2023年6月19日月曜日

「日本語はどこから来たか」の本命版です!

【このテーマの目的・ねらい】
目的:
 「日本語はどこから来たか?」をご研究いただきます。
 これも諸説あり、決着していないことを確認していただきます。
 しかしどうやら本命説が出てきているらしいことを
                     確認いただきます。
ねらい:
 この論の決着を見守りましょう!!
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別項「驚天動地!「日本人はどこから来たか」の決着!」で、
「日本人はどこから来たか」が、私としては決着したと考えます。
そこで、その前提で「日本語はどこから来たか?」についても
考えてみることにしました。

日本語の起源論の最新の書籍である
近藤健二名古屋大学名誉教授(専門は歴史言語学)著の
「日本語の起源」(2022年1月刊)には、
これまでの起源論の総括が示されていますので以下に掲載します。


ただし、この書籍の帯には「渡来人がヤマトコトバを創った」とありますので
近藤氏の説自体は信用できません。

日本語起源説の紹介(近藤健二教授による)

日本語起源説の区分

内容

「日本人由来説」正解との整合

北方起源説

日本語は、朝鮮語、ツングース諸語、モンゴル語、チュルク語(トルコ語)とともにアルタイ語族を構成する。文法面においても顕著な類似性を有する。しかし語彙面の一致が薄弱であるために、影が薄くなっている。

矛盾はしない。

チュルク語との関係は不明。

北方語と南方語の重層説

北方語はアルタイ系言語、南方系は南太平洋に分布するオーストロネシア系言語である。どちらが先であったかで2説ある。

近藤氏は、どちらの案も水田稲作の起源仮説から認められないという誤説を付記している。

矛盾はしない。

チベット・ビルマ語起源説

日本語とチベット・ビルマ語が同系の言語である。

近藤氏は「稲作の伝来という枠組みから認められない」と誤論を主張している。

矛盾はしない。

タミル語起源説

縄文時代の日本語は南方系のオーストロネシア系言語であったが、紀元前500年頃、タミル人が渡来しそれまでの言語を駆逐した(大野晋氏説)。

そのような渡来人の実績がない。

日本語古層説

日本周辺の日本語、朝鮮語、アイヌ語、ギリヤーク語は系統不明の言語で、ユーラシア中心部では消し去られてしまった古い言語の名残りが見られる。

小泉保氏の「縄文語の発見」もこの類である。

矛盾はないが、由来は不明。


ところが、日本人の由来の新説「日本人の祖先は縄文人だった!」
に匹敵する日本語の由来の新説が見つかりました。
それは、藤原明(当時近畿大学講師)著「日本語はどこから来たか」
(1981年刊で古い本)です。
今回、読み直して大発見でした!


藤原氏の主張は、上表で言えば「タミル語起源説」に該当します。
インドで広範に展開されたドラヴィダ語の研究をされました。
たいへんな研究成果と思われますが、上掲の表にも登場しないので、
なぜか、学会では評価されなかったのでしょう。
(今も、近畿大学講師のままなのです。どうしたことなのでしょう??)

私は、素人ながら、語彙は簡単に移動して行きますので、
語源探求には決定打とならないと思っています。

藤原氏は語彙の比較研究も徹底的にされています。
(このような表が、人体語、基礎動詞、狩猟採集関連語、衣生活関連語、
食・住関連語、宗教関連語、全部で17頁もあります)














さらに、単一のドラヴィダ語を分析されているのではなく、
次の図のように、ドラヴィダ祖語からの派生語の分析もされています。
これによれば、「ココロ」は乳房(konku-ri)からきているのだそうです。












参考までに、ドラヴィダ語族に関するWikipediaの解説を示します。 


 ドラヴィダ語族(ドラヴィダごぞく、Dravidian)は、主にドラヴィダ人と総称される人々が使用する言語語族 (ごぞくであり、およそ26の言語が含まれる。ドラヴィダ語は、主として南インドスリランカで話されているが、また、パキスタンアフガニスタンネパール、そして東部及び中央インドの特定の地域、バングラデシュブータンでも話されている。 ドラヴィダ語族の話者人口は 2億人を越える。 

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特筆すべきは以下のように、文の構成の比較研究もされているのです。

日本語とドラヴィダ語の共通点

共通点

1.母音は,a,i,u、e、oの五つである。

角田忠信先生説との整合あり。

2.エ(e)の音が共通して不安定である。

 

3.二重母音は本来的には存在しない。

 

4.基本的には単語は母音で終る。

 

5.語頭には流音・濁音・子音群が来ない。

 

6.どちらも膠着語である。

語幹または単語に接辞や単語を付けて時制とかを表わす。

7.後置詞(助詞)が用いられる。

テニオハのこと。

8.疑問文は平叙文に疑問助詞・接尾語をつける。

これは大きい特長!!

