目的:
黒川清博士の今後の高齢化対応医療改革の方向に関する
ご意見をご紹介します。
ねらい:
その方向が実現し、日本が先端医療先進国になることを
ねらい:
その方向が実現し、日本が先端医療先進国になることを
期待しましょう。
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別項の阿部紘久氏による黒川博士の著書の全般的なご紹介を受けて
高齢先進国である日本が目指すべき
先端的医療モデルに関する部分を掘り下げてご紹介します。
1.高齢者医療対策
以下は、文章は原著のままですが、記載内容は上野が抜粋しています。
(1)医療の新しいモデルを必要とする背景
1)グローバルヘルスにおいて取り組むべきことは、
パンデミックのような国境を越える感染症対策にとどまりません。
科学の進歩によって
マラリア、結核、エイズという三大感染症を克服しつつある人類は今、
糖尿病、高血圧、脂質異常症といった慢性疾患、さらに高齢化、
それに伴う認知症に襲われています。
2)先進国では国民の生活水準が向上し、栄養が行き渡っています。
産業が一次から二次、三次と移るために人口は都市部に集中し、
発達した交通機関のもとで人々は運動をしなくなります。
そのことが、結果として慢性疾患の増加を招きました。
また、医療技術が進化し衛生状態も良くなると、
人は簡単に死ななくなり長寿化が進みます。
3)このような慢性疾患の増加や少子高齢化の進行は、
国民医療費を高騰させ、国家の財政を圧迫します。
労働者が高齢家族のケアを負うようになると、国の生産力も落ちます。
これは、20世紀半ばまでの感染症を中心とした医学的思考と行動では
対応の難しい課題です。
経済先進国でも前例がなかったことなので、
「あるべきモデル」を探せないのです。
4)しかし、モデルがないということは、
そこに新しいモデルを示すことができれば、
世界の国々がそれに倣うようになるということです。
幸か不幸か、私たちの住む日本はこの課題の最大の当事者です。
5)成長を続けていた新興国でも高齢化は進行しており、
世界の65歳以上の人口は、
2017年の約6億5千万人から2050年にはその3倍以上の約21億人になる
と予想されていますから、この状態が好転する可能性は極めて低いでしょう。
(2)「世界が注目する日本の認知症対策」
1)高齢化の進行とともに懸念されるのが「認知症」です。
2015年時点で、世界には約4080万人の認知症患者がいました。
その数は20年ごとに倍のペースで増えていき、
2030年には7470万人に、2050年には1億3150万人になる
と予測されています。
2)認知症に関連する医療や介護のコストは莫大で、
2015年時点で約8180億ドル、2030年には2兆ドルを超える
ともいわれています。
このコストを企業にたとえてみると、世界で18番目の経済規模となります。
3)日本の認知症にかかるコストは、
ここ数年ではGDPの4%、約16兆円にも上り、
これが経済成長を押し下げている要因の一つでもあります。
4)2025年には日本の認知症患者は700万人にまで増加し、
65歳以上の人口の約3分の1が認知症予備軍となります。
5)厚生労働省によって「認知症サポーター」というプログラムも始まっています。
5)厚生労働省によって「認知症サポーター」というプログラムも始まっています。
サポーター養成講座を受講すると、支援者の目印となるブレスレットを渡されます。
このサポーターは、会社や学校、コミュニティーで認知症の支援者となり、
認知症の疑いがある人に注意を促し、介護者とも連携していきます。
2022年6月時点ですでに1391万人がサポーターになっています。
(上野注:本当ですか!!そのブレスレット見たことありません)
(3)認知症対策の具体案
2013年12月、当時のキャメロン英首相の呼びかけで
「G8認知症サミット」が開催されました。
そのサミットでの合意を受けて、翌年4月、
イギリス政府はWDC(世界認知症審議会)を発足させました。
私(黒川)も要請されて委員に就任しました。
その場で私が主張している認知症対策は以下の3点です。
(以下の紹介は上野による要約です)
その1「ビッグデータの活用」
年齢、家族歴、遺伝的背景、教育、運動、喫煙、飲酒、睡眠、
トレーニング等のデータを収集し、認知症の関する各種分析を行う。
