2022年3月27日日曜日

「縄文語の発見」素晴らしい研究です!!!

【このテーマの目的・ねらい】
目的:
 現在我々が使っている日本語は、その基礎部分が縄文語である
 という説を知っていただきます。
 縄文語がどのようなものであったのかを知っていただきます。
ねらい:
 そういう見方で、日本語や日本人の思考法を考えてみましょう。
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本テーマは、小泉保、元関西外語大名誉教授(言語学者)の
1997年の著作のご紹介です。


だいぶ前の著作なのですが、
最近私は縄文時代に関心を持っていて見つけました。
本書は以下の構成となっています。
第1章と第2章は、一般読者のために前提知識の提供的位置づけです。

 第1章 縄文文化
 第2章 縄文人
 第3章 日本語系統論
 第4章 縄文語の復元
 第5章 弥生語の成立
 第6章 縄文語の形成

氏は、日本語の系統論では、弥生語の研究まではたどりつくが、
その先の研究がされていないという問題意識から、
縄文語がいかなるものであるかの解明にチャレンジされたのです。
残された文字はないのですから、どうやって探求するか、です。

そこで氏は、柳田国男氏の提唱する「方言周圏論」に着目しました。
言語は、発生の中心部から次第に周辺に広がっていく、
順次新しい言語(ことば)が生まれると
それが波紋のように外側に伝わっていく。
結果として、外側に古い言語が残っている。
というものです。

そこで、カタツムリの例だと
ナメクジ、ツブリ、カタツムリ、マイマイ、デデムシの順に新しい。























カオとツラ(周辺部がツラ)



トンボ
アゲンヅ⇒アゲンズ⇒アケズ 東日本
    ⇒アケヅ⇒アキヅ  西日本
    ⇒アゲンヅ     琉球
と変化していることを確認し、
この元になっている「アゲンヅ」が縄文語であろうと推定されています。

以下のように分析をされています。



単語だけでなく母音・子音の変化も探求されています。
東北地方は、母音系で、息も駅も「エギ」
子音系で、赤(アガ)、底(ソゴ)、篭(カンゴ)、窓(マンド)
こういう言葉の全国分布を調べられました。
その詳細は非常に興味深いものですが、紹介しきれませんので、
関心のある方はぜひ本書をご覧ください。

その検討結果、縄文語にはいくつかの方言があることを結論付けされました。


その縄文語がその後弥生語の影響を受けて現在の日本語になった
とされています。



現在の日本語が縄文語を受け継いでいるとすると、
言語=思考特性ですから、
現在の日本人は縄文人の思考特性を受け継いでいることになります。
自然との共生観、共同体意識、悠久性(1万年)などを
DNAで引き継いでいるのです。

2 件のコメント:

上野 則男 さんのコメント...

寺田弘司さんからのメールです。

今回全編じっくり読ませて戴きました。
非常に充実した内容で、興味深いものでした。

縄文語の件も良く研究されていますね。

アイヌ語:
アイヌ語は主語が単数と複数では動詞が変化する興味深い言葉(註)です。
ロシア人の女性(ブガイワさん)で、北海道に住んで、
一生をアイヌ語の研究に捧げている人がいます。


行く 一人 アルパ
二人 パイエ

座る 一人 ア
二人 ロック

寺田弘司

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寺田弘司
Dr. Koji Terada(京都大学工学博士)
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(株)寺田国際事務所/先端医療技術研究所
代表取締役社長

Unknown さんのコメント...

上野則男さま

中西昌武です。ご無沙汰いたしております。毎回、楽しみに拝読しております。

今回の記事を読み、若い頃に読んだ論文を思い出したので、コメントいたします。

柳田国男が弟子の千葉徳爾に、自分の考案した重出立証法をきちんとした科学的方法に整えたい。ついては自然科学(地理学)出身のお前がやってみよ、といった風に宿題を出し、千葉があれこれ考えて到達したのが、遠山啓が『無限と連続』岩波新書で説明した位相の応用でした。彼はこれを小論にまとめ、その後、何本かこの方法を適用した成果を論文にまとめています。

千葉は、民族調査で得た民話の断片を解析し、それぞれの構造を突き合わせると、位相構造が浮かび上がってくる場合がある。こうした立証法も成立するのではないか、と柳田に回答したようです。

たぶん、どこかに千葉の論文のコピーが残っているとは思いますが...

縄文語の研究も、千葉の方法と通底しているかもしれません。

以上です。

中西昌武 名古屋経済大学名誉教授 博士(工学)