal Orientedです。
そのタイトルがついた英文の論文は10万件ありますよ」
ということを教えていただきました。
驚いて、
10万件あるそのタイトルのついた論文の一部を読んでみました。
そうしましたら、
システムの世界とは関係ない論文も多数ありましたが、
システムの世界では、
Goal Oriented Requirements Engineering または
Goal Oriented Requirements Analysis
というタイトルがついた論文が多数見つかりました。
でもよく見ると、論文の執筆者は限られていて
なぜか、ベルギーとカナダの大学の方でした。
「根っから目的重視の国アメリカでは
そんなことは当然だ、という気があるので
誰も追求しないだろう」という私の推論は
今のところ当っているようです。
Goal Oriented Requirements Engineering(GORE)を
主張している中心人物は、
ベルギーのLouvainカトリック大学コンピュータサイエンス学科の
Axel van Lamsweerde(アクセル・ラムズウィールド)教授です。
教授とその継承者の主張の要点は以下のようです。
この部分は、我々の主張と同じです。
ゴールとは、開発するシステムが達成しなければならないこと。
上位のゴールは、ステークホルダの望む状態または状況を表す。
下位のゴールは、それを実現するために行うことを表す。
ゴールは要求の完全性を保証する。
ゴールは上位の戦略レベルから
下位の技術的要求までのトレーサびりティを提供できる。
ゴールは要求をさばく基準になる。
ステークホルダに対する要求の正当性の説明に有効である。
関係者間の対立を解決するのに役立つ。
ゴールは観測・制御可能な目標値を設定する必要がある。
違う部分もあります。
それは、どうやってゴールを導き出すかという点です。
少なくともLamsweerde教授はこう言っています。
既存のシステム文書から手がかりになるゴールを識別する。
WHYの質問で上位のゴールに展開する。
HOWの質問で下位のゴールに展開する。
ステークホルダへの確認で適切なゴールを設定する。
これに対して、我々の目的達成手法では
ゴールは「目的・ねらい」と言っていますが
「目的・ねらいは、対象業務または対象ビジネスの
価値目標で把握する」
としています。
対象業務が実現すべき価値目標は何か
対象ビジネスが実現すべき価値目標は何か
を追求するのです。(この続きは9行先です)
ゴールを整理する手法も異なります。
Goal Oriented手法では、
Goal Refinement Treeという図で整理をします。
http://scholar.google.co.jp/scholar?hl=ja&q=%22goal+oriented%22&btnG=%E6%A4%9C%E7%B4%A2&lr=&as_ylo=&as_vis=1
の2番目の論文である
Goal-orientedrequirements engineering: A guided tour
をご参照ください。
我々のMIND-SA手法では問題点連関図という図で分析します。
http://www.newspt.co.jp/contents/manual/yes/oc/mkoc.html
をご参照ください。
価値目標は、簡単に言う時には
「早い、うまい、安い」です。
宅急便はこのモデルで説明しやすい事例です。
「早い、うまい、安い」の元祖は吉野家でした。
より詳細に検討する時には
これをブレークダウンしたMRC,VQTHSFU
というフレームを使います。
http://www.newspt.co.jp/contents/manual/yes/ob/2a0e.html
を参照してください。
この中から、実際に何をゴールにしたいのか、を選定し、
それを「定量化・具体化」します。
これを意思決定者の意向に基づき検討し、
最終的にその「目的・ねらい」達成のための必要資源と合わせて
意思決定者に決定していただく、
ことを基本ルールにしています。
「目的・ねらい」の例として、宅急便の場合ですと、こうなります。
早い: 特別の山間僻地を除き、当日18時までに受けた配送物は
翌日中に配送する。
指定がある分については午前中着も受ける。
うまい:お客さまからの配送状況に関する問合せに対して、
3分以内に回答する。
受取人の予定に合わせて着時間の指定ができる。
不在時の再配送が、
お客様の時間希望によって1時間以内に可能である。
安い: 重量・体積など配送物による料金体系とし地域の差を設けない。
競合他社より平均的に1割安とする。
これら記述内容は、
「上位のゴールは、ステークホルダの望む状態または状況を表す」
という前掲の条件を満たしていることがお分かりになりますでしょう?
ステークホルダは経営者であり、お客様です。
当初の吉野家の「早い、うまい、安い」は、
極めてシンプルでした。
今は、そんなシンプルなビジネスモデルは
成り立たないのですね。
ところで、
初めに同教授が「Goal Directed」と言われたのは
1991年です。
(その後は、Goal Drivenとも言っておられます。
この言い方が、主張するコンセプトに合致していると思います)
当社の「MIND-SA・目的達成手法」がリリースされたのが
1992年ですから、ほぼ同じころに発表があったということになります。
我々は論文発表していませんから、
世間の、特に学会の注目を集めることはありませんでした。
日本でも、Lamsweerde教授たちの影響を受けて、
要求工学の先生たちが、Goal Orientedの実践手法である
KAOS(Knowledge Acquisition in Automated Specification)
等の研究をされています。
この論文発表の早いものは2004年でした。
我々は井の中の蛙だったのですが、
考えたことと考えた時期はたまたま他の先生たちと
同じだったのです。
ということがよく分かりました。
要求や要件をはっきりさせたいというニーズは
業務の機械化時代が終焉した1990年ころから
切実な問題になったのです。
業務の機械化時代は、機械化(手段)を実現すれば
経営目的である「早い、うまい、安い」が実現できたのですから
格別な理屈は必要ありませんでした。
ところが1990年頃、業務の機械化が終了すると、
新しい業務の仕組みを構築することになります。
そうなると、何のためにそれを実現するのか
という経営視点での目的が必要になったのです。
その時代背景は日本も欧米もほぼ同じですから、
「Goal Oriented」や「目的・ねらいの重視」が
必要になったのです。
結論として、
目的重視思考は、当社の「専売特許」ではありませんでしたが、
その思考法を支援する「丸い三角形」や
http://www.newspt.co.jp/contents/manual/yes/tem/template.html
「問題点連関図手法」(URLは前掲です)は当社のオリジナルで
ユニークなものです。
手法ですから、その有効性と簡便性で勝負することになります。
さらなるツール化も必要ですね。
頑張らねば!!
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