9.指示代名詞は、近、中、遠の三称の別がある。

コレ,ソレ、アレ

10.所有関係は「――は~がある」と表現する。

「持っている」ではなく「ある」

11.敬語法が発達している。

これも大きい特長!

12.語順は、主語・目的語・動詞であり、修飾語は被修飾語の前に来る。

これは大きい特長!!

13.接頭辞を用いる。

御(ご、み、お)などのこと。

14.母音調和がある。

 

その結果、日本語はドラヴィダ語が祖語であると結論付けておられます。

ところが、どうやってその言語が日本にやって来たかの仮説が
現在の日本人の由来説からすると、ピント外れだったのです。
仕方ないですね。言語の比較はできても、
人類史の専門家ではないのですからね。
こういう由来説を唱えておられます。

原ドラヴィダ民族は、紀元前4000年頃、
おそらく西アジアの方から
インド北西部へ、移住してきたものと考えられている。
原日本民族はこの民族の一部を形成していた。
あるいは、すでに原ドラヴィダ民族と原日本民族の二派に
分かれていたかもしれない。
彼らはインダス川流域に住みつき、農耕を始め、
紀元前3000年頃には、
早くもインダス川下流のアムリを中心にした、
農耕社会を建設していた。
中略
日本人の先祖が紀元前2300年頃以前に、
グジャラートあたりで稲の栽培法を学んだということは、
すでに述べたように言語学的に証明されている。

上野注:
現日本人(縄文人)が日本で生活を始めているのは、
遅くとも1万3千年前ですから、この説は全くNGです。
稲の栽培が日本に伝わったことにこだわり過ぎているのです。

経路が不明でも、
原日本語が原ドラヴィダ語に近いことは否定できません。
特に、上掲表の8番、12番の文章の構成に関してこれだけ共通なら、
(それ以外の7番から14番までもそうですが)
欧米系の言語との違いは一目瞭然です。

原日本語(縄文語)は、原ドラヴィダ語を話す日本列島渡来人が
1万年以上前に持ち込んだものなのでしょう。
それが説明できないのが、藤原説の弱いところです。

おそらく、インド大陸を経由して東へ移動した人類が
各地にドラヴィダ語系の言語を残したと思われます。
しかし大陸では、その後多くの人種の移動があり、
純粋なドラヴィダ語系は消えてしまいました。
ところが、東端の日本では、他の言語系の影響を受けることなく、
そのままの形で残ったということではないでしょうか。

いずれ真相が解明されると思います。
これだけ素晴らしい分析が、学界では認められていないというのは、
どういうことなのでしょう?
異端の説を認めない学会というものは、大疑問です!!

なお、初めに挙げました近藤教授の表に記載されている
「日本語起源説」のほとんどは、
日本人の起源説の人類の流れからすると、
類似性の根拠が認められるものです。
「その面はありうる」ということです。

1 件のコメント:

上野 則男 さんのコメント...

私の親戚の大御所であるWYさんから頂いた手紙のご紹介です。

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毎月、これだけの大量のDigestをお作りになる
大兄のエネルギーに感動しています。

ところで今回の7月号は、、私が曾つてから知りたいと思っていた
日本民族の祖先と言葉について、総論をお示しくださり、
何度も何度も熟読玩味いたしました。

日本人の祖先が縄文人であり、それがどこからやって来たのか、
又、日本語はどこを通して現在になったのか、
これは、日本人の誰もが関心のあるテーマです。

アフリカの新人類が、インドのドラヴィダ人となり、
それがさらに、ビルマ、チベット経由でどうして縄文人に繋がったのか、
言語の類似性だけしか証拠がないのは少し残念ですね。

それと縄文人が他の人種とことなり1万年も自然に寄り添っていたのは
何が原因だったのでしょう。

また、アイヌが元に追われた人たちが日本に逃げ込んだ人種、との話も
北海道人としての私にとても興味のある話です。
(WYさんは北海道のご出身です)

いずれにしても、大兄のお陰で、ここ数日間、
この縄文を中心にした話に酔って、夢まで見ています。

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WYさん そこまで感激していただいて嬉しい限りです。
ブログを続けている甲斐があります。
ありがとうございました。

ご指摘の疑問につきましては、
今後さらに研究してまいりたいと思います。

追記:そこまでご関心が深いのなら、と
ブログの原典の図書2冊を購入してお送りしました。