2015年7月19日日曜日

新国立競技場建設の無責任体制の全容

【このテーマの目的・ねらい】
目的:
 新国立競技場建設白紙還元問題の原因を究明します。
 日本人の思考・行動体質を再確認します。

ねらい:
 これからどうあるべきか考えてください。

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とんでもないことが起きてしまいましたね。
2520億円の建設計画が白紙になったのは歓迎ですが、
2年間の時間と労力が無駄になりました。

なぜこのようなことになったのか、
私なりに解明してみました。


新国立競技場建設の責任体制



組織

責任者名

権限・責任

コメント

政府(内閣)

安倍晋三総理大臣

行政上の全責任


文部科学省


田中真紀子文部科学大臣
下村博文文部科学大臣

豊かな人間性を備えた創造的な人材の育成、学術スポーツおよび文化の振興並びに科学技術の総合的な振興を図る

スポーツの振興が重要使命となっている。

日本スポーツ振興センター(JSC、文科省の外郭団体、独立行政法人)

河野一郎理事長
元筑波大学人間総合科学研究科スポーツ医学専攻教授

基本任務は保健体育の推進。

国立競技場の運営も責任範囲。

東京五輪に関する実務面の遂行責任を負っている。

国立競技場将来構想有識者会議(JSCが設置)

委員長なし

新国立競技場のデザインコンペの実施決定、結果承認

当時の委員には石原都知事含む。安藤氏は石原氏が推薦したという説もある。

(JSC)新国立競技場基本構想国際デザイン競技審査委員会

委員長安藤忠雄

新国立競技場のデザインコンペの実施、審査結果決定

「自分達はデザインを決めただけだ」(安藤氏)

(JSC)新国立競技場基本構想国際デザイン競技 技術調査

和田章総括管理(東京工大名誉教授、日本建築学会会長)他9人の分野別専門家

9/26~10/12の期間に、応募46作品の実現可能性を評価(〇実現可能、△設計段階で重要な調整が必要、×明らかに実現不可能)

分野別専門家を網羅したのはよいが、こんな短期間に正当な評価をするのは困難だろう。

東京オリンピック競技大会・東京パラリンピック競技大会推進本部(2015年6月25日設置)

首相が本部長(官房長官と五輪相が副本部長)

大会の円滑な準備や運営を行うための基本方針案を作る。


この体制編成を早期に実施すべきであった。

五輪担当大臣

遠藤利明大臣(元文部科学副大臣)

五輪相は文部科学省や国際行事を担う外務省など、複数の省庁にまたがる準備を統括する。

責任権限はあいまいのよう。
欄外注参照。


東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会

森喜朗会長

JOCと東京都により2014124日に設立され、JOC、東京都、政府、経済界、その他関係団体と共にオールジャパン体制の中心となり、大会の準備及び運営に関する事業を行う。

白紙になった競技場案が設定された時には存在していない(責任はない)。

「準備と運営」の範囲が不明確だが、JOCも東京都も競技の主催者・運営者であり競技場の利用者でしかない。

 (5月30日産経ニュース)

10月には政策中枢としてのスポーツ庁が発足する。
同庁長官との役割分担も明確にすべきだ。

さしあたり担当相が「五輪の大会準備と運営の調整」にあたり、
長官は
「五輪の選手成績を含む競技力向上と振興、普及」の司令塔となる。
いたずらに船頭を増やして
責任の所在があいまいになることは戒めたい。

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形式的な責任関係は明確でした。
文部科学省からの一本線です。

 文部科学省
    ↓
 日本スポーツ振興センター(JSC)
    ↓
 国立競技場将来構想有識者会議
    ↓
 新国立競技場基本構想国際デザイン競技
 審査委員会

これ以外の組織、
森喜朗会長の東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会
新設の遠藤利明五輪担当大臣には責任はありません。

7月22日にも、
森会長は「自分には責任がない」と言っておられます。
施設の利用者の立場であって建設側ではないのです。
なぜマスコミ・世論は
責任があるかのような追求をするのでしょうね。

「なぜ今回の問題が起きたのか」はこうだと思われます。

1.JSCがすべてを取り仕切った責任者
有識者会議、審査委員会、技術調査に著名人を集めて
結果が信頼できる状況を作ってそれを「悪用」しました。
(自分達も評価力がないのでしょうから仕方がないですかね)

デザイン競技審査委員会の審議経緯を隠して
未だに公表していません。

2.有識者会議の無責任
有識者会議には大物を集めています。
しかし、この人たちはお飾りで実質検討をしていません。
審査委員会およびJSCが仕切った技術調査の結果を
鵜呑みにしています。

