2022年9月13日火曜日

可哀そうないじめ自殺を防ぎましょう!!

【このテーマの目的・ねらい】
目的:
 いじめによる自殺の状況を確認いただきます。
 いじめによる自殺防止対策を検討してみます。
ねらい:
 ぜひ、GIGAスクール態勢で、
 この対策も実現してほしいものです。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
2021年2月12日、いじめを苦にして学校の4階から飛び降りた
石澤準奈ちゃん(中学1年生) 出典:文春オンライン

こんなに可愛くて前向きな子供を死に追いやった
いじめは断じて許せません。
ご両親のお気持ちはいかばかりかと拝察いたします。

別項上野則男のブログ: 悲惨な幼児事故死の対策を考えましょう! (uenorio.blogspot.com)で幼児事故死を取りあげましたので、
「いじめによる自殺」についても、その対策を検討してみました。

1.いじめの発生状況
文部科学省の発表によると、いじめの総件数は以下のようになっていて
2020年度は7年ぶりに減少となっています。
 2018年度 54万件
 2019年度 61万件 
 2020年度 51万7千件
        (小学校42万件、中学8万件、高校1万件)

2019年度では、その内訳は
 からかいや悪口       37万9千件
 暴力行為           7万9千件
 ネットやSNSのひぼう・中傷 1万8千件

 命の危険や不登校につながった疑いのある「重大事態」は
 合計723件(1%強)です。
 
因みに、「いじめ防止対策推進法」施行は2013年9月です。
2011年に起きた「大津市中2いじめ自殺事件」が
契機となっています。

この法では以下のように定められています。
それでも、その後の自殺事故を防止できていません。
暴力行為ではない表面化しにくいいじめについて、
有効な手を打てていないのです。

1 学校の設置者及び学校が講ずべき基本的施策として
(1)道徳教育等の充実、(2)早期発見のための措置、
(3)相談体制の整備、
(4)インターネットを通じて行われるいじめに対する
対策の推進を定めるとともに、
国及び地方公共団体が講ずべき基本的施策として
(5)いじめの防止等の対策に従事する人材の確保等、
(6)調査研究の推進、(7)啓発活動について定めること。

2 学校は、いじめの防止等に関する措置を実効的に行うため、
複数の教職員、心理、福祉等の専門家その他の関係者
により構成される組織を置くこと。

3 個別のいじめに対して学校が講ずべき措置として
(1)いじめの事実確認
(2)いじめを受けた児童生徒又はその保護者に対する支援
(3)いじめを行った児童生徒に対する指導
又はその保護者に対する助言について定めるとともに、
いじめが犯罪行為として取り扱われるべきものであると
認めるときの所轄警察署との連携について定めること。

2.いじめによる自殺の発生件数
厚生労働省の基礎資料を基に文科省が作成した資料によりますと、
小中高生の自殺者総数は、以下のようにかなり増加傾向にあります。
   2016年 289人
   2017年 315人
   2018年 333人
   2019年 339人
   2020年 479人

自殺原因は2020年の場合 学友との不和原因 いじめ原因
   小学生  14人             1人
   中学生 136人     7人      4人
   高校生 329人            19人      1人
   合計  479人    26人      6人
となっていて、この傾向は数年大きく変わっていません。
ということは、
「学友との不和」を入れても「いじめ」原因は
それほど多くないのです。 

3.いじめ原因自殺の過去の状況
一般社団法人「全国ICTカウンセリング協会」が公表している
「平成のいじめ事件簿」で確認しますと、
いじめ原因自殺の事例は、以下のようになっていました。
  1989年 1件
  1991年 1件
  1992年 1件
  1993年 7件
  1994年 9件
  1995年 6件
  1996年 5件
  1998年 2件
  2005年 1件
  2006年 2件
  2007年 1件
  2010年 1件
  2011年 1件
  2013年 1件
  2015年 1件
つまりバブル景気が崩壊して、社会が混乱していた時に
いじめ自殺が多発したのです。
しかもその頃の事件は、男性が集団で特定対象に暴力を加えるという
凄惨なものが多数でした。
その典型例が、前掲の「大津市中2いじめ自殺事件」で、
6人の少年が関わっています。

4.最近のいじめの形態
2019年8月12日の日経新聞にこういう記事が載っています。
「子どもの発達科学研究所」などの研究グループが行った
小学4年~中学3年2234人を対象にした調査では、
36%の児童生徒が3か月以内に何らかのいじめを受けていた。

その内訳は、以下の図のとおりです。











これによれば、「言葉のいじめ」「うそ・うその噂」が多く、
これは、他人からはよく見えません。
冒頭の石澤準奈ちゃんの場合も、「死ね、キモイ」とか書かれた手紙が
学校の下駄場に置かれていました。

以前のいじめのように暴力を受けた場合だと、
外傷がありますから学校でも家庭でも気が付くのですが、
「言葉のいじめ」の場合は、
本人が告げない限り他の人にはわかりません。
どうすれば、いじめによる不幸を避けることができるのでしょうか。

4.いじめによる自殺防止対策
いじめに気が付いて助けをして上げられるのは、
学校(教師)、家庭、友達です。

まず、学校や教師は、
事件を起こした学校やその教師の言動をみていると、
いじめに気が付いていても、事なかれ主義で見てみぬふりです。
とても頼りにはできません。

では家庭はどうでしょうか。
石澤準奈ちゃんの場合、
家庭ではご両親ともよい関係にあったようです。
それでもご両親に相談していないのです。
自分一人で抱え込んで死んでしまいました。
ご両親の無念さはいかばかりかと思います。
家庭のフォロにも限界があるようです。

友達は、弱いものの味方をしてくれません。
強い方に迎合するのが人間の心理です。

ではどうすればよいのでしょうか。
以下のような方法でAIの力を借りましょう!!

