2022年3月26日土曜日

英語の言葉遊びその4 「英語の語呂合わせ(Equivoque)」

【このテーマの目的・ねらい】
目的:
 米野忠男氏の英語研究第4弾のご紹介です。
 よく研究されています。
ねらい:
 驚いて楽しんでいただければ結構です。
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日本人は語呂合わせで数字を容易に覚えられる。
日本人はあまり意識しないであろうが、非常に便利でありがたいことだ。
日本人は子供の時から歴史の年号などをよく覚えている。
また電話番号,カード番号、車のナンバーなど語呂合わせで簡単に覚えられる。
数字を覚える語呂合わせも典型的な言葉遊びで、
記憶術(Mnemonics)の一つだ。
英語での数字を覚える語呂合わせは昔から興味を持っていたが、
日本語ほどはうまくいかない。

(1) 以前アメリカ人の技術者に円周率(circular constant, pi)を
何桁まで言えるか聞いたら、早口で7桁を即答した。
どうやって覚えたのかと聞いたら,単に暗記(memorize)したと言う。
では3や5の平方根は言えるかと聞いたら、
「言えない,そんなこと計算機やパソコンですぐわかるから、
覚える必要はないだろう」と言われた。

(2) 我々は円周率も平方根も数字で暗記せずに、
日本語の語呂合わせで簡単に覚えられるのだと説明したが、
なかなかこれを理解してもらうのが難しかった。
私は中学の時から円周率(3.14159265358979)は
「産医師異国に向こう、産後薬なく」と覚えていた。
平方根も多くの日本人は小さい時から、
例えば3の平方根(1.7320508075)は「人並みにおごれや女子」、
5の平方根(2.2360679)なら「富士山麓鸚鵡鳴く」と覚える。
誰が最初に考えたのか知らないが、どれもよくできた名文で秀逸だ。

(3) 英語にも数字を覚える語呂合わせがあるが、
私が知っているのは、言葉の字数で対応するものだ。
例えば円周率なら、「Yes, I know a number(3.1416)」と覚える。
もう少し長いのなら、
「Can I find a trick recalling pi easily? (3.1415926)」というのがある。
これらの文章は「私は数を知っている」、
「円周率を簡単に思い出すトリックはありますか」と、
円周率と関連付けられて秀逸だ。
円周率をこのやり方で32桁まで表す文章がある。
しかし平方根の英語の暗記法を探してきたが見つからない。
米国初代大統領ワシントンの生誕年(1732年)を
3の平方根(1.732)として覚えるというのを見つけたが、
逆に3の平方根を暗記して、ワシントン大統領の生誕年とする方が自然だ。

(4) このアメリカ式の欠点はゼロを10桁で表現するしかなく、
長い言葉を使わなければならない。
3の平方根なら10桁の中に「0」が3つも入るが、
幸い?円周率は42桁目で初めて「0」が入る。
これはほとんど奇跡に近い。
最近10文字の語で「0」を表し、
740桁までの円周率の英文があることを知った。
よくこんなことを考えるヒマ人がいるものだ。
国際的な記憶術のコンクールでは、
円周率を何桁まで言えるかで競うことが多いらしい。

(5) 言葉の文字数によるアメリカ式のもう一つの欠点は、
文章が長くなり,文章自体を覚えるのが難しい。
また文章を数字に戻すのに、
大きい数字は言葉を紙に書かないとすぐには数字に変換しにくい。
日本式なら口で唱えながら、
即座に数字を紙に書けるから断然日本の方が有利だ。

(6)日本の子供なら誰でも小さい時から「九九」を覚える。
これも日本語の語呂合わせのお陰だ。
例えば「8」なら「ハチ,ハ,パ,ワ」などと
九九の調子に合わせて発音の使い分けができる。
昔ニューヨークに駐在した時、現地の小学校に通う日本人の子供は、
英語はできないのに、算数の成績はよいと聞いた。
アメリカ人の子供は悔しいので、「JJを除けば自分は何番だ」と言うと知った。
JJとは日本人(Japanese)と教育に熱心なユダヤ人(Jewish)の意味だ。
やはり子供の時から九九を覚える効果は大きいのだろう。

(7) 英米では小学校で九九を暗誦して覚えるが、語呂合わせは利用できず、
単純に暗記するのだ。
例えば,普通にSix times three is eighteen、
Six times four is twenty four --- とか、
Six threes are eighteen, Six fours are twenty four --。
短い後者の方がより一般的なようだが、
数字が複数で動詞も複数形になっている(1の段はSix one is sixと単数形)。
この6の段は,One six is six,Two sixes are twelve, --- 
と順序を変えて覚えるやり方もあってややこしい。

(8) 英国では1フィート=12インチ,1シリング=12ペンスと12進法があるので、
九九ではなく十二段まで覚えるようだ。
Six elevens are sixty six,Six twelves are seventy twoと。
インドはIT産業の盛んな国で,子供の時から数学教育が徹底しており、
先日のテレビを見てびっくりした。
インドの子供は九九ではなく,19x19まで暗記していて、
小さな子供が早口で唱えている様子を報道していた。
何らかの語呂合わせで覚えるのか、一度インド人に聞いてみたい。

ビクトル・ユゴーの小説「レ・ミゼラブル」の中に、
娘コゼットを預ける際に,養育費の月7フランを6ケ月分前払いすることになり、
「六七,42」と」言う場面がある。
英訳では「Six times seven makes forty two」、
明治時代の黒岩涙香訳では「六七四十二法(フラン)です」となっている。
日本なら「「七六,42」という順序になる。
1ケ5円の物を8ケ買うと,日本なら「五八,40」だが、
向こうでは8ケ分の5円の物を買うと考えて「八五,40」の順序になる。
発想の違いが面白い。

(9) 昔初めてニューヨークに赴任した時、アメリカの電話機には2から9までの
数字の回りにアルファベットが表示してあった。
数字とアルファベットを組み合わせ、
一種の語呂合わせにして電話番号を覚えやすくするためだ。
例えばある劇場の予約受付の電話番号の下4桁は「SEAT」になっていたが、
「7328」のことだ。
今の携帯電話には数字の回りにアルファベットが割り当てられているが、
アメリカの電話機についていたものと同じで、そのまま採用されたのだろうか。

(10) まだ携帯電話などなかった時代のヒッチコック監督の名作に
「ダイヤルMを回せ(原題Dial M for Murder)」というタイトルの映画があった。
「ダイヤル6を回せ」というタイトルではサマにならないだろう。
グレース・ケリー主演のロンドンを舞台にした,
電話が殺人に大いに関わったストーリーだった。

 


1 件のコメント:

Unknown さんのコメント...

面白い情報を有難うございます。現役時代は英語に悩まされたものでした。