状況がどうであれ、
認めたのだから第3者に対して責任があります。

3.デザイン競技審査委員会が直接責任者
安藤さんは「自分達はデザインを決めただけだ」
などと開き直っています。

たしかにデザインを選定しただけかもしれませんが、
コストを含めた実現可能性を評価していないのは、
社会人として許せません。

もしそういうことなら、そのことを明確に、
有識者会議に答申すべきでした。

この審査委員会でも、
実現可能性について異論が出たようでした。
しかし、JSCはその経緯を公表していません。

最後は安藤さんが押し切ったようです。
おそらく他の委員は、
安藤さんが当時の石原都知事の支持がある
ことで譲ったのでしょう。

第一、なぜザハの案を採用したのか疑問です。
規模が要求を超えていて、
予定する場所に収まらないのですよ!!
コストだって
1300億円程度という目安の提示はあったのです。
それなのに1600億円とかの概算を出しています。
そんな案は失格でしょうに。

因みに、当初構想の1300億円だって、
これまでのオリンピックスタジアムの建設費からすると、
高すぎです。


2000年

シドニー

約680億円

2004年

アテネ

約350億円

2008年

北京

約500億円

2012年

ロンドン

約800億円

 安藤委員長の
「強いインパクトを持って世界に日本の先進性を発信し
優れた建築・環境技術をアピールする」
にこだわって他の条件を無視しています。

現時点では、
「周辺環境との調和」に関して批判があるようです。

本来このコンペの募集条件ではこう表示されています。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
(1)大規模な国際競技大会の開催が実現できるス
タジアム
・国家プロジェクトとして、世界に誇れ、
 世界が憧れる次世代型スタジアムを目指す
アスリートやアーティストのベストパフォーマン
 を引き出す 高性能スタジアムを目指す

(2)観客の誰もが安心して楽しめるスタジアム
世界水準のホスピタリティ機能を備えた
 スタジアムを目指す
開閉式の屋根や、
 ラグビー、サッカー及び陸上
 いずれの競技の開催においても、
 競技者と観客に一体感が生まれる観覧席を備えた、
 快適で臨場感あふれるスタジアムを目指す

(3)年間を通してにぎわいのあるスタジアム
コンサート等の
 文化的利活用を楽しめる工夫が施され、
 特に音響に配慮された多機能型スタジアムを目指す
各種大会や文化利活用がない時でも
 気軽に楽しめる商業・文化等の機能を備えた
 スタジアムを目指す
(4)人と環境にやさしいスタジアム
最先端の環境技術を備え、
 緑あふれる周辺環境と調和するスタジアムを目指す
震災等の災害発生時にも安全で、
 避難・救援等に貢献できるスタジアムを目指す
スタジアム内外及び周辺駅からのバリアフリー
 に配慮された スタジアムを目指す
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
 
 
挑戦は大事ですが、
今の日本の財政事情も考慮すべきでしょう。

「安藤氏は、美術館の設計とかは実績豊富だが、
スタジアムとかはあまり経験がない」
という説もあります。  

だから、
ザハ案のスタイルの斬新さだけで選定したのかもしれません。


4.JSCが委嘱した専門家の技術調査は形式的
非常な短期間で
とても実質検討はできるものではありません。
それでも有識者会議は、
の専門家たちがお墨付きを与えていると思ってしまいました。
(JSCの作戦です)

5.ザハの売名・無責任
斬新なデザインは結構ですが、
敷地に入らない案だとか、
コスト条件を無視している案を提示するのは、
相手をなめています。
許せません。

なぜ誰がそんな傍若無人を許したのでしょうか。
安藤さん、JSCの責任は重大です。

6.最終的には文科相の責任
このザハ案の承認は、
2012年11月15日田中真紀子文科相です。

その後も長いのですから、
現下村文科相の責任も避けられません。

下村文科相は教育に関しては見識があり、
信頼できるのですが
建築となると門外漢で判断に困ったのでしょう。
周辺には不安を漏らしていたようです。

そこを見て、安倍総理は新体制を編成されたのです。
適切な判断です。

さて、要約すると
直接責任は、この決定の仕掛けを作ったJSCの責任ですが、
その役者たちが、自分の責任を全うせずに、
「よろしいのではないでしょうか」
スタイルで臨んだことがこうなりました。

日本人の責任あいまい体質が最大原因なのです。
それを「悪用」したJSCがワルです。
それを見抜けなかった文科省の監督責任も大です。

と言うのが私の見立てです。
「原因を究明しろ!!」
という野党・世論の声が大きいようですから
いずれ、明らかになるのでしょう。

しかし、日本人の体質から言えば、
どこまでの究明ができるでしょうか??

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なお、
これから再度コンペをして新しい案で出直しをするのですが、
納期短縮のために、
「設計と施工を同一業者に一貫して委託しよう」
という案もあるようです。

これは、建設業界で(情報サービス業界でも)、
経験済みの問題方式です。

設計が済まなければ、見積りができませんから
冒頭には全体の発注金額は決まりません。

そこで、施工も依頼する前提で、
まずは設計を発注するのですが、
受託者は施工も担当するとなると、
完成時の製品品質を軽視して施工に都合のよい
(あるいは施工金額を膨らませる)
設計をする可能性があるのです。

そこで、
第3者が時間をかけずに検証・チェックする仕組み
を用意する必要があります。
それがうまくいかないと、また問題が起きます。

今度は、
そういうことを主張できる「有識者会議」を
編成してほしいですね。

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