1.いじめを受けやすい条件の調査をします。
過去のいじめ自殺例は、前掲のように数十例しかありません。
そこで、
前掲の「子どもの発達科学研究所」の調査を1万人規模で実施し
どういう児童生徒がいじめを受けやすいかの分析をします。

2.全児童生徒について、この条件への適合度を確認します。
個人情報保護法とかの壁があるかもしれませんが、
その情報を関係者(家族を含む)限定にすればよいのです。
最もいじめを受けやすいAランク者について、担任教師は留意します。
このデータは、次の3でも利用します。

3.自殺につながる可能性のある兆候を把握します。
国が進めているGIGAスクール構想によって、
全国の公立小中学校において1人1台のPC配備がほぼ完了しています。
そこで、このPCを利用して、本人に対して定期的(毎月末)に
以下のようなアンケートを実施します。

 当月の学習で良かったこと、その理由
 当月の学習で不満だったこと、その理由
 当月、いじめを受けたか、どういういじめか。
 そのほか、学校に対する意見

両親や先生には相談しにくい気持ちがあったとしても、
無機質的なPCに対しては、
無心ですなおな気持を表示できるのではないでしょうか。

準奈さんの場合、
学校では紙のアンケート票でいじめの有無を確認していて、
準奈さんは11月にいじめがあることを申告していましたが、
なぜかそのデータは活きませんでした。

この毎月の時系列データをAIが分析し、
学習方法上改善すべきこと、
いじめに対して対応する必要があることを明らかにします。

AIは絶対ではないので、担任教師がその情報を判断します。
その判断結果は、校内の確認組織で確認します。
その経緯は確実に「証拠」として残ります。

だんだん、このAIが賢くなれば
有効に機能するようになるのではないでしょうか。

1 件のコメント:

上野 則男 さんのコメント...


在職していた帝人時代の仲間FJさんからいただいたメールを転載いたします。
たいへん大きな視点で、これらの問題解決の方向を示唆してくれています。
ぜひお読みください。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
この度の170号(22年10月号)もテーマも内容もとてもよかったと思います。
中でも、幼児の事故、いじめによる死という、
誠に切実な問題に切り込んで呉れたのは秀逸でした。

昨日今日幼い子供が命を落とす事件や事故が連日報じられています。
その子供たちを守るべき大人が、故意や不注意で多くの子供たちが犠牲になっている。
その現状をデーターと、犠牲者が死に至る経緯を詳細に示していただいて、
私達大人が黙然としているわけには行かないと思います。

私は、常々、学校でのいじめについて憂慮していました。
上野さんによると「いじめ防止対策推進法」が施行されたのは2013年だと。
以降既に10年近く経っているのに、
その後の小・中・高校に於いての総件数は減っていない。

大きな事件がが起こるたびに、テレビでも、教育関係者が出てきて、
様々な、説明や警告がなされている。
世の中は、いじめやいじめ原因での自殺を何とか防ごうとしているようだが、
効果が上がっていないということです。

世の中には、いじめやいじめによる自殺のように、
国としても明らかに何とか防ぎたいと考え施作を施しながら
一向に効果が上がらない事柄が大小いくつも思いつく。

大きいところでは、
1.人口減少への歯止め
2.行政のデジタル化、ハンコの廃止
3.社会全般における男女の格差
4.不公平税制など

個人に係るところでは、上記の学校におけるいじめ問題が第1だが他にも、
1.いつまでたってもなくならないオレオレ詐欺
2.発展途上国からの外国人技能実習生の待遇改善
3。上野さんが取り上げた児童虐待
4.最低賃金のアップ、勤労所得の上昇

他方で、難題でありながら、政策で制度や事態を転換し改善させた実例もある。
1.古くは旧国鉄の民営化(中曽根総理)
2,郵政や専売行政の民営化(小泉総理)
3.近いところでは待機児童の解消
4.コロナワクチンの早期実施(菅総理)

このように見てくると、
首相・政府が本気になって推進したテーマは実現し、
本気になっていないテーマは実現していないことになる。

どんな困難な課題でも(国内課題である限り)政府が本気になれば実現できるし、
実現できないことは本気ではない・・ということ。
であれば、いじめの根絶について、
これまでの政府は本気になって対応していないということになる。

では、政府を本気にさせるには・・・・
国民自身が本気になって、政府に圧力をかけ続ける以外にない。
其のためには、私達国民一人一人が本気になり、
そして訴え続けること・それ以外にはないと思います。

そのために、上野さんが私たちに提供してくれた、
このようなメルマガは、絶好のツールであると思う。
その意味で、上野さんのこれまでの尽力には最大の敬意を表したいと思うし、
皆さんにも、大いに参画していただきたたいと思います。
85歳にもなって、何を今さら・・という声も聞こえそうだが、どうぞよろしく。