目的:
ようやく脱却しつつあるように見える「失われた30年」の
状況と対策の検討をご紹介します。
ねらい:
ねらい:
早く「失われた30年」から脱却してほしいものです!!
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本テーマは、
学士會会報2023-Ⅴ号に掲載されました2点のレポートの内容を
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本テーマは、
学士會会報2023-Ⅴ号に掲載されました2点のレポートの内容を
要約してお伝えするものです。
若干私の判断も交じっています。
2点のレポートはこれです。
1)河野龍太郎BNPパリバ証券㈱経済調査本部長
「『成長の臨界』にどう対応するか」
2)小林慶一郎慶応大学経済学部教授
「日本経済『停滞の30年』から持続的な発展への展望」
「日本経済『停滞の30年』から持続的な発展への展望」
まずは、失われた30年の発生原因についての整理です。
お二人の意見を集約すると以下の図のようになります。
30年の前半と後半では要因が異なっています。
30年の前半と後半では要因が異なっています。
前半は、バブルがはじけてその不良債権処理が進まずに、
金融機能が麻痺し経済活動すべてが停滞した時期です。
2005年春に「不良債権正常化宣言」が出され
ようやく終息しました。
しかし、その後遺症が後半に影響してきます。
しかし、その後遺症が後半に影響してきます。
この図でお分かりのように、要因が悪循環しています。
簡単にはほぐれないのです。
大きな流れはこうなります。
所得が増えない
⇓
先行き不安がある
⇓
消費が拡大しない
⇓
売上が上がらない
⇓
企業が投資しない
⇓
需要が拡大しない
給与が上がらない
⇓
所得が増えない
(初めに戻ります)
クリックして拡大してご覧ください。
一般に、悪循環の問題解決は困難が大きいのです。
現岸田内閣は、賃上げをてこにしようとしています。
この策は短期的にはある程度効果が上がりますが、
企業は収入増の当てもなく人件費.上げ続けることはできません。
需要喚起策が必要なのです。
それに対して小林慶一郎教授は、
「浮体式洋上風力発電」が有望であると持論を展開されています。
具体的な提案でいいですね。
風力発電は再生可能エネルギーとして有望である。
沿岸部では限られているので、浮体式の洋上のポテンシャルが高い。
東日本大震災後に取り組みが始まり650億円を投入したが
成功せずに、日本の重工メーカーは完全撤退してしまった。
しかし、要素技術は産業界に存在しているので、再度挑戦すべきである。
今は欧米に後れを取っている。
洋上風力発電に対する日本の政府・企業の消極性は、
現在存在している困難を重視したために、
実用化にチャレンジできないという一例だが、
これは意思決定方法に問題があることを示唆している。
「現在の視点」から出発し、現状の技術の改善と修正に終始する
リスク回避的な経営では、
持続可能なカーボンニュートラルな社会を作ることはできない。
「未来の視点」から発想して意思決定することが必要である。
2050年の未来にどのような暖業や社会が実現しているべきかをイメージし、
そこから逆算して、いま行うべき政策を構想するという
「フューチャ・デザイン」の発想が、
日本を持続的な社会に変えるために必要とされているのである。
仰るとおりで、この発想の問題は、図の中心にある15番、19番の
「企業のリスク回避・安住思考」による「イノベーションの抑制」
を示しているのです。
河野氏の挙げておられる対策では、29番の異次元金融緩和は
弊害が大きかったが方向転換されているようなのでよし、
とされています。
「金融緩和だけでは経済活性化は実現できないという実験は終わった」
と言われています。
こうも言われています。
「儲かっても貯め込んだ企業とリスクを取らない経営者が、
日本の長期停滞の最大の原因」
これは15番のことを指しています。
こういう指摘もあります。
小泉政権が、国民の反発の強い消費税増税を避けて行った
安易な社会保険料の増額によって、企業は非正規雇用を増やしました。
非正規雇用は職業訓練の機会が少ないので人的資本が蓄積されず、
生産性の上昇につながりません。
14番の社会保険制度の不備(年収105万円の壁など)は
ご承知のように改善の動きがあります。
それ以外の河野氏の挙げておられる対策は以下のようなものです。
「終身雇用の重すぎる負担を経営者から取り除くべきです」(18番対応)
「被用者皆保険を導入せよ」(14番対応)
「日本型ジョブ型採用が管理職の選抜を早める」(18番対応)
それぞれ、上図のどこかの問題点を解決します。
なお、2023年9月13日に閣議決定した岸田内閣の「基本方針」は
こうなっています。
この太字部分は、
前掲図の主要な流れのすべてを解決しようというものとなっています。
確実に実現していただきたいものです。
なお、このテーマの上野個人の分析は以下で示しています。
ほぼ同じ分析です。
ご参考まで。
上野則男のブログ: 経済学の「目的・ねらい」は何か?オモシロいですよ!! (uenorio.blogspot.com)
私たちは、何十年に一度という難しい課題が次々と複合的に生じる、 歴史の転換点ともいえる状況を迎えている。 こうした難局を乗り越え、 新しい時代を切り拓(ひら)いていくために、 新たな時代にふさわしい、 経済、社会、外交を創り上げていかなければならない。 「信頼と共感」の政治姿勢を大切に、 一人一人の国民の声に寄り添い、 先送りできない課題に一つ一つ正面から取り組み、 結果を出していく。 その強い覚悟の下、内閣の総力を挙げて、 以下の政策を推し進める。 1.物価高対策と新しい資本主義の加速 エネルギー・食糧を始めとした物価高に直面する国民生活を守るため、スピード感をもって対応する。 人への投資を強化し、労働市場改革を進めることにより、 構造的な賃上げ、消費拡大を実現し、 持続的な成長と分配の好循環を成し遂げる。 また、GX(グリーン・トランスフォーメーション)、 DX(デジタル・トランスフォーメーション)、 科学技術・イノベーション、スタートアップといった 重点分野に官民の投資を集め、新たな産業構造への転換を進める。 これによって、 社会課題の解決と持続的な経済成長を同時に実現する。 あわせて、 交通・物流インフラなど地方を支える基盤づくりへの積極的な投資や、農業、観光、中小企業など地方を支える産業の支援に万全を期す。 以下省略 2.人口減少に打ち勝つデジタル社会への変革 3.国民を守り抜く、外交・安全保障 |
なお、このテーマの上野個人の分析は以下で示しています。
ほぼ同じ分析です。
ご参考まで。
上野則男のブログ: 経済学の「目的・ねらい」は何か?オモシロいですよ!! (uenorio.blogspot.com)
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