その2「ソーシャルロボットの利用」
認知症の患者に対しては、
外部から認知的な刺激を与えることが有効と考えられている。
ソーシャルロボットによる人間的なインターフェースは、
これが可能である。
ソフトバンクグループの「ペッパー」はその役割を果たしている。
この能力が向上すれば、
人間と同じようなコミュニケーションが可能となる。
その3「脳・神経とデジタルテクノロジーの融合」
その3「脳・神経とデジタルテクノロジーの融合」
MITが学生の脳の活動をモニタリングした研究結果では、
就寝(上野:これも!)、研究、宿題などの時間は
脳の活動が盛んである一方で、
なんと授業中やテレビを見ているときは、
脳がほとんど活動していないことが判明した。
受動的な刺激は脳の活性化にはつながらないのであろう。
受動的な刺激は脳の活性化にはつながらないのであろう。
こういうバイオとデジタルの融合研究を深めれば、
どういう活動が脳の活性化すなわち認知症対策に有効かが
分かってくる。
2.おわりに
(上野注:これが本書の要約となっています)
日本には今、課題が山積しています。
しかし、私にはその解決の糸口が見えています。
(上野:頼もしいことですね)
日本が前に進むには、
過去の事例から「Howto」の知識を得るのではなく、
「Why」と向き合うこと、
そして何事においても実体験にもとづいた知識を集積することです。
(上野:そのとおり、「Why」が重要です)
多くの古典・哲学・歴史から人間の「知」を学ぶのは、
最低限必要なことですが、プロセスを経験せず、
ただ情報を認識するだけでは、
決して自分の知識・能力にはなりません。
単に人の真似をしても意味がありません。
世界に飛び出し、
アナログ的な実体験をすることによって自らの感性を磨き、
その感性によって自分だけの「Why」を突き詰めていくことです。
それができなければ、
日本はますます世界の潮流から引き離され、凋落していくだけです。
今まさに、岐路に差し掛かっていると言えるでしょう。
(上野:そのとおりです。もう遅いかもしれません)
戦後の経済成長は「Howto」を学べばよかったのです。
国家としての大きな枠組みはアメリカの占領軍から学び、
それに追随していればよかったのです。
企業における終身雇用や新卒一括採用、単線路線のエリート育成、
大学の研究室における徒弟制などは、
そんな「Howto」にもとづく社会システムでした。
そこでは、上の人から学んで。、真似をして、忖度していれば、
出世して組織の上層部に行けたのです。
極論すれば、タテ社会の成功物語だったわけです。
しかし今、その成功体験が大きな障壁となって、
経年劣化したシステムの刷新を阻んでいます。
すでに30年前に冷戦が終わり、デジタル技術の革新によって
世界にパラダイムシフトが起きたにもかかわらず、
高度経済成長に慢心した日本は、
時代の変化に対応することができませんでした。
過去の事例にまったくとらわれずに思考できる人はそういません。
しかし、今の日本の産官学、各組織の上層部には
「Howto型」の教育で養成され
自らの感性で決断を下す経験を持たない
「忖度幹部」があまりにも多すぎるのです。
それが、日本のGDPが、科学研究のアウトプットが、
世界で活躍できる人材が増えなかった主因です。
やるべきことは明確です。
日本の教育を「Howto型」から「Why型」に替え、
行動することです。
そうすれば、企業の体質も変わるでしょう。
これまでのように
大学入学試験の偏差値で人を判断しているような組織は淘汰されます。
すでにその兆候は出ています。
企業人の中には、
「ハーバードのビジネススクールに学べば組織は変わる」
と考えている人もいるようですが、
そこで学ぶのは事例の分析、戦略であり、あくまで評論ですから、
自ら行動しなければ実効性はないでしょう。
大事なのは、個人としての実体験なのです。
みなさんは「Howto」だけを追求するのではなく、
自らの感性に従い心の内にある「Why」に目を向けてください。
自ら行動を起こし、目で見て、手で触れる。失敗から学ぶ。
そうやってつかみ取った感覚が、時代のパラダイムを形成し、
世界で活躍するた目の武器になるのです。
(後略)
まさに、書名にある「(自ら)考えよ」
「問いかけよ」(Why)なのです。
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