2021年10月23日土曜日

「成長と分配」のカギは何か?

【このテーマの目的・ねらい】
目的:
 「成長と分配」はどうすれば実現できるかを整理します。
 目新しいことではなく当然のことです。 
ねらい:
 新政権には、国民迎合でなく
 長期的に日本のためになる抜本策を期待したいものです。
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今回の衆議院選挙の主たる争点は「成長と分配」になっているようです。
しかし、各党の打ち出している具体的な政策は
ほとんどが分配に関するものであり、
成長に関するものはほとんど見当たりません。

具体的な分配政策は、
国民にアピールしやすいので選挙対策として打ち出しています。
 自民党 非正規社員や学生に経済的支援
 公明党 18歳までに一律給付10万円
 立憲民主党 消費税軽減、低所得者への一時金給付
 他の野党ほとんど 消費税軽減

党首討論のテレビなどを見ても、
分配の内容が多少異なるものの本質はほとんど変わりません。
しいて言えば、消費税の削減を行うかどうかが異なるだけです。
これでは、分配論では政党選択の理由になりません。

識者は当然ながら、この分配重視政策に疑問を投げかけています。
安倍元総理もこう言っています。
「政府がどれだけ所得の分配を繰り返しても経済成長ができなければ、
経済全体のパイは縮む」
そのとおりなのです。
「成長なくして分配なし」は公理なのですが、
成長戦略は、代々の政府が取り組んできても成果が出ていませんし、
これからの政策を国民にアピールすることも難しいのです。

では、成長を実現する政策はないのでしょうか。
以下にそれを検討します。
1.日本の「成長なし」の状態
欧米先進国と日本の年収推移 出典:日経新聞2021/10/16
(注:裏面の文字が写っています)


日本だけが取り残されています。30年間横ばいです。
成長戦略は20年も唱えられていますが実現できていません。

2.失業率の差 
では各国と何が違うのでしょうか?
それは失業率です。
各国の失業率の変化を見てください。
出典:総務省統計局



日本(太線)は低位安定で3%程度を維持しています。
米国は、現時点では約5%ですが、20年4月には約15%です。
ヨーロッパ先進国も、失業率の変動があります。

失業率が長期間低いことは自慢になりません。
低失業率が低成長の証拠なのです。
なぜか?
労働の流動性が低いので低失業率であり、
その結果、低所得になっているのです。
以下にその状況を見ます。

1.労働の流動性が低い原因
以下の2点です。
(1)解雇の制限
日本は伝統的に「和の精神」「弱者保護」の考えが強く、
解雇に対する規制と罪悪感の醸成がされています。

労働契約法(16条)には、解雇には
「客観的に合理的な理由」と「社会通念上の相当性」が必要である
と書かれています。
一般に「解雇権濫用法理」と呼ばれている考え方を、
法律の条文として明確にしたものです。
我が国では、この「解雇権濫用法理」によって、
使用者の解雇権が大きく制限されています。

判例でも、以下のような状況に対する解雇条件が
厳しく制限されています。
・勤務成績不良
・業務命令違反
・無断欠勤
・会社の経営不振

私は、日本が低成長から脱却できない「諸悪の根源」は、
厳しすぎる解雇規制だと思います。

(2)弱者の補助
弱者への補助金が国費から出されます。
農業がその典型ですが、コロナでの補助金もその要素が大きいのです。
そのために、低生産性産業・企業が延命しています。
低生産性企業は、
政府が賃上げの旗振りをしても応ずることができません。

2.労働の流動性を高める対策
ではどうすればよいのでしょうか?
日本社会ではタブーとなっていることに手をつけなければなりません。
成長産業の助成と合わせ、解雇規制の緩和を積極的に進めるのです。
これができるのは、
「自民党をぶっ潰す」と言った小泉元首相くらいの人でしょう。
信念だけでなく、その政策を国民に納得してもらえる説得力も必要です。

(1)「不当な解雇」の条件を緩める
特に、経営不振による解雇の条件を緩和します。
経営不振にもかかわらず人員削減ができないと、
給与の低下が免れないだけでなく、
倒産を招き全員共倒れとなるリスクがあります。
 
(2)再就職のための教育・訓練制度を強化する
失業者に対して、新しい職を得るための助成をします。
昨今は「リスキリング」というような言葉で捉えられて
その必要性が強調されていますしその実践もおこなわれています。
それをさらに強化するのです。
国庫負担増となりますが、「成長」が実現すれば回収可能です。

教育・訓練制度の補強として、以下のような対応が考えられます。 
 適性判定を行いその人向きの職業分野を判定し、
 それに合致した職業訓練を実施します。
  対人関係が苦手でない人 
   介護福祉関係、看護関係、 
  対人関係が苦手でモノが好きな人
   地域の手芸品作りなど手先を使う仕事 
   ソフト開発など頭を使う仕事 
  対人関係が苦手で作業が好きな人
   身体を使うボランティア的活動、
   清掃作業、農業、建築現場作業、
  
どうしても再教育できない人材向けに「失業対策事業」を強化します。
 公共施設・公園の整備・清掃作業とか。
 可能な限り生活補助は行わないません。
 人間の尊厳を損ねるからです。

(3)助成産業を決定し、その産業への助成に傾斜する。
無差別「公平」なバラマキ助成は止めます。
以下のような産業を助成対象とします。
 医療、介護福祉、高齢者向けサービス、教育、IT、基幹製造業、
 近代化流通業
衰退産業は申し訳ないけれども放置です。
自営の飲食店・商店も同様です。
それが長期的・全体的な日本経済・企業の強化になるのです。
 
(4)生産性向上企業への助成
企業に対する助成としては、
生産性(売上高・人件費比率)を上げた企業(≒人員削減した企業)を
対象にします。

いかがでしょうか?
「信ずる者は救われる」のではないでしょうか?

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