2015年12月24日木曜日

「人類を変えた素晴らしき10の材料」って何でしょう?

【このテーマの目的・ねらい】
目的:
 日頃の日常生活で恩恵に浴している物質の本性(ほんしょう)
  の解説本があることを知っていただきます。
 そのほんの一端を知っていただきます。  

ねらい:
 ぜひ、原本を読んでみてください。

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この本は、
ロンドン大学の「材料と社会」学部の(そんな学部があるのですか!)
マーク・ミーオドヴニク教授の書かれたものです。

当書はいくつかの場で
2014年の年間ベストブックに選ばれています。

10の材料と言われると、何と思いますか?

まず鉄は入るでしょうね。
「鉄器時代」と言われる時代区分があるくらい
人類の歴史を変えているのですから。

マーク教授jはほかに何を挙げるのでしょうか。

紙 文明の利器ですものね。
コンクリート そうでしょうね。
チョコレート なぜそんなに重要?
プラスティック これは異論なしでしょう。
ガラス   そういえばそうですね。
グラファイト これは何?
磁器  なぜ?

そもそも教授は、
高校生の時に駅で暴漢(たかり)に襲われ、
テープを巻きつけたカミソリの刃で
5枚も重ね着していた衣服を通って背中に大きな傷を作る
という経験をされています。

「そんなカミソリでこんなに凄いことになる」という驚きが
先生が「モノ」に関心を持たれた初めだったのです。

教授が選んだ10の材料について
いくつかのトピックスに基づいてやさしく面白く解説しています。

「紙」の中の「トイレットペーパー:21世紀の課題」の中には、
こういう記述があります。

 お尻の穴を拭くという、強烈な臭いを伴う生々しい行為において、
 ほかにもっと衛生的かつ効果的な方法がいろいろ考案されているのに、
 私たちはいまだに紙を使っている。
 この事実にはあらためて驚かされる。

 私たちがトイレットペーパーを使うことがもとで連鎖的に起こることは
 いくつもある。
 たとえば、「ナショナルジオグラフィック」誌によれば、
 世界中で行われているお尻拭きのために
 毎日2万7千本の樹木が伐採され加工されている。

 この紙は、一度使われただけで流され捨てられるわけで、
 これだけの数の樹木の一生の終わり方としては
 ひどいことに思える。

なるほどそうですね!!

日頃何気なくその恩恵に浴していることについて
あらためて考えさせてくれます。

そのトピックス名の代表例をいかに挙げます。

日本刀の凄さの秘密
なぜスプーンは味がしないのか

古本のにおいの元

コンクリート
ローマ人が解決できなかった問題

チョコレート
病みつきになる理由

フォーム(泡)
無色なのに青く見える

プラスチック
最初の発明者は誰?

ガラス
なぜ万物は透明ではないのか

グラファイト
鉛筆で物が書けるわけ

磁器
白い磁器の謎を解く

インプラント
軟骨の複雑さ


この中から「日本刀の凄さの秘密」をい以下にご紹介します。

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日本刀の凄さの秘密

 製鋼法がまとう神秘性はさまざまな神話を生んだが、
なかでもとりわけ長く語り継がれている神話の一つが、
ローマ人撤退後のブリテン統一と秩序の回復を象徴している。

しばしば、アーサー王の伝説の剣エクスカリバーは魔法の力の
たまものとされ、ブリテンの正当な統治権と結び付けられた。

戦場で剣が折れて騎士が丸腰になることが多かった当時に、
剛健な戦士の振り回す質の高い銅鉄の剣がなぜ文明による無秩序の
支配を表すようになったのかはたやすく理解できる。

製鋼の技法が必然的に高度に儀式化されたという事実も、
この材料が魔法と結び付けられるようになった理由の説明に
一役買っている。

 このことがどこより当てはまったのが日本だった。
この国では数週間かけて侍の刀を鍛えていたほか、
刀を鍛えることが宗教儀式の一部ということもあった。

天叢雲剣(あめのむらくものつるぎ)は伝説の日本刀で、
武勇で名高いヤマトタケルが敵を一掃したとき、
この剣が魔法の力を発揮したという説話がある。

物語や儀式は空想的だが、ほかより一〇倍強くて鋭い刀を
つくれたというのは単なる神話ではなく事実だった。

一五世紀になると日本刀の鋼鉄は史上最高の品質を極め、
二〇世紀に入って科学としての冶金が登場するまでの五〇〇年間、
抜きんでた存在だった。

 日本刀の材料は玉鋼(たまはがね)と呼ばれる特殊な鋼鉄で、
その材料は太平洋沿岸諸国でとれることの多い火山性の黒砂(砂鉄)
だった(黒砂が組成の大半を占めている鉱石が磁鉄鉱で、
方位磁針の針は当初、磁鉄鉱を材料につくられた)。

玉鋼は「たたら」と呼ばれる高さ一メートル前後、幅一メートル前後、
長さ三メートル前後という大きな粘上の器の中でつくられる
(訳注:「たたら」という言葉は、炉のほか、踏みふいご、
炉を収める大きな家屋である高殿、あるいはたたら吹きを行う
製鉄所を指すこともある)。

まず内部で火を起こして器を「焼成」する――器の材料である
粘上を焼き固めて陶にするのである。

それが終わったら、黒砂と木炭の層を慎重に交互に積み重ねる。
これが陶の炉の中で焼き尽くされる。

作業にはたたらをつくるところから数えて一週間ほどかかり、
四~五人ほどで絶えず見守って、人力のふいごでたたら内部に
空気を送りながら、火の温度を高く保ち続ける。

最後に、たたらを壊して中を開け、灰と砂や炭の残りかすの中から
鋼鉄をかき出す。

かき出されたこの変色した鋼鉄の塊に外見上の魅力は何もないが、
ほかにない特徴として炭素含有量の幅がたいへん広く、
とても少ないところからとても多いところまでさまざまな部分がある。

 革新的だったのは、日本人は硬いがもろい高炭素鋼を、
強靱だが軟らかい低炭素鋼と区別できたことだ。

彼らは見た目と、手に持った感じと、たたいたときの音だけで判断していた。
種類の違う鋼鉄をより分けることで、彼らは確実に低炭素鋼を刀の
心金に用いることができた。

それにより刀はたいへん強靱に、あるいはねばり強くなり、
刀が戦で折れる可能性はほとんどなくなった。

刃先には高炭素銅が鍛接された。高炭素鋼はもろいがたいへん硬く、
それゆえきわめて鋭くできる。

鋭い高炭素鋼により強靱な低炭素鋼を覆うことで、
多くの人が不可能と思っていたものができあがった。

相手の刀やよろいに当たっても壊れないのに、首をはねられるほどの
鋭さを保てる刀である。
洋の東西を間わず最高の品だった。

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