【このテーマの目的・ねらい】
目的:
核拡散防止条約(NPT)の矛盾点について考えていただく。
核兵器は無くならないのだろうかと考えていただく。
大国のエゴについて再認識していただく。
ねらい:
どうしたらよいのでしょうか????
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
5月22日、国連本部で4週間に亘って開催されていた
核拡散防止条約(NPT)再検討会議は決裂し
全会一致を前提とする合意文書は採択されませんでした。
24日の日経新聞から
NPTとは何かについての解説を転載します。
核不拡散、核軍縮、原子力の平和利用が目的の条約で
80年に発効した。
米英仏ロ中の5カ国には核兵器の保有を認め、
その他の国には禁じている。
保有国には核軍縮交渉を義務付け、
非保有国には原子力の平和利用の権利を認めている。
5年に1度、核軍縮や不拡散の再検討会議を開く。
加盟国は191カ国。
インド、パキスタン、イスラエルは未加盟。
北朝鮮は2003年に脱退を宣言している。
岩波書店から
「NPT 核のグローバル・ガバナンス」
という5人の論者による解説書が出ています。
当書の帯には
NPTは「核なき世界」をもたらすか?と書かれています。
ご承知のように、
核兵器は実際に使用することはほとんど不可能ですが
(敵の反撃なしに戦いを終了させる見通しが持てないから)、
核兵器を保有していることが、
敵の攻撃を抑止できるのです。
したがって、核保有国と非保有国では
戦争能力では圧倒的な差があります。
したがって、戦争をしなければならない可能性のある
インド・パキスタン・イスラエル・北朝鮮は
万難を排して核兵器を保有するのです。
当然のことです。
核保有国が「俺たちはいい、お前たちはいかん」
というのはエゴで、
そんな身勝手な理屈は通らないでしょう。
私は、以前このブログで
「北朝鮮の核兵器保有をアメリカが非難している」
のを身勝手だと批判しました。
NPT条約には191カ国が参加していますが、
ほとんどが非核保有国です。
それらの多数の国が核の削減や廃絶を要求しますが、
核保有国は自らの論理・都合で核兵器の保有・強化を続けます。
目下の核軍拡派はロシアと中国です。
より強い国に対抗するにはそうせざるをえないのでしょう。
やるなら、一斉に誰も持たない、ということにすることですが、
国家は誰しも強くなることを目指すのでしょうから、
現実の抗争がある世界でそんなことが
実現できそうにありません。
再検討会議が全会一致を前提にしているのは、
非核保有国の多数決で決められたら困るからです。
こんな身勝手ってありますかね!
よくこんなNPT会議が続いています。
それは、
人類が核兵器の悲惨な使用結果を避けたいという
思いが強いからですが、
今回の検討に参加された方々は空しい思いでしょうね。
NPTの不平等性について
NPT書の「はじめに」で秋山信将氏はこう述べています。
NPTは、その特徴を並べてみると、
それが極めてユニークな存在であることに気づく。。
第1に、
主権国家間の平等性を最も重視する国際社会にあって、
核兵器の保有が許される国(条約上は、核兵器国と呼ぶ)と、
許されない国(同様に非核兵器国と呼ぶ)を
法的に明確に区別する、不平等条約である。
NPTは、1967年1月1日前に核実験の成功した国に対して
核兵器の保有を認める一方、
それ以外の国に対しては核兵器の保有を禁じ、
核兵器が国際社会に拡散することを防止する
ことを主たる目的としている。
中略
核兵器の拡散はその行為そのものが禁止されている一方で、
このような不平等性を解消するための努力としての
核軍縮については、
条文上では「誠実に交渉する義務がある」だけである。
核兵器国と非核兵器国は、法的な地位だけでなく、
条文上の義務についても不平等に見える。
中略
NPTの条約は、それが存続する限り
このような不平等な状態を固定化することになる。
主権国家間は平等であるという
建前を最重要視する国際社会にあって、
その国家の存立にかかわる安全保障の問題で
不平等性を持つこの条約は、
これだけ多くの締約国を抱え、
多様な思惑が交錯する中でどのように運営されているのであろうか。
本書の構成はこうなっています。
第1章 核兵器不拡散条約(NPT)の成り立ち 秋山信将
第2章 再検討プロセスにおけるグループポリティックス 西田充
第3章 核軍縮の現状と課題 戸崎洋史
第4章 核不拡散と平和利用 樋川和子
第5章 中東の核兵器不拡散問題と対応 戸崎洋史
第6章 「核の非人道性」をめぐる新たなダイナミズム 川崎哲
第7章 市民社会とNPT 土岐雅子
ご関心のある方はお読みください。
0 件のコメント:
コメントを投稿